マリア様がみてる
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『マリア様がみてる』(マリアさまがみてる)は、集英社コバルト文庫から刊行されている、今野緒雪原作による少女向けフィクション小説(ライトノベル)シリーズ。イラストはひびき玲音。略称は「マリみて」。
目次 |
[編集] 概要
舞台は東京都下武蔵野の丘の上にそびえる、伝統あるカトリック系高校・私立リリアン女学園高等部。そこには代々、特別厳しい校則が無くとも、規律正しい学園生活を送るように、先輩と後輩が「姉妹」としての契りを結び、リリアンの生徒としてふさわしい振る舞いをするよう指導する、「スール」(sœur(s) 姉妹の意のフランス語。)という制度が存在している。
物語はその下、高等部に通う平凡な一年生・福沢祐巳(ふくざわ ゆみ)が、憧れの先輩である「紅薔薇のつぼみ(ロサ・キネンシス・アン・ブゥトン)」こと、二年生の小笠原祥子(おがさわら さちこ)に呼び止められ身だしなみを正される所から始まる。
小説版は1998年に刊行を開始。2002年頃から人気に火がつき始め、2003年にコミック化(画・長沢智、マーガレット連載)、 2004年にはテレビアニメ化された。コバルト文庫が本来ターゲットとする読者層である女性ばかりか、男性にも支持層が広がる。2006年には、第3期シリーズがOVAとして製作されることが決定。イタリア編まで製作される予定。11月29日から全5巻でリリースされ、各巻約50分の内容だという。
なお、発売されている作品一覧については「マリア様がみてるシリーズの作品一覧」の項を参照。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] あらすじ
[編集] マリア様がみてる
憧れの小笠原祥子に身だしなみを整えてもらった事をきっかけに、福沢祐巳が薔薇の館を訪ねると、学園祭の劇について揉めていた。王子役として花寺学院の生徒会長が来る事を聞き、シンデレラ役の祥子が辞退を望んだ為である。役から逃げる為に祥子は祐巳を妹にすると言うも、祐巳はその申し出を断る。話し合いの末、学園祭までに妹にできたら降りてもいいが、その代役は祐巳が務める事になる。祐巳もその時に備えて練習に加わり、周りに溶け込んでいく。王子役の柏木が同性愛者である祥子の婚約者だと知った祐巳は、役を引き受けようとする。しかし祥子は同情を嫌い、申し出を受けずに役を勤める決心をする。学園祭が終わり、もう祥子と会う事もないと黄昏れる祐巳に、祥子がスールの申し込みをした。そして祐巳は、その申し出を受け入れるのであった……。
[編集] 黄薔薇革命
従姉妹で幼馴染みの支倉令と島津由乃はベストスール賞をもらう程だったが、由乃がロザリオを返し姉妹関係が解消される。新聞部の三奈子は「黄薔薇革命」とのタイトルで、忙しい令の事を考え、由乃が身を引いたと書き立て、大騒ぎとなる。そんな中、沈黙していた由乃が祐巳を病院に呼び、真相を明かす。噂話とは逆に、由乃がいないと駄目な令が強くなる様にと姉妹の解消をしたとの事だった。由乃自身も、逃げていた手術を受け入れ、強くなろうと決心した。手術の日は剣道大会の日。令は延長戦の末、リリアンを優勝へと導く。学校に復帰した由乃は令をマリア像の前に呼び出し、もとの姉妹に戻った。
[編集] いばらの森
- いばらの森
- 女子高生セイとカホリの同性愛、駆け落ち、無理心中、そしてカホリの死が書かれた 「いばらの森」は、須加星による小説である。須加星は佐藤聖ではないかとの噂から、聖は学園長に呼び出される。聖は既に転校した栞との過去を由乃達に語り、そっくりだが作者では無いと断言する。須加星は栞なのか? 真相を求める由乃は、祐巳達をつれて宮廷社に向かう。そこで作者の須加星こと春日せい子と話をする。死んだはずのカホリは佐織という名で、何十年ぶりかの連絡を受け、生存を知ったという。12月24日、祐巳と聖は学園長室に向かうせい子と会い、聖は案内役を引き受ける。そこで祐巳は、学園長の名が佐織であることに気付く。
