ロードス島伝説
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『ロードス島伝説』(ロードスとうでんせつ、英 Legend of Lodoss)は、『ロードス島戦記』の第2シリーズとして出された水野良による小説とテーブルトークRPGなどの作品群で『戦記』の英雄戦争から約30年前の魔神戦争が舞台である。
若かりし頃のファーン、ベルド、ウォート、ニース、フレーベ達が描かれ、彼らが六英雄と呼ばれるに至った経緯など、『ロードス島RPG』の設定でしかなかった人物らを実存のキャラクターとして肉付けし、また心理描写や国家間の駆け引きといったものも随所に盛り込まれており、単なる「ゲーム小説」としての域に留まらないような作品となっている。
角川スニーカー文庫の小説以外に高山浩とグループSNEによるRPGリプレイ(I・II・III)が出されており、Iはロードス島戦記RPGコンパニオン、IIはロードス島RPGベーシックルール、IIIは同エキスパートルールにてプレイされている。
またタイトルとしては「戦記」であるが、「伝説」同様、魔神戦争期を舞台にした山田章博によるコミックも出ている。こちらはファリスの聖女フラウスが主人公で、彼女と赤髪の傭兵ベルドとの関係や彼女が何故六英雄に名を連ねていないかなども描かれている。
それぞれ背景は魔神との戦いを描いた同一のものであるが、細部の設定が異なる部分も多い。が、しかしこれは「クリスタニア」など「シェアード・ワールド」で扱う一連の水野作品でのメディアミックス展開の常であり、それがまた魅力にもなっている。
目次 |
[編集] 作品概要
主人公ナシェルが、幾多の試練を乗り越え「ロードスを統一する英雄王」となるべく成長し、そして歴史の闇に消えていった、後のロードス島戦記では語られなかった物語。
復活した魔神と戦うべくナシェルの下に集う若き日の六英雄を始めとする「百の勇者」達、魔神の跳梁と複雑な利害関係のなかで合従連衡を繰り広げる諸侯・騎士達。更に魔神との戦いに協力しつつも、独自の価値観で暗躍する謎の魔法戦士。様々な人々の思いを押し流しなら、強大な魔神軍団とロードスの民との戦いが繰り広げられる。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 第一巻あらすじ
ロードス島南西部に位置するモス、そこは小国がひしめき合い王国間の外交交渉、対立や動乱などが絶えず行なわれており大国からは蔑まれていたが、争いが絶えないが故に団結すればロードス最強であろうとも噂されていた。
ナシェルはモス最南端スカードの王子で、国の各地で聞かれる不気味な噂を心配し、国を治めるべき父王の不在にも心を痛めていた。そして騎士団とともに調査の目的で訪れた南のドワーフの集落「石の王国」で、奇怪な生き物と死闘を繰り返して唯一生き残った鉄の王フレーベを辛くも救出する。ナシェルは戦った相手が魔神であることを知るが、その対抗策を講ぜずにいた。モスには対外共闘連合「竜の盟約」があるが、スカードはそれに名を連ねていない。意識を回復したフレーベ王から話を聞いた彼が国の民を守る為に出した決断とは……。
[編集] 登場人物
- ナシェル
- モスの小国スカード王国の王子で、幼い頃から「太陽の王子」と呼ばれて国内の期待を一身に集め、魔神復活前には傭兵隊長ベルドと宮廷魔術師ウォートの両名から、将来の「ロードスを統べる英雄王」と期待を寄せられるほどの成長を見せていた。特に「ロードス最強の戦士」を自負し「誰が相手でも負ける気がしない」と豪語するベルトに「5年後は勝てないかも」と思わせるほど、無限の可能性を感じさせていた。
- 魔神復活後は縁戚ハイランドの竜騎士となり、分裂したモス公国にあって魔神との戦いを一人続け、いつしか「天空の騎士」と称され対魔神戦争の象徴となる。その後ロードス各地から馳せ参じた「百の勇者」を束ねる将軍として、モス連合騎士団と共に魔神と対決する。ハイランドの第一王女ラフィニア姫と結婚。
- 光(ファーン)と闇(ベルド)を従え、天(フラウス)と地(ニース)の祝福を受け、文武(ウォートとフレーべ)に支えられて、ロードス島統一への道を歩み始めたが・・・・
- フレーベ
- 「ロードスを憂う者」を名乗る。
- プルーク
- スカード王国の国王。正妃エリザとの間にナシェル、妾妃ナターシャとの間にリィーナをもうける。聡明な名君と評されてた。
- 自分の余命が短いことと、自身を凌駕する傑出した王子の将来に思い悩み、ついに古代魔法王国時代に封印された魔神軍団の復活と支配を試みる。
- リィーナ
- ナシェルの異母妹。「月の姫」と呼ばれる。自らの出生(妾の子)に対する劣等感から「太陽の王子」と呼ばれる兄ナシェルに強い憧れを抱く。
