マックス・ヴェーバー
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マックス・ヴェーバー(Max Weber, 1864年4月21日 - 1920年6月14日)は、ドイツの社会学者・経済学者である。マックス・ウェーバーと表記されることもある(正式な名前は、カール・エミール・マクシミリアン・ヴェーバー、Karl Emil Maximilian Weber。マックスはマクシミリアンの省略形である)。
社会学の黎明期の主要人物としてエミール・デュルケーム、ゲオルグ・ジンメル、カール・マルクスなどと並び称されることが多い。
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[編集] 略年譜
- 1864年 プロイセン王国エルフルトにて、父は政治家、母は上流階級出身の敬虔なプロテスタントの裕福な家庭に長男として生まれる。
- 1882年 ハイデルベルク、ベルリン大学等で法律学、経済史などを学ぶ。
- 1889年 「中世商事会社史」で博士の学位を取得、テオドール・モムゼンより「わが子よ、汝我にかわりてこの槍を持て」という祝辞を送られる。
- 1892年 ベルリン大学の私講師となり、ローマ法と商法を講義。
- 1893年 マリアンネと結婚。
- 1894年 30歳の若さでフライブルク大学の経済学正教授として招聘される。
- 1895年 フライブルク大学での教授就任講演「国民国家と経済政策」で賛否両論の大きな反響を引き起こす。
- 1896年 ハイデルベルク大学に招聘される。
- 1898年 実父との確執から神経を病み、大学を休職しサナトリウムで静養。
- 1903年 病気のためハイデルベルク大学の教職を辞して名誉教授となる。
- 1904年 ようやく病気から癒え、新たな学問活動を再開。「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を発表。セントルイスの万国博覧会の際に開かれた学術会議への出席のためアメリカに旅行し、そのついでにアメリカのプロテスタント諸派を調査。ヴェルナー・ゾンバルトと共に、「社会科学・社会政策雑誌」(Archiv für Sozialwissenschaft und Sozialpolitik)の編集に従事し始める。
- 1905年 第一次ロシア革命に際し、ロシア語を習得。
- 1906年 ネッカー川の畔の家に移り、知的サークルの中心的存在として、エルンスト・トレルチやカール・ヤスパースらと交わる。
- 1910年 「経済と社会」に含まれる諸論文の執筆を開始。
- 1911年 「世界宗教の経済倫理」の執筆を開始。
- 1914年 第一次世界大戦勃発。活発に政治的発言を行うのと同時に、野戦病院に勤務し奉仕活動を行う。
- 1916年 「儒教と道教」「ヒンドゥー教と仏教」を発表。
- 1917年 「古代ユダヤ教」を発表。
- 1918年 ウィーン大学に招聘される。
- 1919年 ミュンヘン大学に招聘され、そこで「職業としての学問」「職業としての政治」を講演。
- 1920年 ミュンヘンで肺炎のため死去。享年56。
[編集] 主な業績
西欧近代の文明を他の文明から区別する根本的な原理を、「合理性」と仮定し、その発展の系譜を「現世の呪術からの解放(die Entzauberung der Welt)」と捉え、比較宗教社会学の手法で明らかにしようとした。そうした研究のスタートが記念碑的な論文である「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(1904年-1905年)であり、西洋近代の資本主義を発展させた原動力を、主としてカルヴィニズムにおける宗教倫理から産み出された世俗内禁欲と生活合理化であるとした。この論文は大きな反響と論争を引き起こすことになったが、特に当時のマルクス主義における、宗教は上部構造であって下部構造である経済に規定されるという唯物論への反証としての意義があった。 その後、この比較宗教社会学は、「世界宗教の経済倫理」という形で研究課題として一般化され、古代ユダヤ教、ヒンドゥー教、仏教、儒教、道教などの研究へと進んだが、原始キリスト教、カトリック、イスラム教へと続き、プロテスタンティズムへ再度戻っていくという壮大な研究は未完に終わった。