- 白き花びら
- 2年生になった聖は、栞と親しくなっていく。蓉子は心配し、栞が将来シスターになることを教えて諭そうとしたが、聖は栞にシスターにならないよう求め、キスをした。しかし栞に拒まれた聖は成績が悪化し、学校からの指導で栞との関係にも言及されるようになる。 クリスマス・イブの日、聖と栞は駆け落ちを計画したが、待ち合わせた駅に栞は現れず、代わりに現れたのは聖の姉だった。聖は栞からの手紙を受けとり、栞が転校する事を知る。その後、聖は周りの助けを受けつつ立ち直った。
[編集] ロサ・カニーナ
- ロサ・カニーナ
- 生徒会役員選挙にロサ・カニーナを名乗る蟹名静が出馬する。静が役員になれば、つぼみの内1人は役員になれない。志摩子は姉が卒業すれば未練はないと立候補を避ける。不立候補の理由を2年連続役員になる事を嫌ってと考えた静は、志摩子を妹とする事を提案し、そうする事で祐巳達と同期役員をやるよう勧めた。しかし志摩子は提案を断わって立候補し、静は落選した。静は聖に告白し、渡伊する事を伝え、聖は餞別としてキスした。
- 長き夜の
- 元旦の合宿に聖が祐巳を誘う。2人での初詣を経て、連れてこられた宿は祥子の家だった。そこには友人宅に宿泊に行った弟の祐麒と、祐麒を友人から奪ってきた柏木もいた。騒ぎながら、食べたり、ゲームをしたりして夜を迎えた。寝る前にはいい初夢を見られるように願った。
[編集] ウァレンティーヌスの贈り物(前編)
- びっくりチョコレート
- 祐巳はバレンタインデー (V.D.) に祥子に手作りチョコを贈る事にする。新聞部からV.D.に宝(カード)探しの企画が持ち込まれる。賞品はつぼみとの半日デート券。企画の為に祥子と会う事が減り、さらに祥子がV.D.を嫌いらしいと知り、祐巳は祥子に対してうまく振舞えない。
- V.D.当日、志摩子と令のカードは発見されたが、祥子のカードは見つからなかった。その後、祐巳はいきさつを正直に話し、祥子もV.D.にではなく、親しくないのにチョコを贈る一般生徒に辟易していた事を伝える。祐巳はチョコを差し出すが、失敗作を出してしまう。取替えようとしたが、祥子が離さず成功作共々箱が壊れて散らばってしまう。祐巳は「びっくりチョコレート」と名付け、当たりを引くと美味しい事にする。祥子は美味しいと言い、当たり賞品は何か尋ねた。祐巳はそこまで考えていなかったが、半日デートを申し込んだ。
- 黄薔薇交錯
- 放課後、令は由乃と江利子にケーキを贈った。由乃は年々大きくなる令のチョコに恐怖していたが、今年は意外と小さかった。逆に江利子には大きい物が届いた。2人とも渡す相手を間違えたのではと悩むが、令からの連絡も無いので仕方なく食べた。何も気付いてない令は満足して寝た。
[編集] ウァレンティーヌスの贈り物(後編)
- ファースト デート トライアングル
- 祥子と祐巳、志摩子と静、令と生田ちさとのそれぞれが日曜日に半日デートをする。さらに取材に来た三奈子と蔦子、令の事が頭から離れない由乃が交錯する。祐巳達は祥子が経験したことの無い庶民的な店を回る。静達は食べ物を買って学校に忍び込み、薔薇の館で食事をし、聖について語り合った。薔薇の館に一人で戻った志摩子は、静に呼び出されていた聖に会い、泣いた。令達は、映画とウィンドウショッピングを楽しんだ。ちさとは由乃が見ている事に気付き、これ見よがしに甘えてみせた。家に帰った由乃にちさとが会いに来た。令とのデートを自慢しようとしたが、デート中の令が由乃の話ばかりだった事に立腹し、泣き出す。そんなちさとを由乃は抱きしめた。