- 父プルーク王により魔神復活の生贄にされる。
- ヒューロ
- スカード王国宰相。特に秀でた才能は無い凡庸な人物であるが、誠実に王に尽くす。プルーク王が魔神を率いてスカードを占領すると、プルーク王の下に参じる。
- 後に魔神が占領したリュッセンに派遣され、最後は魔神に殺される。
- サイラス
- スカード王国騎士団長。騎士団長として相応の優れた腕前であるが、実戦経験はない。
- 性格的に剣技より女性を愛し、金や地位より名誉を重んじるためスカードがヴェノンに吸収された時に騎士団を離れ、以後も魔神との戦いには参加しなかった。
- タトゥス
- スカード宮廷付きの薬草師。薬草の知識ではウォートも一目置くほど博識で経験も豊富。幼少の頃からナシェルの世話をしている。スカードを去るナシェルに同行し、傷の癒えぬフレーべの面倒をみる。
- マイセンII世
- モスの強国ハイランドの太守、竜騎士。同腹の妹エリザの息子(甥)ナシェルを庇護下に置き、辺境伯に取り立てる(この件で他のモス諸国との関係が一時的に悪化する)。竜騎士のみが罹る”竜熱(ドラゴンフィーバー)”を発病している。
- 魔神戦争の最中にモス公王となり、魔神と戦うモス諸国を統べる地位に就く。膨大な戦費を捻出するため、ウォートとニースの助力を得て「太守の呪縛」に支配されていた「金鱗の竜王」を解放する。
- 「我が娘がロードス公妃となり、我が孫がロードス公王になるのであれば・・・」と語り、娘とナシェルの婚姻を認め、ウォートの企てを暗に支持する。
- ジェスター
- ハイランドの皇太子、竜騎士。王国の世継ぎであるため自身が剣を取って魔神と直接戦う事はあまり無いが、もし「百の勇者」に加わっていたら「六英雄」は「七英雄」になっていたと評されるほど傑出した人物。
- 後にモス連合騎士団の将軍としてナシェルと共に魔神と戦い、魔神殲滅後に来るであろう「ナシェルによるロードス統一」を考えるようになる。
- ヤーベイ
- モスの強国ヴェノンの太守。
- デュオン
- ヴェノン第二の都市マスケトを任されるヤーベイ王の実弟、マスケト公爵。良識ある誠実な人物として対外的に信用されている。
- ハンセル
- ヴェノンの第二王子。次期マスケト公爵に予定されている。
- アロンド
- ヴェノンの第三王子。兄である皇太子とは不仲で、スカード王国を自身の権力基盤とするためナシェルの妹リィーナ姫との結婚を求めていた。スカード併合後は念願のスカード公となるが、魔神により領土を奪われる。
- 性格に難はあるものの鋭い洞察力をもつ有能な指揮官で、後にモス連合騎士団の将軍としてナシェルと共に魔神と戦い、魔神殲滅後に来るであろう「ナシェルによるロードス統一」を考えるようになる。
- バーラン
- モスの大国ハーケーンの第二王子。老齢の父王と賢明で内政に秀でている皇太子に代わり外交と軍事を担当する。馬術・槍術を得意としモス屈指の騎士と評される。
- 後にモス連合騎士団の実質的な総指揮官としてナシェルと共に戦い、魔神殲滅後に来るであろう「ナシェルによるロードス統一」を考えるようになる。
- ベルテ
- リュッセンの女将軍。将軍の家に生まれ男の兄弟がいないため将軍職に就く。戦場での駆け引きに長けており、小国の騎士団を率いて大国の騎士団に引けを取らない活躍を見せる。
- 後にリュッセンが魔神に攻め落とされた時には結婚し将軍職を退いていたが、最後まで戦い戦死。
- ハービー・ランセン
- リュッセンの上級騎士で、ベルテと結婚し将軍となる。リュッセンが魔神に攻め落とされた時にベルテと共に戦死。
- ワーレンI世
- ヴァリスの国王。新王国暦442年、傑出した聖騎士としてヴァリス国王に選出され、以降良好な治世を重ねていたが、10年前の新王国暦463年、狩猟中にに嫡男アレス王子をミノタウロスに殺される。が、王子の死を受け入れられずに狂気に陥り、ミノタウロスを王子と思い込み離宮にかくまったあげく王子の護衛役だった騎士たち全員を離宮の警備に回し情報の隠蔽を図る。もっとも、彼の狂気は「息子が未だ生きている」という妄想に取り憑かれた一点のみに限られ、その他の部分では全く正常で、それまでの聡明で果断な王のままであり、剣の腕も全く鈍らず、馬上槍試合のトーナメントでは時々優勝するほどであった。しかし精神の狂気に陥った部分の状態は深刻で、ヴァリスの宮廷には重苦しい空気が立ち込め、「白き騎士」「百年に一人の騎士」と言われたファーンに期待する声が生じる。
- 魔神が解放された当時は病床にあったが、王子の病死(実際はファーンとフラウスが幽閉していたミノタウロスを倒した)のショックで意識を失い、そのまま程なく死亡。
- その死はヴァリス国内に大混乱を巻き起こした。朝野に期待されたファーンがヴァリス国王に即位するのは23年後の新王国暦496年のことである。
