ロンド姉弟
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ロンド姉弟(-きょうだい)は『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY』『機動戦士ガンダムSEED X ASTRAY』『機動戦士ガンダムSEED DESTINY ASTRAY』に登場する架空の人物で、姉のロンド・ミナ・サハク(GBA用ゲーム『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』でのCV:勝生真沙子)と、弟ロンド・ギナ・サハク(ゲーム『機動戦士ガンダムSEED 終わらない明日へ』『機動戦士ガンダムSEED DESTINY GENERATION of C.E.』でのCV:飛田展男)のこと(ただし、ギナは『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY』のみ)。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
オーブ五大氏族の一つサハク家の当主コトー・サハクの義理の子供でコーディネイター。ミナとギナは性別の違いはあれど共に190cm近い長身と怜悧な美貌、漆黒の長髪と言った特徴的な容姿は非常に酷似しており(実際ジャンク屋のロウ・ギュールは双方と面識がありながらギナとミナが同一人物だと思っている)、互いをもう一人の自分自身とさえ感じている間柄。因みに二人のロンド・サハクの区別は前髪の分け目で可能。正面から見て左側がミナ、右側がギナである。 またコーディネイターとしても極めて優秀な能力を持ち、MSパイロットとしても一流の腕を持つばかりか、生身でもミナがやって見せたように傭兵部隊サーペントテール所属のコーディネイター、叢雲劾を片手で持ち上げるほどの驚異的な膂力を誇る。
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[編集] 二人のロンド・サハクの生い立ち
互いを半身と呼び合う双子のコーディネイター、ミナとギナ。二人は正しくオーブの為に生まれたコーディネイターだった。オーブの中枢を形成する五大氏族は血縁以上にその能力を重視する。既に時代趨勢を見れば現実的とは言えない一部氏族による国家支配を継続するためには、血縁に囚われない優れた能力を持った後継者が必要不可欠であり、言わばミナとギナは五大氏族の一つサハク家の次代を担う存在として、遺伝子調整を施された生まれながらの支配者だ。やがて成長してきた二人が決して表立った功績でこそ無いものの、この世界の歴史に深い役割を果たすようになるのも必然的な事だったと言えるだろう。
[編集] サハク家とオーブのモビルスーツ開発
C.E.70年。地球連合軍によるプラントへの核攻撃、所謂「血のバレンタイン事件」を契機に地球圏全土へ拡大した戦争の推移を語るにザフト軍の開発した新兵器モビルスーツの存在は決して無視する事は出来まい。ニュートロンジャマーの影響下で核エンジン搭載の兵器一切が無力化した情勢で、バッテリーベースの動力源と高い汎用性を持つモビルスーツの前では、旧態依然とした連合の戦力では到底太刀打ち出来る筈もなく、開戦から半年の間に物量で勝る連合軍がザフト軍を相手に戦線後退を余儀なくされる事態となった。自然、地球連合軍もザフトに対抗すべくモビルスーツの開発に着手する事となるが、その為の技術協定を結ぶ対象として彼らが選んだ相手こそ、連合・ザフトどちらにも属さない中立国であるオーブ連合首長国であった。連合が同盟国より中立国のオーブを協定相手に選んだのは、その方がザフト軍への機密漏洩の危険性が少ないと言う目算あっての事だ。
そんな連合側の申し出を一蹴したのが当時の国家元首であったウズミ・ナラ・アスハである。連合の申し出を待つまでもなく中立国家としての立場を維持していくための自衛戦力として、オーブでもモビルスーツの開発は既に進められていたが、ウズミはあくまで中立平和国と言うオーブの理念に拘り連合に自国の技術や施設を利用される事を嫌うが故にこのような判断に至った訳だ。そんなウズミの判断を「現実が見えてない」と嘲笑し、独自にモルゲンレーテ社を通じ連合への技術協力を申し出たのがロンド・ミナ・サハクその人だった。
元来サハク家はオーブ五大氏族の中でも累代軍事を司ってきた家柄で、言わば平和と中立を謳うオーブの国家理念と相反する裏の顔的な存在である。その所為か常に政の表舞台に立ち国家の象徴として君臨するアスハ家には批判的(或いは憎悪と呼んだほうが妥当か)な見方をする者の多い氏族ではあるが、ロンド姉弟は取分けその傾向が顕著で元首であるウズミに対しても公然とその統治方針に対する批判を口にする程だ。
