フォルクスワーゲン・ゴルフ
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ゴルフ(Golf)はドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲンの主力モデルであるハッチバック型の自動車。2005年時点での現行モデルは5代目。車名の由来はスポーツのゴルフではなく、「メキシコ湾(ドイツ語でGolf von Mexiko)の風」から。なお、VWの車名は、風の名前から取ることが多い。(ジェッタ、ヴェント、ボーラ、シロッコetc)
ジウジアーロがデザインした初代ゴルフは、エンジン横置きFF(前輪駆動)方式と、効率的なキャビンスペースを持って登場し、世界中で大ヒット。ビートルの後を継いでフォルクスワーゲンの代表車種となり、また世界の小型車の模範とされた。
当初は現在のルポ位の大きさであったが、モデルチェンジをするたびにサイズが大きくなっていった。4代目は全幅が日本で言うところの「3ナンバーサイズ」となって、もはや小型車とは呼べない大きさとなり、現在の5代目はさらに大きくなっている。これに伴い、従来ゴルフが担っていたコンパクトカーとしての役割は、弟分のポロが引き継いでいる。一方で4代目からは内装などの質感が大幅に向上し、世界の各メーカーに大きな影響を与えた。5代目も内装の品質感は非常に高い。
GTIと呼ばれるホットモデルが初代から用意され、その人気も高い。初代は1.6リッター、2代目は、1.8リッターDOHCが搭載されたモデルである。
なお、初代ゴルフの派生車種にシロッコを挙げているが、発売はシロッコが先行している。これは、シロッコのユーザフィードバックをGolfに活かす為と言われている。現在は、Golfと同じプラットフォームを使うAudi A3がGolfに先行して発売されるのは、同じ理由によるものと考えられている。
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[編集] 変遷
以下はいずれも本国での発表年で、エンジンは日本国内で販売された車種に搭載されたものを記載する。
[編集] 初代ゴルフ 1974年
現在のルポ位の大きさ。VWビートルの後に送り出された傑作。FFハッチバックというスタイルを確立させた歴史的名車である。デザインはジウジアーロによるもの。サイドウィンドウに開くことが出来る小さい三角窓があった。名称はスポーツのゴルフではなく他のVWモデルと同様に「風」Der Golfstromに由来する。米国内ではGolfの名称は使われず、Rabbitを名乗った。
ゴルフのスポーツモデルの代表であるGTIは、当時正規輸入なし。
[編集] エンジン
- 1.6リッター直4SOHCインジェクション (LSE,E,GLE)
- 1.6リッター直4SOHCインジェクション (GTI並行輸入)
- 1.8リッター直4SOHCインジェクション (カブリオレ)
- 1.5リッター直4ディーゼルエンジン (D)
[編集] 派生車種
- ジェッタ Jetta(ノッチバック) 大容量トランクが売りで「トランクを買うとゴルフが付いてくる」とまで言われた。
- シロッコ Scirocco(スポーツカー)
- キャディ(トラック)
- カブリオレ(オープンカー)2代目ゴルフには設定がなかったので3代目のカブリオレ発売まで販売され、異例の長寿モデルとなった。
[編集] 2代目ゴルフ 1983年
現在のポロ位の大きさ 高いボディー剛性や運動性能など特徴である。デザインはVW社内で行われた。日本での販売開始は1984年で当時の正規輸入代理店であるYANASEから販売された。当初はサイドウィンドウに開かない三角窓があった。サンルーフは手動開閉式、ATは3速、右ハンドルでもワイパーアームの取り付け位置は左ハンドル用のままであった。また、この代からGTIの正規輸入が始まった。当初8VのGTIが登場し、後から16VエンジンのGTI16Vが追加された。GTIは当時人気のあったピレリP6を履き、純正ホイールもピレリのPの文字がデザインされたモノが装備されていた。GTI16Vは4灯のグリルを備えていたが、日本国内の保安基準(補助灯の中心はヘッドライトの中心より上に合ってはならない)に合わず中央寄りの2灯は点灯しなかった。また、1986年に世界で初めてゴルフ2ディーゼル(型式「1V」)に酸化触媒が搭載された。ただし、日本国内仕様での酸化触媒はゴルフ3まで待たなければならなかった。マイナーチェンジ後のモデルでは三角窓は廃止され通称ビッグバンパーが装備、ワイパー位置も右ハンドル用に修正された。
[編集] エンジン
- 1.8リッター直4SOHC (Ci, GLi, GTI)
- 1.8リッター直4DOHC (GTI16V)
- 1.6リッター直4ディーゼル,ディーゼルターボ
[編集] 派生車種
- ゴルフ Syncro(シンクロ) ゴルフにビスカスカップリングを搭載しフルタイム4WD化した。下記のゴルフカントリーと異なり、外観上の違いはグリル、フェンダー、そしてリア部にある"Syncro"エンブレム以外ない。しかし内装は高めのフロアトンネル、リアデフ設置の為のトランクルームの狭小化、後席用空調ダクト、GTIと同様のグローブボックスにある"Syncro"エンブレムがある。VW社の資料に拠れば路面状況により前/後輪に対するトラクション配分を95:5から5:95まで変更できる。左ハンドルのマニュアルトランスミッション車のみのラインアップで日本国内では87年から89年まで販売。ハッチバックタイプのゴルフに対するセダンタイプのジェッタがあるように、ジェッタのSyncroモデルもある。