- 紅いカード
- 鵜沢美冬は転校後も幼稚舎時に世話になった祥子を慕い続けていた。高等部からリリアンに戻ったものの祥子は美冬の事を覚えておらず、親しくなるきっかけが作れない。2年生のV.D.の朝、偶然古い温室に入っていく祥子を見て、カードを手に入れる。元に戻さなければと思いつつ戻せないまま宝探しが始まった。温室に祐巳が来たが、カードが出てくるわけがない。見つかったら二人で申請しに行こうと言う人のいい祐巳を前に、真実を打ち明けようとするも勇気が出ない。宝探しが終わった後にカードを埋めなおし、気持ちを伝えられない事を自省し、自分を変えようと決心した。
- 紅薔薇さま、人生最良の日
- V.D.に大学受験が重なった蓉子は大変な日だった。宝探し最中のリリアンに戻り薔薇の館に入ると、宝探しそのものよりも薔薇さまやつぼみと話したい一般生徒で溢れていた。宝探し終了直前に窓を開けると集合場所の中庭に集まってくる生徒達がまるで薔薇の館を目指しているように見えた。薔薇の館が一般の生徒で賑わう事を夢見ていた蓉子は感激した。
[編集] いとしき歳月(前編)
- 黄薔薇まっしぐら
- 江利子が色々な男とデートしている噂が流れ、蔦子は調査した現場写真を祐巳に渡す。困った祐巳は色々な助言を聞き、真相を知ろうとするが、江利子の様子から悪い方へと考えが進む。リリアンかわら版では噂を元とした小説が発表されて大騒ぎとなる。江利子が生活指導室に呼ばれるが、写真の男はいずれも江利子の家族であった。ただし1人だけは家族ではなく、花寺学院の教師山辺だった。江利子は風変わりな山辺に惚れ込み、2人は友達として付き合うことになった。
- いと忙し日々
- 3年生を送る会の為に大忙しだったつぼみ達は、自分達と薔薇さまとの内々のお別れ会の準備を忘れていた。祐巳は聖から1年生が隠し芸を行うのが恒例だと聞く。当日3年生を送る会は無事終わり、薔薇さまを送る会の1年生による隠し芸が始まる。恒例というのは嘘だったが、由乃の手品、志摩子の日舞、祐巳の安来節を見て薔薇さま達は大満足した。大笑いしている祥子を見た蓉子は、以前からは考えられないとその変化を喜び、安心して卒業できると思った。
- 一寸一服
- 江利子は動物園で熊のような男にあった。動物を夢中で見てる男と話し、恐竜の話を聞かされた。動物だけでなく、自分まで恐竜に見立てて話しをしてくれたその男とずっといたいと江利子は思った。
[編集] いとしき歳月(後編)
- Will
- 蓉子は祐巳をからかいながら、自分が卒業した後の祥子の事を頼む。江利子は由乃を呼び出し、様々な勝負を楽しむ。3年生の教室に1人佇む聖に会った祐巳は、できる事はと訊ねると、冗談半分にキスをせがまれ慌ててしまう。一度は逃げたものの、最後だからと思い直し頬にキスをする。聖は祐巳を抱き寄せて1年を振り返り、祐巳と出会えたことに感謝した。ところが翌日、志摩子から聖の大学が同じ敷地のリリアン女子大学と聞いた祐巳は、聖に抗議した。しかし話してるうちに怒りは消え、これからもすぐ会える事を嬉しく思った。
- いつしか年も
- 卒業式当日にも他人の世話を焼く蓉子。緊張感無く睡魔に襲われる聖。山辺が来るのを心待ちにしている江利子。卒業式でありながら薔薇さま達はいつもと変わらない。昔を回想しているうちに、聖歌が始まった。卒業式も終わり薔薇の館の面々で集まった。聖と江利子は幼稚舎時代の喧嘩を謝りあった。マリア像の前で蔦子に写真を撮ってもらい、三人の薔薇さまはさよならも言わずに別れた。
- 片手だけつないで