ヴェーバーのそうした一連の宗教社会学の論文と並んで、もう一つの大きな研究の流れは、「経済と社会」という形で論文集としてまとめられている。これはヴェーバーが編集主幹となり、後に「社会経済学綱要」と名付けられた社会学・経済学の包括的な教科書に対し、1910年から寄稿された論文集である。この論文集も最終的にはヴェーバー自身の手によって完成することなく、彼の没後、妻であったマリアンネ・ヴェーバーの手によって編纂された形で出版された。このマリアンネの編纂については、批判が多くその後ヨハネス・ヴィンケルマンによる再編纂版も出ているが、本来ヴェーバーが目指していたと思われる、あるべき全体構成については、今なお議論が続いている。この「経済と社会」は、教科書的・体系的な社会学を構築しようとしたのと同時に、宗教社会学における「合理化」のテーマを、比較文明史・経済史的なケーススタディの巨大な集積を通じて検証しようとしたものと位置づけられよう。また、「経済と社会」の中の「支配の社会学」における、支配の三類型、すなわち「合法的支配」、「伝統的支配」および「カリスマ的支配」は有名である。
ヴェーバーはまた、社会学という学問の黎明期にあって、さまざまな方法論の整備にも大きな業績を残した。特に人間の内面から人間の社会的行為を理解しようとする「理解社会学」の提唱が挙げられる。さらには、純理論的にある類型的なモデルを設定し、現実のものとそれとの差異を比較するという「理念型(Idealtypus)」も挙げられる。また、政治的価値判断を含む、あらゆる価値判断を学問的研究から分離しようとする「価値自由(Wertfreiheit)」の提唱も、大きな論争を引き起こした。
ヴェーバーは、ハイデルベルクでの知的サークルを通じて、哲学者カール・ヤスパースや神学者エルンスト・トレルチ、法学者ゲオルグ・イェリネックらと交わり、彼らに強い影響を与えた。また社会学者タルコット・パーソンズもヴェーバーの著作を通じて強い影響を受けている。社会学者・経済学者のアルフレート・ヴェーバーは実弟である。
日本においては、丸山眞男、大塚久雄らに強い影響を与えた。特に第二次世界大戦における日本の敗戦を、「合理主義」が西欧にあり日本に欠けていたことによるという問題意識と、社会科学におけるマルクス主義への対抗という2つの理由で受容された面が大きい。
[編集] 著書
- 職業としての学問 (Wissenschaft als Beruf)(講演)
- 職業としての政治 (Politik als Beruf)(講演)
- 経済と社会 (Wirtschaft und Gesellschaft)(注:「経済と社会」の本来あるべき全体構成については今なお議論されており確定していない。以下は日本で出版された部分訳の邦訳名の一部を挙げる。)
- 社会学の基礎概念
- 経済行為の社会学的基礎範疇
- 支配の諸類型
- 経済と社会集団
- 種族的共同社会関係
- 宗教社会学
- 法社会学
- 権力と支配
- 支配の社会学
- 都市の類型学
- 国家社会学
- 音楽社会学
- 宗教社会学論集 (Gesammelte Aufsätze zur Religionssoziologie)
- プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (Die protestantische Ethik und der 'Geist' des Kapitalismus)
- プロテスタンティズムの諸信団(ゼクテ)と資本主義の精神 (Die protestantische Sekten und der Geist des Kapitalismus)
- 世界宗教の経済倫理 (Die Wirtschaftsethik der Weltreligionen)
- 序論 (Einleitung)
- 儒教と道教 (Konfuzianismus und Taoismus)
- 中間考察 (Zwischenbetrachtung)
- ヒンドゥー教と仏教 (Hinduismus und Buddhismus)
- 古代ユダヤ教 (Das antike Judentum)
- 社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」(Die 'Objektivität' sozialwissenschaftlicher und sozialpolitischer Erkenntnis)
- ロッシャーとクニース (Roscher und Knies)
- 東エルベ・ドイツにおける農業労働者の状態 (Die Verhältnisse der Landarbeiter im ostelbischen Deutschland)
- 国民国家と経済政策 (Der Nationalstaat und die Volkswirtschaftspolitik)
- 新秩序ドイツの議会と政府 (Parlament und Regierung im neugeordneten Deutschland)
