一八試陸上攻撃機
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一八試陸上攻撃機は1943年(昭和18年)に日本海軍より試作発注された陸上攻撃機を指す。一八試陸上攻撃機は中島飛行機に単独発注されたため、該当する機体は G8N 連山のみである。
[編集] 概要
連山は大型の新型機開発としては異例の速度である発注後1年ほどの1944年(昭和19年)10月に試作一号機が完成し、1945年(昭和20年)1月に海軍に引き渡された。しかし、戦局の悪化とアルミニウムの不足に伴い同年6月に開発打ち切りが決定され、本機は優れた性能を期待されていたが、実際の試験飛行はほとんど行われなかったため、その本当の性能は不明瞭なまま終わっている。終戦後アメリカ合衆国に接収された機体もあったが(4号機)、アメリカでの試験後廃棄処分とされ、現存する機体はない。
計画要求書とおりの性能が出ていれば、当時の日本軍機としては生産性・整備性・速力・爆弾搭載量に優れ、空力的に洗練されており武装も強力な機体となったはずであった。しかし、信頼性の高い排気タービン過給器が作れず本機も過給器に泣かされたといえよう。事実、戦後機体を接収した米軍も試験飛行に際しての整備には非常に苦労したという。プロトタイプ4機が完成した所でアルミニウムが枯渇したため、鋼鉄製の機体も設計されたと言われているが、スチール製連山に関する公式の記録は一切見つかっておらず現在のところ都市伝説の域をでない。
連山は鹵獲したアメリカ陸軍の爆撃機『B-17 』を解体・調査した上で得られた情報や技術を参考に設計されている。機体のデザインこそ海軍の『銀河』や陸軍の『飛龍』を4発機にした様な形になっているが、機銃の配置はB-17 と同一である。本機はある意味で『和製B-17 』と呼べる機体である。
[編集] 仕様
- 型式:4発中翼単葉陸上攻撃機
- 構造
- 全金属製、応力外皮構造、引き込み脚、前輪式
- 全長:22.93 m
- 全幅:32.54 m
- 全高:7.20 m
- 主翼面積:112.00 m²
- 発動機:中島「誉」24 — ル型 (NK9K-L) 空冷式複列星型18気筒2000馬力 (1490kW) 4基
- プロペラ:VDM定速4翅
- プロペラ直径:4.00 m
- 自重量:17.4 t
- 全備重量:32.15 t
- 最大速度:593 km/h(高度:8000 m)
- 巡航速度:370 km/h(高度:4000 m)
- 最小速度:149 km/h
- 実用上昇限度:10200 m
- 航続距離:3700~7470 km(装備によって変化)
- 乗員:7人
- 武装
[編集] 関連事項
- 小林彰太郎:自動車雑誌CAR GRAPHICの創始者。当時、海軍技術研究所の「材料強弱」という研究実験部署に学徒動員で配属されていた。この時に、鋼鉄製の連山の開発の研究実験に少なからず関わっていたが、途中で終戦を迎えた(参考文献:二元社・CAR GRAPHIC 2005年9月号)。
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