モビルスーツ開発に於ける地球連合との技術提携を巡る対立もその一環であるとも言えるが、実際問題として連合との技術提携はオーブにとっても不利な話ばかりではない。連合への技術協力が露呈してしまえばザフト軍から敵視される事は必定ながら、この時点ではオーブより進んでいた連合のモビルスーツ開発技術をオーブ側に取り込むには絶好の機会であり、自国の技術のみで開発計画を推進する事への限界を早い時点で悟っていたミナにとっては渡りに船だったのだ。取分けこの時点ではザフト製モビルスーツには採用されていなかったビーム兵器を初期段階から導入できた事は極めて大きい。
モルゲンレーテ社を通じた連合との交渉は、モビルスーツ開発に欠かせない大容量パワーパック技術の提供から始まり、同社の開発した画期的なMS用支援ユニット”エールストライカー”の採用をきっかけに連合側の信頼と開発プロジェクトへの参入権を勝ち取り、最終的にはモビルスーツ自体の製造までもモルゲンレーテ社に一任されるに至る。両国の持つ技術の粋を駆使した新型モビルスーツの製作場所として選定されたのがオーブ所有の資源コロニー「ヘリオポリス」であり、ミナはこの地に自身の半身たる弟ギナを派遣しスペック検証用の高性能試作機の開発に着手させると同時に、自身は本国のオノゴロ島にあってギナから随時送られてくるヘリオポリスで培われた技術をフィードバックした量産機の開発に着手した。
その結果誕生した機体こそ、この戦争に様々な意味で新たな局面をもたらしたGATシリーズであり、オーブ初の国産モビルスーツであるASTRAYシリーズなのである。(参考:ガンダムアストレイ、M1アストレイ)
[編集] オーブの陥落とロンド姉弟の野望
しかしこのアスハ家とサハク家それぞれの行動は氏族間の別の思惑によるものであっても、他国から見れば共に同一国家が行った行為に違いは無い。取分けプラント視点で見れば表で中立を謳いながら裏で連合の為のモビルスーツ開発を行うと言う国家ぐるみの欺瞞行為以外の何物でもなく、ヘリオポリスで開発された新型モビルスーツの情報を得たザフトは、その報復としてラウ・ル・クルーゼを隊長とするクルーゼ隊を派遣。(しかし実際この作戦は、独自のルートでこの情報を手に入れたラウ・ル・クルーゼが、プラント評議会の返答を待たずにクルーゼ隊の独断により行ったものであった。)ヘリオポリス襲撃と新型モビルスーツの奪取を試みる。この結果連合のGATシリーズ5機のうち4機までもがザフトの手に渡ってしまい、その攻防戦の余波でヘリオポリスは崩壊の憂き目にあってしまう。これを機にオーブもまた連合・プラント間の抗争に本格的に巻き込まれていくのだ。
だがヘリオポリスには連合のGATシリーズ以上にオーブの立場を悪化させかねない存在があった。それこそロンド姉弟の主導の下連合の技術を盗用して極秘裏に開発されたスペック実証用の5機のASTRAYである。この存在が明るみに出てしまえばザフトばかりか地球連合軍までも敵に回しかねない。ウズミら連合のモビルスーツ開発及び技術盗用による国産モビルスーツの開発に異論を唱えていた者達はそうした事態を避けるべく、5機のプロトタイプASTRAYの破棄を決定するがロンド姉弟はそれを拒否。そのうちの1機、P01(ゴールドフレーム)はギナの手によって本国へと運び出され、以後彼の搭乗機として改修が加えられる事となる。
また残り4機のうちP02(レッドフレーム)とP03(ブルーフレーム)はそれぞれジャンク屋のロウ・ギュールと傭兵の叢雲劾の手に渡る事になるが、この2機とロンド姉弟との因縁はこの後も続き、ギナはゴールドフレームのパイロットとしてデブリ帯やギガフロートでロウや劾と戦い、ミナもM1アストレイのテストパイロットとしてロウの駆るレッドフレームと戦っている。(残りの二機は予備パーツ状態であった為にヘリオポリス崩壊と同時に大破したと思われる)
やがて連合に本格的にモビルスーツの量産体制が整うに及んで、地上での戦線はその物量差から次第に連合有利な情勢へとなっていき、戦力を宇宙へ進出させようと目論む連合と、それを阻止しようとするザフトの間で激しい戦闘が繰り広げられた。そんな中、ギナは連合の宇宙進出を助勢すべくザフト軍が保有するビクトリア基地攻略へ向かう一方、ミナはやがて訪れるであろう宇宙への戦線移行に備えオーブ所有の宇宙ステーション「アメノミハシラ」へと上がった。そして二人のロンド・サハクがオーブから離れたのを見計ったかのように動き出した存在があった。ブルーコスモスの盟主にして地球連合軍の実質的支配者ムルタ・アズラエルがオーブへの侵攻作戦を開始したのである(この作戦に関する詳細はオーブ連合首長国参照の事)。結果、連合軍の侵攻を食い止められずオノゴロ島自爆と言う挙に出たウズミだが、この行為は理想に溺れ国民を犠牲にしたとしてロンド姉弟の失笑を買う事になる。