- 聖は志摩子に惹かれるも、栞との事を思い出し動けない。蓉子の計らいにより志摩子は手伝いとして薔薇の館に度々呼ばれる様になる。聖は卒業した姉の言葉を守り、一歩引いた所から志摩子を眺め、満足した。秋になり、誰の妹にもならず生徒会に尽くしている志摩子の立場を考え、祥子が自分の妹にしたいと言い出す。祥子を問いつめる内に、志摩子への気持ちがはっきりした聖は、授業開始直前に志摩子を教室から連れ出し姉妹となった。
[編集] チェリーブロッサム
- 銀杏の中の桜
- 銀杏並木に1本だけある桜の下で乃梨子は志摩子と出会い、小寓寺で再会する。志摩子は住職の娘であり、家が寺なのにシスターを目指す苦悩を打ち明け、乃梨子は守秘を約束する。それから2人は桜の下で会うようになり、乃梨子は白薔薇と親しい事を妬まれる様になった。乃梨子は志摩子に数珠を借りるが、盗難に遭ってしまう。忙しい志摩子に盗難を伝えられないままマリア祭が終わり、新入生歓迎会が始まる。 薔薇さま達が新入生に順におメダイを渡す。乃梨子の番で瞳子が待ったをかけて数珠を出し、乃梨子にメダイを受け取る資格が無いと主張する。乃梨子は詰問を受けるが、志摩子の事は漏らさない。見かねた志摩子が飛び出し、自分の数珠で、自分が寺の出である事を明かす。乃梨子は志摩子に抱きつた。
- BGN(バックグラウンドノイズ)
- 「銀杏の中の桜」と同じ話が別の視点で書かれている。
- 令の祖父は小寓寺の檀家で、志摩子の悩みは既に知られていた。志摩子の口から悩みを言わせて楽にさせる為、乃梨子が志摩子と親しい事を利用する事になった。新入生歓迎会当日、祥子達は志摩子達を会わせず、瞳子を使って乃梨子が志摩子から預かった数珠を盗む。祥子達は歓迎会で芝居をして志摩子に家が寺であることを打ち明けさせた。
[編集] レイニーブルー
この巻は梅雨の季節の3つの話が同時進行で書かれ、同じ場面が別の視点で交錯する。
- ロザリオの滴
- 歓迎会から半月、志摩子と乃梨子は姉妹になるわけでも、薔薇の館へ乃梨子が来るわけでもなかった。祥子達は乃梨子を薔薇の館へ呼び、仕事を手伝わせる。祥子は些細な事で乃梨子を責め、親しい志摩子に上級生としての責任を求めた。乃梨子は志摩子を庇おうとするも、志摩子は耐えきれず薔薇の館を飛び出す。乃梨子は祥子の意図を理解し、桜の下で泣いていた志摩子にロザリオを望み、2人は姉妹になった。
- 黄色薔薇注意報
- 由乃の剣道部入部に令が猛反対して喧嘩になり、由乃は入部を強行する。令は由乃との関係を見直そうと言い出す。2人が話し合う中で、令は由乃の身体の心配よりも、由乃がいると平静を保てない自分の心の問題の方が大きい事を自覚する。そんな弱い令の為、由乃は剣道部に居続け、令はもう少し頑張る事にした。
- レイニーブルー
- 祥子は理由も言わずに祐巳とのデートを延期し続ける。祐巳は瞳子が祥子と親しげなのを見て嫉妬しつつも我慢する。日曜日に祥子が瞳子達とドライブに行っていた事を知り、悪い方へと考えが進む祐巳はロザリオを返す事も考え、薔薇の館も避け始めた。帰り際に祥子と話そうとした時に瞳子が現れ、祐巳は祥子が待っていたのは自分ではないと知ってその場から逃げだし、通りがかった聖に救われる。祥子と瞳子は一緒に迎えの車で去ってしまった。
[編集] パラソルをさして
祥子に置き去りにされた祐巳は、聖達に救われ、加東景の下宿の世話になる。翌日、瞳子が祐巳を挑発し、2人の衝突は学園中に広まった。景の下宿にお礼に行くと景は不在で、祐巳は大家の池上弓子と話しをする。弓子は祐巳を励ますと共に自分の学生時代を回想する。翌週、落ち着きを取り戻した祐巳は久しぶりに薔薇の館に赴く。祐巳は瞳子に祥子の様子を聞き出そうとするが瞳子は逃げ出し、2人はリリアン女子大学で弓子に会う。弓子は昔喧嘩別れした友人に会いに病院へ向かう所だった。週末、蓉子達が学校に現れ、祥子の祖母彩子の家に祐巳を連れて行く。話を聞いた彩子が祐巳を気に入り病状を伏せるよう頼んでいた為、祥子は彩子の見舞いで忙しい事を祐巳に言えなかったのだった。彩子が亡くなった後、祥子と祐巳はこれまでの事を互いに許し合った。亡くなる直前、昔喧嘩別れした友人が来院したと言う。祐巳の脳裏には弓子の事が思い浮かんだが深くは詮索しなかった。