- ジェナート
- ヴァリスの至高神ファリス教団の高司祭。形式主義に囚われた教団の改革を強力に推し進めている人物。次期国王にファーンを推す。
- ゲイルザック
- ヴァリスの宰相。名門出身の老騎士で実務家としては定評があるが、決断力に欠く。
- メイファー
- ヴァリスの至高神ファリス教団の最高司祭(大司祭)。当初はジェナートの教団改革を支持していたが、妥協を許さないジェナートの進め方に危機感を抱き始め、次期国王にジェナートの改革を支持するファーンではなく、保守的な近衛騎士隊長ドルロスを推す。
- ドルロス
- ヴァリスの近衛騎士隊長。大司祭を始めジェナートの教団改革に反対する人々の支持で次期国王候補となる。
- ファーンに競り勝ち国王になるため、宮廷の反対を無視して独断で同調する聖騎士達を率いてヴェノンを攻めるが、モス連合騎士団の前に大敗し戦死。
- マイス
- ヴァリスの宮廷つき魔術師。若いが「賢者の学院」出身の優秀な魔術師で、ファーンが魔神に盗まれた「三聖具」を奪還するのに協力する。
- ボイル
- アラニア北部白竜山脈にあるドワーフの「鉄の王国」の「石の王」。兄弟国「石の王国」を滅ぼし、長年の盟約を破ったプルーク王を討つため屈強なドワーフ戦士団を率いてモスに向かうが、マーファの高司祭ニースに止められる。
- 後に「百の勇者」と行動を共にする「鉄の王」フレーべの下に、少数づつ分散して配下のドワーフ戦士を送り込む。
- アイシグ
- ライデン評議会の議長。ウォートとは旧知の間柄で、魔神の首に賞金をかけ「百の勇者」をロードス全土に呼びかける役を担う。
- ルシーダ
- モス北部「鏡の森」のエルフ族の精霊使い。魔神に略奪された古代樹「聖なる黄金樹」を奪還するため、自由都市ライデンでベルトに同行して魔神将率いる魔神達と戦う。後に復活した魔神将に殺される。
- ゲイロード公爵
- アラニア第二の都市ノービスの領主。アラニア王家に連なる名門の出だが、政治や権力争いに関心が無く享楽的な性格。魔神の被害に対して有効な対策を打ち出せず、マーファ教団や住民の反抗に手を焼いている。
- 魔神ドッペルゲンガーに殺される。
- ワールウィンド
- スカード王国の王子ナシェルの騎竜となった風竜種のエルダードラゴン(老竜:ロードス島戦記の「五色の魔竜」ブラムド・エイブラ・ナースとは種類は違うがほぼ同格)。
- 通常の竜騎士の騎竜は成竜(または幼竜)であり、最強の部類に入るエルダードラゴンを騎竜とした例は他になく別格の存在。風竜種は決して戦闘が得意な竜種ではないが、天空では無敵に近い存在であり、空を飛ぶ魔神群を瞬く間に蹴散らしている。
- 単独で魔神王に挑み致命傷を受けたナシェルを庇い、自身もまた致命的なダメージを受けるが、竜魔法を駆使して瀕死のナシェルと共に風竜のみが辿り着ける特別な場所に向かう。そして竜の本能に従って最後にある特別な魔法を自身と、そしてナシェルにもかける。
[編集] 作品の逸話
結末が決まっている物語として始めた『ロードス島伝説』ではあるが、作者が割と安易な気持ちで登場させたナシェルの存在によって、当初とはまったく違った話になったと、あとがきで何度も述べられている。小説は第4巻で一度完結を迎えるが、作者本人の希望・読者の要望またザ・スニーカー誌で山田氏の漫画が完結したことなども記念して書かれた物がフラウス編として第5巻になっている。
また、山田章博氏のコミックは掲載紙が何度か変わっていて、ザ・スニーカー誌での連載をしていた際は氏が病気を患って入院したこともあり、読者からは完結するか心配されていたが、2001年6月にて無事終焉を迎えた。
[編集] 作品リスト
- 長編小説
- ロードス島伝説 亡国の王子(1994年/9月/角川スニーカー文庫)
- ロードス島伝説2 天空の騎士(1996年/7月/同上)
- ロードス島伝説3 栄光の勇者(1997年/4月/同上)
- ロードス島伝説4 伝説の英雄(1998年/4月/同上)
- ロードス島伝説5 至高神の聖女(2002年/11月/同上)
- 短編集
- ロードス島伝説 太陽の王子、月の姫(1996年/11月/角川mini文庫)
- ロードス島伝説 永遠の帰還者(2000年/1月/角川スニーカー文庫)
- RPGリプレイ
- ロードス島伝説I 魔神襲来(1994年/11月/角川スニーカーG文庫)
- ロードス島伝説II 魔神召喚(1995年/11月/同上)
- ロードス島伝説III 魔神討伐(1996年/11月/同上)
- 漫画
- ロードス島戦記 ファリスの聖女I(1994年/5月/ドラゴンコミック)
- ロードス島戦記 ファリスの聖女I・II<新装版>(2001年/11月/ニュータイプ100%コミック)