メディックファーストエイド
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メディックファーストエイド(Medic First Aid)は、米国の一般市民向け応急手当・救命手当教育プログラムの開発企業であり、同社が開発したシステムの名称でもある。
メディックファーストエイドは登録商標であり、応急手当法を表す一般名称ではない。旧来日本において救急法講習は消防や日本赤十字社等公的機関を通してほぼ無料で実施されていた。そんななか有料ビジネスとしてMFAが参入してきた当初は反発も多かったが、今では企業向けの集合研修プログラムの提供など、日本に新たなビジネス展開をもたらしたと言える。
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[編集] コースの基本コンセプト
アメリカ本国に設置母体を置き、アメリカで培われた教育方法をそのまま取り入れている。そのため、内容はこれまでの日本の講義を中心とした救急法教育とは大きく異なる。「見て・聞いて・実行する」というプロセスを根本に置き、ビデオを見た後にすぐに練習が行われる。受講生のストレスを低く保ち、instructor(指導員)ではなくfacilitator(世話役)と呼ばれる先導役が、講習をリードする。講習の大部分が実技練習の時間に費やされ、facilitatorの「講義」は原則としてほとんど無い。
また救急蘇生法先進国アメリカの最新情報に基づくため、感染防御や救助者が受ける心的トラウマにも配慮するなど実践的な内容になっているのが特徴である。
[編集] 先進的な内容
●小児の応急手当て:一般的な応急手当ての講習は成人を救助対象としているが1991年1月より乳幼児・小児を救助対象とした小児メディック・ファーストエイドコースを日本では他社に先がけて開始しました。又、現在においても総合的な小児の応急手当てを教えているのは、唯一メディック・ファーストエイドである。
●感染の予防:応急手当てを行なう際にプロバイダー(提供者)は感染の危険にさらされます。MFAは、手袋やマウスシールド(人工呼吸用マウスピース)の使用を推奨するだけでなく、練習の時から実際に使用して違和感をなく使用できるようにしている。先進諸国において日本だけが血液感染等の感染者が減らない理由の一つとしてバリアの使用に対しての意識の低さがある。2005年7月には血液感染性病原体コースも開始された。
●AED:日本において自動体外式除細動器(AED)の一般人の使用が解禁されたのは2004年7月。それ以前(2002年)から、民間人にAED講習を開催していた点は特筆すべき点だろう。
●緊急酸素供給:2006年現在、日本ではまだ認められていない緊急時酸素供給に関するプログラムを展開している。トレーニングを受けた非医療従事者が傷病者に対して酸素を与えることがアメリカでは許されている。しかし日本では医師法の規制があり「医薬品」である酸素を医師以外のものが「投与」することは認められていない。しかし、傷病者が同意した上で酸素を提供することは、日本の法律でも問題はないため同プログラムではこのトレーニングを積む。とはいえ、現在の日本ではグレーゾーンにあると言えることも確かである。また2005年11月に発表された新しい国際ガイドラインでは、応急手当ての一環として酸素を使用することは推奨されていない。ファーストエイドにおける酸素投与に関する研究はまだ十分になされておらず、現段階では推奨しないが否定もしないというスタンスを取っているが、今後の研究により酸素使用が標準化される可能性も考えられる。今後の応急手当教育界の展望を予感させる部分ともいえよう。
[編集] 組織
80,000名以上の指導員が世界140ヶ国以上で教えており、年間50万人以上の受講生に普及している。MFAの国際サービス・オフィスは米国、日本、カナダ、ニュージーランド、英国、オーストラリア、ギリシャにあり、それぞれがそれぞれの国で本部機能を果たしている。
[編集] 主なプログラム
- ベーシックメディックファーストエイドコース(1日〜2日)
- 小児メディックファーストエイドコース(1日〜2日)
- スポーツ医学メディックファーストエイドコース(2日〜3日)
- 低体温症のトラブルと予防プログラム(半日)
- 心的外傷後ストレス障害の予備知識と対処プログラム(半日)
- 自動体外式除細動器コース(半日)
- 緊急酸素供給コース(半日)
- 血液媒体伝染病コース(半日)
- 医療従事者のための基礎生命維持コース
括弧内の日数は、目安である。
[編集] プログラム開発の歴史
他に、スポーツMFA、アドヴァンスドMFA、血液感染性病原体プログラム、AED(自動体外式除細動器)、緊急酸素コースなど救急をテーマに多彩なプログラムを展開している。
[編集] 情報源
プログラム開発に使われている情報源は以下。 Guidelines 2000 for Cardiopulmonary Resuscitatin and Emergency Cardiovascular Care; International Consensus on Sciende., Supplement to Circulation. 2000, 102,、 National Guidelines for First Aid Training in Occupational Setings, November 1998, and other souces of National Counsensus Guidelines, 救急蘇生法の指針(心肺蘇生法委員会(JRC)、2001年5月30日発行)
[編集] 国際ガイドライン2005への対応状況
2005年11月に心肺蘇生法に関する国際会議が開かれ、グローバルスタンダードに変更があった。大きな変更については2006年1月にカリキュラムを変更しテキストの差し替え版が本部から提供。既に希望者は実施を開始していた。 2006年11月に新ガイドラインAHA2005に準拠したベーシックコースのバージョン6.0がスタートしました。他のプログラムも順次スタートする予定です。市民向けに大幅に単純化された今回の新ガイドラインの救急法スキルのほかに、スポーツ現場や水際の管理者、警備関連業者、などにも有益な、さらに活用できる救急法の知識とスキルもオプションで含まれていて、指導員の判断や参加者のニーズによって提供されることになる。