[編集] マリア様がみてる イラストコレクション
文庫カバーや雑誌Cobaltの表紙、カレンダー、ドラマCD、DVDなどに使用されたひびき玲音のイラストを収録。また、雑誌Cobaltに掲載されたマンガ版『マリア様がみてる』の「クリスマス・プレゼント」・「卒業までに…」・「ひとりの日曜日」・「年の初めの」・「祐巳のヴァレンタイン・イブ」や、令と由乃のロザリオの授受を描いた短編小説「ハレの日」も収録している。
[編集] 登場人物
[編集] 独特の用語
[編集] スール
リリアン女学園高等部特有の慣習で、学園生活を規律正しく円滑に過ごす為に、指導役になる上級生と下級生が「姉妹」になる約束をすること、またその約束をした人物。上級生、下級生いずれも1対1で行うものであり、複数の「お姉さま」、「妹」を持つことは出来ない。その為、「スール関係にある」=「特別に親しい」とみなされる。通常「お姉さま」から「妹」にロザリオの授受を行うことでスール関係が成立する。ロザリオは「お姉さま」から授かったものを「妹」に渡す場合もあれば、それとは別に自分で用意しておく場合もあり、人それぞれである。なお「スール (sœur) 」とはフランス語で「姉妹」のこと。英語の「シスター (sister) 」だと、キリスト教の学校ゆえに「修道女」と混同してしまうため、フランス語が用いられている。
リリアン女学園においてこのような慣習が生まれたのは、幼稚舎から中等部までは厳しい規則があるが高等部からは比較的緩やかになるため自分たちの行動を自主的に規律正しくするべきであるとの考えによる。この慣習が「スール」=「姉妹」と呼ばれるのは姉が妹を想う様に厳しくも優しく導くのが理想とされているためである。あくまで生徒の自主的な活動なので、姉も妹も持たない生徒は珍しくないが、生徒会役員など要職にある者の場合は「妹を持つ」=「後継者を確保する」という意味合いも持つので、妹を持つことが半ば不文律になっている。
ちなみに、宝塚歌劇団の「宝塚音楽学校」では、本科生が予科生の指導をするというのが、長年の慣わしになっており、本作のスールの元ネタとも考えられている。ただ、「姉妹」関係を作るということ自体は、大正・昭和初期の「女学校」では流行としてわりと行われていたことであり、本作がオリジナルの発想ではない(作者がそれを知っていたかどうかは不明である)。
- 妹
- スール関係にある上級生と下級生のうち下級生のことを指す。「プティ・スール (petite sœur) 」とも言う(対語:「グラン・スール (grande sœur) 」)。
- お姉さま
- スール関係にある上級生と下級生のうち上級生のことを指す。スール関係にある上級生に呼びかける時は「お姉さま」と呼ぶのが慣習である。逆に下級生(妹)は名前を呼び捨てにされる。スール関係にない特定の上級生を「お姉さま」と呼ぶのは大変な非礼になる。ただし、複数の上級生を「お姉さま方」と呼ぶことに問題はない。
- おばあちゃん
- 妹から見てお姉さまのお姉さまに当たる人物のこと。ただしこの用語を使うのはこの定義に該当する本人のみで、周りからそのように呼びかけたりはしない。例:「おばあちゃんとしては気楽にかまえさせていただくわ」
- 孫
- 姉から見て妹の妹に当たる人物のこと。
[編集] 山百合会
リリアン女学園高等部生徒会であり、本部は通称「薔薇の館」と呼ばれている。役員は紅、白、黄の3人の薔薇さまのみで、生徒会長、副会長、書記、会計の全てを平等に取り持つ。しかし3人だけでは手が足りないため、手伝いとして妹である薔薇のつぼみ、さらには薔薇のつぼみの妹が常時働いている。それでも人手不足のときは、メンバーがクラスメイトや親しい人間に、手伝いを頼むこともある。
