ポリ塩化ビニル
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ポリ塩化ビニル (—えんか—、polyvinyl chloride、PVC) または 塩化ビニル樹脂 は、一般的な合成樹脂(プラスチック)の一つで、塩化ビニル単量体を重合したものである。重合させただけの樹脂は、硬くて脆く、紫外線などにあたると成分の塩素がはずれて劣化黄変しやすい。利用のためには柔らかくする成分(可塑剤)と、劣化を防ぐ安定剤を加える。一般には 塩化ビニール、塩ビ などの名前で呼ばれる。熱を加えると軟化する。
塩素とエチレンとを合成し、その熱分解によって生じる塩化ビニル単量体(CH2=CHCl)を付加重合させたものである(単量体の製法は、同記事を参照)。
硬質にも軟質にもなるため、用途は衣料、インテリア(クッション材、断熱・防音材として)、ロープ、電線被覆(絶縁材)、防虫網、包装材料(レジ袋など)、レコード盤、水道パイプ、プラスチック字消しなど多数。
[編集] 日本での利用
日本では、1941年に工業化された(なお、モノマーについては、エアロゾルの噴霧助剤として使われていたが、1970年頃に人体に害を及ぼすことがわかり使用禁止となった)。現在、年間約200万トン製造されている。
1990年代には、ポリ塩化ビニルをはじめとする塩素系プラスチックがダイオキシン類の主要発生源と考えられ、社会問題として浮上し、不買運動にもつながった。現在ダイオキシンは、塩素系プラスチックのみならず、塩素と炭素が含まれる廃棄物を焼却処分する際に不完全燃焼になると発生すると考えられている。対処法として、焼却炉の性能向上による不完全燃焼率の軽減、分別により塩素を含むごみを焼却しない、リサイクル制度の拡充、塩素系プラスチックの使用量削減などが提案されている。また、業界団体からは、焼却炉からのダイオキシンの主要発生源はポリ塩化ビニルではなく食塩によるものとする研究も出されている。これに関連して、文部省(現・文部科学省)は学校の焼却炉を廃止するように通達を出した。
また、近年、いわゆる環境ホルモンへの関心が高まる中で、ポリ塩化ビニル中に含まれる可塑剤が食品中などに溶け出すことで人体に与える影響も取り沙汰されるようになった。そのためこれまで可塑剤として多く用いられていたフタル酸エステルから、人体への影響や溶出量が少ないとされる他の可塑剤への切り替えが進んでいる。
玩具にも、柔らかく変形する人形はソフビ(ソフトビニル)人形と呼ばれ、怪我などに対する安全上の配慮からも多く用いられて来たが、現在では使用が制限され、代替材料としてエラストマー樹脂が用いられるようになった。
また、弁当などの食品製造時に用いられている手袋も、同様の理由から問題となった。
2000年6月、厚生省(現・厚生労働省)は食品製造時の塩ビ製手袋の使用をとりやめるように通達を出した。