レンジファインダー・カメラ
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レンジファインダー・カメラとは、レンズに連動した距離計(レンジファインダー)付きのカメラ。 レンズの回転により距離計を動かし、スプリットイメージや二重像の重ね合わせによりピント合わせを行う。一眼レフよりコンパクトでありながらきちんとピント合わせができるため、 未だに愛用者が多い。一部AFカメラでもこの機構を自動化したものがある。
[編集] 特徴
利点としては本体を一眼レフよりコンパクトにできる事と、一眼レフのようなミラーボックスを持たないのでレンズ設計の自由度が高いこと(ツァイスのビオゴンなど、フィルム面直前にまで後玉が突き出したような設計のレンズも使用可能)がある。またミラーが存在しないのでシャッター時のショックが少なく手ぶれが起きにくい。シャッター音を小さくすることも容易である。
欠点としてはレンズとファインダーの光学系が分かれているため、撮影範囲を確認するにはレンズの焦点距離に見合ったビューファインダーを用意する必要があり、また視野のずれを完全には補正できないこと、またピント合わせ方式の都合上、最短撮影距離がある程度長くなることが挙げられる。
ただ前者についてはライカM型以降は複数の枠(フレーム)がファインダーに内蔵されるようになり、後者については接写用アタッチメントを用意することで近接撮影を可能にしたレンズも存在する。しかしマクロ領域の超近接撮影に関してはレンジファインダーカメラでは対応できない。
また距離計の基線長がカメラの大きさによって制限されるため、遠い被写体に対するピント精度に限界が生じ、超望遠域レンズを使用するには向かない欠点もあり、レンジファインダー式である以上回避できない問題である。ライカなどではレフボックスを後付けして実質上一眼レフとして使用することによりこの問題を回避するアタッチメントも存在している。 一方、標準~広角レンズにおいては、一眼レフの有効基線長がレンズ焦点距離の2乗に比例する関係で、原理的にレンジファインダー式の方がピント精度が高くなるために有利である。
[編集] 代表的な機種
戦前であればライカIIIなどのLマウントライカが、戦後であればライカM3から始まるMマウントライカが、全レンジファインダーカメラを代表する機種であるとの認識は議論を待つまでも無いであろう。日本のキヤノンをはじめ東欧やソ連などカメラ後進国のメーカーがこぞってライカを模倣し互換機ないしはデッドコピーを作りつづけたことからもこのことは裏付けられるといってよいのではないだろうか。
ドイツ国内に目を向けると、ライカにはかつてコンタックスという強力なライバルが存在した。日本ではニコンがコンタックスを模倣することからはじめたSシリーズのレンジファインダーカメラを製造している。
レンズシャッターのコンパクトカメラにおいても、MF時代には距離計連動式は一般的に採用される方式であった。パンフォーカスやゾーンフォーカスのものに比べるとやや高級志向の機種に採用されることが多かったといえよう。
戦後の摸倣期を除くと日本においては、高級カメラの中心が一眼レフへと移行したため、高級カメラとしてのレンジファインダーカメラはライツにライセンスを受けてミノルタが製造した一部の機種などを除きほとんど製造されていない。レンズ交換式・フォーカルプレーンシャッター搭載のレンジファインダーカメラは90年代前半までほとんど忘れ去られた存在であったといってよい。
ライカMマウントの権利が消滅したことなども手伝って、近年のクラシックカメラブームに乗り日本のコシナのベッサシリーズやコニカからヘキサーなど、Mマウントに互換性のあるマウントを採用した同形式のカメラの発売が相次いだ。またニコンはかつて製造していたレンジファインダー方式のカメラであるS3を2000年に、さらにSPを2005年に、共に限定品として復刻販売している。 Zeissも2005年からコシナと共同してZM(Zeiss M)マウントのレンジファインダー機Zeiss Ikonを製造・販売している。
また2004年にエプソンから世界初のレンジファインダー式デジタルカメラ「R-D1」が発売された。2006年にはライツ社からもレンジファインダー式デジタルカメラ「M8」が発表された。