オーブの国家元首は半ばアスハ家の世襲制と化してはいたが、元来は五大氏族の族長の中から国民投票によって選出されるものであり、ウズミやロンド姉弟の養父であるコトー・サハクを初めとする国家首脳が戦死した時点で、その資格があったのはウズミの養女でありながら年端も行かない少女に過ぎないカガリ・ユラ・アスハと自分達だけであった事が二人のロンド・サハクの野心に火をつける事となった(この頃モルゲンレーテ社の技術主任エリカ・シモンズを通じてカガリの暗殺を試みているが不首尾に終わっており、またこの事件を契機にエリカ・シモンズはアスハ家寄りに立場を転向している)。これ以降二人は連合のオーブ侵攻によって焼け出された市民や技術者達をアメノミハシラに受け入れると共に、自分達の手で真のオーブを再建する為に力を蓄えていく。
[編集] 半身の喪失ともう一つのオーブ
更にロンド姉弟の最終目標はオーブの元首に留まらない。国民を奴隷と見なした支配者階級の為の統治世界の創造。それこそが二人の望む理想世界であり、その実現の為には地球連合もプラントも何れは消さねばならない相手なのである。その標的として二人がまず選んだのはザフトだった。地球連合に対しては彼らのビクトリア基地奪還にギナが協力した事で連合はその見返りとして新鋭機であるGATシリーズの機体ソードカラミティと、そのパイロットたる戦闘用コーディネイター「ソキウス」を譲渡してきている(因みにビクトリア基地攻略作戦を終えアメノミハシラのミナと合流する直前、ギナは地球連合軍のエースパイロットであり「切り裂きエド」の異名を取るエドワード・ハレルソンを登用しようとしているが不首尾に終わっている)。まずは連合とはこのまま形ばかりの友好関係を維持する一方ザフトを攻める事で、表面的には従順な姿勢を見せ連合の油断を誘発させようと言う目算だ。
ギナはそうした野望を内に秘めゴールドフレーム天を駆り単機でザフト軍の戦艦やモビルスーツを鬼神の如き働きで撃破していたが、そこで思わぬアクシデントに見舞われる。ザフト艦の救難信号を受信したジャンク屋のロウ・ギュールと遭遇しこれと交戦。ある意味では共にASTRAYを駆りながら考えを異にする者同士の因縁とも言えるこの戦いでギナはロウを圧倒するが、情報屋(ケナフ・ルキーニ)からの通信によりギナの動きを察知した叢雲劾の助勢を得たロウのレッドフレームはギナのゴールドフレーム天を撃退。最期の瞬間まで天(アマツ)の力を過信し自らの敗北を認めようとしなかったギナも劾の乗るブルーフレームセカンドLのナイフにコクピットごと刺され絶命。その遺体はソキウスらの手によって機体ごとミナが指揮を執る戦艦イズモへと回収された。言わばこの時ミナは自身の半身を喪失してしまったのだ。
だがこの出来事はロンド・ミナ・サハクと言う人物の為政者としての方針に新たな転換をもたらす事になる。かつての自分やギナの抱いていた野心が、考え方こそ違えど自分達が誰より忌み嫌っていたウズミ・ナラ・アスハの犯した過ちと同じであった事に気付いたのだ。両者の考え方は一見して全く正反対に思えるが、「国民に自分の考え方を押し付ける」と言うエゴイズム的な方針に於いては根幹は同じである。その事をミナに気付かせた者こそ、ギナの死に深く関わる事になったジャンク屋ロウ・ギュールだった。彼が言い放った「国とは人の集まりであり場所は問題ではない」と言う言葉はミナの考え方を大きく変える事となったのだ(後、この考え方は彼女の明確な行動指針となり、ミナはそれを「天空の宣言」と言う形で全世界に発信している)。また、彼女の力は連合だけでなくザフトに対しても影響を与えており、デュランダルに「オーブの影の軍神」と言わしめるほどになっていった。
やがてミナは改めてオーブの再興を行う時を見極めるため、アメノミハシラに集ったオーブの民衆達を解散させる事を決断する。この時点の情勢でオーブを再興させても周囲の攻撃に曝されるのみであり、また戦争で失われた兵器の補充の為アメノミハシラに備わる大規模軍需工場を自国の物にしようと画策するザフトや連合の攻撃も後を絶たない。それならば思い思いの場所に彼らを潜伏させ雌伏の時を過ごしながら捲土重来を期した方が得策と見ての判断だ。また、本当にオーブの民が彼女を必要とするならば自ずと彼らは彼女の下に集まるだろうとの考えでもある。そして宇宙に上がったオーブの民が地下に潜った事を悟らせないためにミナ自身はアメノミハシラに残った。その後にセブン・ソキウス、イレブン・ソキウスの依頼でミナの器を推し量る為アメノミハシラに潜入したギナの仇敵である叢雲劾と対峙するが、その際にも劾と言う人物を認め彼に自ら理想とする国家像を語る度量を見せている。
以降、彼女は「自らの民」達と共に何れ訪れるであろう新生オーブ再建の機を見極めるべく地上の動静を天空から静かに見据えている。