ヤマネ
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ヤマネ科 Gliridae |
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ヤマネ(山鼠、冬眠鼠)は、ネズミ目(齧歯目) ヤマネ科に属する小型哺乳動物の総称。
また、日本に棲息する唯一のヤマネ科の動物 Glirulus japonicus の和名は「ヤマネ」または「ニホンヤマネ」である。したがって、「ヤマネ」という語は、実際の使用例において、世界に分布するヤマネ科のヤマネ類(広義)と、その1種である日本のヤマネ(狭義)と、どちらの意味で使われているのか、注意を要する。
目次 |
[編集] ヤマネ(ヤマネ科)
ネズミ目ヤマネ科の動物は、ヨーロッパ、ロシア、アフリカ、中央アジア、中国、日本に26種が分布する。
ヤマネ科には分類学説により、Gliridae、Myoxidae、Muscardinidae の3通りの学術分類名がある。
ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』にもヤマネが登場する(原語 dormouse は、しばしば「眠りネズミ」と訳される)。
[編集] ヤマネ(ニホンヤマネ)
ヤマネ(ニホンヤマネ、以下ヤマネ)は、ヤマネ科ヤマネ属の小型哺乳類。マリネズミ(鞠鼠)、コオリネズミ(氷鼠)、コダマネズミ(小玉鼠)の別名をもつ。1属1種。日本固有種。
[編集] 形態
頭胴長: 60~80mm
体重: 15~20g(冬眠時は増加)
体毛は背面が茶褐色で、腹面は淡い。背中に1本の黒線をもつ。ネズミ類に似ているが、尾は長い毛で覆われている。体重は鶏卵(約50g)の半分もなく、人間の手のひらに乗るほど小さい。
[編集] 生態
本州、四国、九州、隠岐の森林に、広く分布する。樹上で暮らし、夜行性で、通常は単独で生活する。
昆虫や種子、果実、花(花粉や蜜を含む)を食べる。ネズミのような盲腸をもたないため、木の葉のような繊維質のものを消化することができず、また、クルミなどをかじるのに適した歯や筋肉ももっていない。
平たい体で木に張りつくようにして移動し、垂直な幹を頭を下にしてスルスルと降りることができる。水平な枝では、枝の下面を逆さまになって移動することが多い。30cmほどの距離なら、幹から幹へ飛び移ることもできる。
春、冬眠から目覚めて1~2週間ごろに交尾するが、ムササビなどと同様の交尾栓をもつ。後30~39日で出産し、一時に出産する子の数は、3~6(通常は3~4)。繁殖期は地域により差がある。
大陸産ヤマネからは、数千万年前に分岐したと推定され、日本列島に高い固有性を誇る。遺伝学的研究によれば、分布地域によって、別種と言ってよいほどの差異が見られる。
寿命は、約5年(飼育下では、雄で約9年)。
敵に襲われると、尾(骨以外)を残して逃げることがある。ただし抜けた尾の毛は再生しない。
[編集] 冬眠
ヤマネ類は異温動物であり、哺乳類でありながら冬眠をするという特徴をもつ。日本のヤマネも冬眠をする。
冬が近づくと、ヤマネは体内に脂肪を蓄え、普段15~20gである体重が、2~3倍程度に増加する。これによって冬眠中の栄養をまかなっている。
冬眠の場所は、落ち葉の下、土の中、大木の樹洞、柔らかい朽ち木や倒木の中や表皮の下、雪の中など。冬眠中は体をボールのように丸めているが、別名の「マリネズミ」はここから来ている。
普通、冬眠動物は単独で冬眠を行うことが多いが、ヤマネでは数匹がかたまりになって冬眠することが時々ある。
[編集] Status
- 準絶滅危惧(環境省レッドリスト)
- ENDANGERED (IUCN Red List)
[編集] 人間との関わり
冬に木を切ると、冬眠中のヤマネが転がり出てくることがあることから、林業に携わる人々は、ヤマネを山の守り神として大切にしてきた。
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