ちなみに、テレビアニメ第1期の製作委員会の名称にもなっている。
- 薔薇の館
- 山百合会本部。高等部の敷地内にあり、木造2階建て。老朽化が激しい。一般生徒から見ると、いささか敷居の高いところであるらしく、最初の訪問では祐巳も随分緊張していた。
- 薔薇さま
- リリアン女学園高等部を代表する、3名の生徒のこと。生徒会長・副会長・書記にあたる役職を、それぞれ等価に受け持つとされているが、誰かが書記役をしているシーンは今の所、小説では明記されていない。薔薇さまは、三学期に行われる生徒会役員選挙で選出される。
- 薔薇さまの名称は以下の3人である。これらはバラの中で、それぞれ赤・白・黄色の花を着ける代表的な種の学名である。
- 薔薇のつぼみ
- 薔薇さまとスール関係にある下級生。次期薔薇さま候補。「お姉さま」に当たる薔薇さまの名につぼみの意味の「アン・ブゥトン (en bouton) 」をつけて呼ばれる。
- 紅薔薇のつぼみ (ロサ・キネンシス・アン・ブゥトン)
- 白薔薇のつぼみ (ロサ・ギガンティア・アン・ブゥトン)
- 黄薔薇のつぼみ (ロサ・フェティダ・アン・ブゥトン)
- 薔薇のつぼみの妹
- 薔薇のつぼみとスール関係にある下級生。「お姉さま」に当たる薔薇のつぼみの名に妹の意味の「プティ・スール」をつけて呼ばれる。
- 紅薔薇のつぼみの妹 (ロサ・キネンシス・アン・ブゥトン プティ・スール)
- 白薔薇のつぼみの妹 (ロサ・ギガンティア・アン・ブゥトン プティ・スール)
- 黄薔薇のつぼみの妹 (ロサ・フェティダ・アン・ブゥトン プティ・スール)
[編集] その他
- ごきげんよう
- リリアン女学園内での標準的な挨拶の言葉。出会いのときも別れのときも用いられる。
- さま、さん、ちゃん
- リリアン女学園ではファーストネームで呼び合うのが習わしで、上級生には「~さま」、同級生には「~さん」、下級生には「~ちゃん」と呼びかける風習がある。いずれの場合も苗字ではなく名前にさま、さん、ちゃんをつける。例として、祐巳からの呼び方は「蓉子さま」、「由乃さん」、「乃梨子ちゃん」。
- 私立リリアン女学園
- 幼稚舎から高等部、そして系列のリリアン女子大学、大学院を含めた一貫教育を行うカトリック系のミッションスクール。明治34年創立で、華族の令嬢を対象としていた。現在も名家の令嬢を多数受け入れており、俗に言うお嬢様学校である。言うまでも無く架空の学校法人であるが、そのモデルは東京都西東京市にある武蔵野女子学院中学校・高等学校であると言われる。
- 花寺学院
- リリアン女学園と同じ丘の上に建つとされている架空の学校法人。リリアン女学園とは対照的に、男子校にして仏教系の学校である。高等部生徒会と山百合会は友好関係を保っており、文化祭などで協力をすることが慣例となっている。現在の生徒会長は福沢祐麒。リリアン女学園とはほぼ兄弟校のような関係で福沢祐巳、祐麒姉弟のように兄弟姉妹で花寺学院とリリアン女学園に通っている生徒は多い。
- マリア様
- リリアン女学園では聖母マリアが信仰されている。その加護を信じる生徒は多く、登下校時には敷地内のマリア像に手を合わせる(手を組むのではなく合掌スタイル)のが慣わし。
- また問題を抱えている時、またはイベント(ヴァレンタインなど)時など敷地内のマリア像に祈る姿がよく見られる。
- マリア様のお庭
- リリアン女学園の別名。
- リリアンかわら版
- リリアン女学園高等部新聞部が発行する学園新聞。いささかゴシップ紙的な面を持ち、学園内の有名人である薔薇さま姉妹などはターゲットにされやすい。そのため山百合会幹部と新聞部とは緊張感の在る関係であるが、協力し合うことも珍しくない。