- 歴史学の方法
- 古代社会経済史 古代農業事情
- 理解社会学のカテゴリー (Über einige Kategorien der verstehenden Soziologie)
[編集] 伝記・書簡集
- マリアンネ・ウェーバー『マックス・ウェーバー』(大久保和郎 訳 みすず書房、1987年) ISBN 4622019493
- マリアンネ・ウェーバー『マックス・ウェーバー青年時代の手紙 上・下』(阿閉吉男 訳、佐藤自郎 訳、文化書房博文社)ISBN 4830107294、 ISBN 4622019493
- バウムガルテン『マックス・ウェーバー:人と業績』(生松敬三 訳、福村書店、1971年)
- A・ミッツマン『鉄の檻 マックス・ウェーバー 一つの人間劇』(安藤英治 訳、創文社、1975年) ISBN 4423800152
- 長部日出雄『二十世紀を見抜いた男 マックス・ヴェーバー物語』(新潮文庫、2004年) ISBN 4101324050
[編集] 入門書
- 青山秀夫『マックス・ウェーバー』(岩波新書、1951年)
- 安藤英治編『ウェーバー プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(有斐閣新書、1977年) ISBN 4641087369
- 折原浩『デュルケームとウェーバー』(三一書房、1981年)
- 住谷一彦、小林純、山田正範『マックス=ヴェーバー』(清水書院、1987年) ISBN 4389410784
- 徳永恂、厚東洋編『人間ウェーバー ― 人と政治と学問』(有斐閣、1995年) ISBN 4641058334
- 山之内靖『マックス・ヴェーバー入門』(岩波新書、1997年) ISBN 4004305039
- 安藤英治『マックス・ウェーバー』(講談社学術文庫、2003年) ISBN 4061595873
- 折原浩『ヴェーバー学の未来 「倫理」論文の読解から歴史・社会科学の方法会得へ』(未来社、2005年) ISBN 4624400577
- 牧野雅彦『マックス・ウェーバー入門』(平凡社、2006年) ISBN 4582853102
[編集] 関連書籍
- タルコット・パーソンズ『社会的行為の構造』(稲上毅・厚東洋輔訳、木鐸社、1976年、原著初版1937年)
- 金子栄一『マックス・ウェーバー研究 比較研究としての社会学』(創文社、1957年)
- カール・レーヴィット『ウェーバーとマルクス』(柴田治三郎他訳、未来社、1966年)
- レイモン・アロン『社会学的思考の流れ』(北川隆吉他訳、法政大学出版局、1974年) ISBN 4588000527
- Hartmut Lehmann, Guenther Roth 編,"Weber's Protestant Ethic /origins, evidence, contexts", Cambridge University Press, 1987, ISBN 0521558298 (paperback edition, 1995)
- R・ベンディクス『マックス・ウェーバー -その学問の包括的一肖像- 上・下』(折原浩訳、三一書房、1987年-1988年) ISBN 4380872122
- 折原浩『マックス・ウェーバー基礎研究序説』(未来社、1988年) ISBN 4624400305
- W・J・モムゼン『マックス・ヴェーバーとドイツ政治1890~1920』(中村貞二・米沢和彦・嘉目克彦訳、未来社、1993年) ISBN 4624300793
- W・J・モムゼン『マックス・ヴェーバー 社会・政治・歴史』(中村貞二他 訳、未来社、1994年)
- W・J・モムゼン、J・オースターハメル、W・シュベントカー編著『マックス・ヴェーバーとその同時代人群像』(鈴木広, 米沢和彦, 嘉目克彦監訳、ミネルヴァ書房、1994年) ISBN 4623023915
- F・H・テンブルック『マックス・ヴェーバーの業績』(住谷一彦、小林純、山田正範訳、未来社、1997年) ISBN 4624011376
- ヴォルフガング・シュルフター,折原 浩著『『経済と社会』再構成論の新展開-ヴェーバー研究の非神話化と『全集』版のゆくえ-』(鈴木宗徳、山口宏訳、未来社、2000年) ISBN 4624400518
- 橋本努、橋本直人、矢野善郎編『マックス・ヴェーバーの新世紀 ― 変容する日本社会と認識の転回』(未来社、2000年) ISBN 462440050X
[編集] 関連項目
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