[編集] 漫画
長沢智の手によるコミカライズ版であり、集英社「マーガレット」誌上にて、2003年10月(21号)より連載されていた。現在は別冊の「ザ・マーガレット」での連載となっている。男女の恋愛モノが主流の「マーガレット」の層に合わなかったために「ザ・マーガレット」に移ったのかどうかは不明。2006年8月までに、コミックス現在6巻までが発売されている。
ほぼ原作に忠実だが、4巻は~ロサ・カニーナ~より~長き夜の~が先に収録されている。~長き夜の~には二人羽織で百人一首をするオリジナルエピソードが入る。
キャラクターの容姿は、祥子の前髪が開いていて可南子に見える、志摩子の髪がきつく巻いている、など原作挿絵との違いが指摘される。静は蓉子とまったく違う髪形。これは描き分けの都合もあるだろう。
[編集] パロディ
本作が有名になるにつれ、その登場人物やリリアン女学園が、「お嬢様」や「お嬢様学校」の代名詞として、他作品でパロディとして使用されることが多くなった。
[編集] 登場人物の真似
- 爆裂天使
- 第5話および第6話では山百合会を模したと思われる生徒会が存在する女子校が舞台で、主役の一人・メグ(声は佐藤聖役の豊口めぐみ)と仲良くなる生徒役に植田佳奈(マリみての主人公・福沢祐巳の声優)を配するなど、かなり意識している作りになっていた。
- 魁!!クロマティ高校
- アニメ版の最終回では、恐ろしげな顔付きの不良男子高校生である登場人物たちが「マリア様がみてる」の登場人物に扮し、何とも言えないおかしさを醸し出していた。
- ニニンがシノブ伝
- アニメ版・#7-1話では、「マリア様がみてる」を思わせる内容でありながら登場人物の声は若本規夫であるアニメが作品内で放映され、それを音速丸が見ているという場面がある。
- 女子高生 GIRL'S-HIGH
- 第8話のアバンタイトルで、女子高生としてリリアン女学園生徒とは対照的な今時の女子高生であるバカ軍団が山百合会メンバーに扮するシーンがある。生天目仁美演じる高橋絵里子が黄、能登麻美子演じる佐藤綾乃が白に分類されていて、色にたいして由真が突っ込むなど、アニメ版「マリア様がみてる」を意識したつくりになっている。なお、背景に描かれていた花は、薔薇ではなく菊であった。
- 桜蘭高校ホスト部
- 桜蘭をライバル視している(と思しき)ロベリア女学院の生徒会三役として薔薇さまを模したキャラクターが登場している。
[編集] 設定を取り入れたもの
『舞-乙HiME』ではスールシステムを参考にした「お部屋係」と言うシステムが、漫画版では「フミ様が見てる」というパロディが存在する。ドラマCD版「ミス・マリアはみてた」では真似た台詞も出てくる。
また、本作をオマージュにした作品も、数多く登場している。例として、『Strawberry Panic!』・『処女はお姉さまに恋してる』等がある。後者には登場キャラクターと引っ掛けたタイトルの「まりやとかが見てる」というおまけシナリオが存在する。
[編集] その他
アニメ以外の作品でもパロディはある。変わったところでは、コスプレもののアダルトビデオで『マリア様がみている』という作品が存在する。『ハヤテのごとく!』では登場人物にマリアがいるためにタイトルに「マリア様を見ている」が出てくる。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 公式サイト
- テレビ東京 マリア様がみてる公式サイト
- テレビ東京 マリア様がみてる~春~公式サイト
- D-poisonous BLUE(コバルト文庫版挿絵・アニメ版キャラクター原案担当:ひびき玲音ウェブサイト)