- ゴルフカントリー Syncroをベースに車高を上げたモデル。車高の高さと相まってスペアタイヤがリヤドアの外側にフレームをつけて取り付けてある姿は一種独特。国内販売は上記Syncroと異なり91年まで販売継続。しかし総輸入台数は通年で110台と限定車並みに少なかった。現在でも中古車市場では高値で取引されている。
- ジェッタ(ノッチバック) ゴルフのセダンバージョン。ヘッドライトは異形2灯となる。(北米仕様ゴルフ=Rabbitもこの異形2灯)
- シロッコ(スポーツカー)ゴルフに先行して2代目が登場するがベースは初代ゴルフのスポーツクーペ。GTIと同じエンジンを搭載している。この後継車として2台目ゴルフをベースにしたコラードが登場した。
- コラード(スポーツカー) 1.8リッターGラダースーパーチャージドエンジン(G60)を搭載したスポーツクーペ。160HPを誇っていたスポーツクーペだった。速度感応式でせり上がるリアウィングスポイラーが装備されていた。
- ゴルフ Rallye(ラリー) WRC用にゴルフを4WD化し、コラードと同じG60スーパーチャージドエンジンを搭載していたが、ACの装備が元々無く、尚且つ日本での正規販売もなかった。薄型異形ヘッドライトや大きなオーバーフェンダーが外観上の特徴。
- ゴルフ G60 Limited ゴルフRallyeと同様にG60スーパーチャージドエンジンとSyncroシステムを搭載しているが、こちらは4ドアモデルもあり、尚且つ見た目は普通のゴルフと同じと言う、正に羊の皮を被った狼のような存在。この車両も日本国内での正規輸入販売はなかった。
[編集] グレード
Ci、CLi、GLi、GLX、GTI、GTI 16V、C diesel、CL diesel、CLD turbo、GTD
[編集] 3代目ゴルフ 1991年
1992年にゴルフとしては初めて欧州カーオブザイヤーを受賞。派生車はハッチバックに加え、カブリオレやワゴン、セダンのヴェントがある。
ゴルフ史上で一番廉価なゴルフ(CLi2ドア)であり、初めてカブリオがモデルチェンジを行い、ゴルフ初のワゴンも登場した。日本でノッチバックの名称がジェッタでなくなったのもゴルフⅢの時代からである。
日本ではVWが当時、ロックバンドのボン・ジョヴィの来日公演のスポンサーだったことから、限定車として「Bon Jovi Edition」が販売されたことがある。ちなみに欧州では同様に、ピンク・フロイド仕様も発売された。
[編集] エンジン
- 1.8リッター直4(OHC)
- 2.0リッター直4(OHC)
- 2.0リッター直4(DOHC 16V)
- 2.8リッターV6
- 1.9リッター直4ディーゼルターボ
[編集] 派生車種
- ヴェント
- ゴルフワゴン
- ゴルフカブリオ(カルマン社による)
[編集] グレード
- ゴルフ - CLi(2ドア/4ドア)、CLディーゼル、GLi、GTI、VR6、ワゴンCLi、ワゴンGLi、カブリオ
- ヴェント - CLi、GLi、VR6
[編集] 4代目ゴルフ 1997年
ドイツ出身の現ローマ教皇ベネディクト16世の枢機卿時代の愛車だった。全幅はついに1700mmを超えたため、日本では3ナンバー(普通乗用車登録)化した。プラットフォームはアウディA3、TTなどと共通。派生車種はヴェントが廃止されボーラが加わった。またニュービートルは、このモデルのプラットフォームを使用している。 VWのRライン第二弾であるR32は本モデルより登場し2ドア左Hが500台、4ドア右Hが400台の限定車(日本導入台数)であった。
[編集] エンジン
- 1.6リッター直4 SOHC (E,L)
- 1.8リッター直4 DOHC 20バルブ (CLi,GLi初期)
- 1.8リッター直4 DOHC 20バルブターボ (GTI,GTX)
- 2.0リッター直4 SOHC (CLi,GLi,L Plus)
- 2.3リッターV5(日本未導入)
- 2.8リッターV6(ボーラV6)
- 3.2リッターV6 SOHC(R32)
[編集] 派生車種
- ボーラ
- ゴルフワゴン
- ゴルフカブリオレ
- ニュービートル
[編集] 5代目ゴルフ 2003年
先代に引き続きプラットフォームはA3と共通。トランスミッションはこのクラスでもいち早く6速ATを採用し、GTI以上のグレードにはATではなくDSGを搭載している。(MTはGTI、R32のみ設定あり) 特にGTIは先代、先々代と他グレードと見た目にほとんど差が見られなかったが、5代目GTIは明らかに差別化された外観を持ち多くのバックオーダーを抱える人気グレードとなっている。尚、GTIと同じエンジン、トランスミッション(DSG)を搭載するGTXはGTIベースではなく、GTベースである。
[編集] エンジン
- 1.4リッター直4 DOHC TSI(日本未導入)(GT 日本仕様とは異なる。)
- 1.6リッター直4 DOHC FSI(E)
- 2.0リッター直4 DOHC FSI(GLi)
- 2.0リッター直4 DOHC TFSI(GTI、GTX)
- 2.5リッターV5(日本未導入)
- 3.2リッターV6 DOHC(R32)
[編集] 6代目ゴルフ 2007年
4ドアと2ドアでは異なるデザインが採用されると言われ4ドアはゴルフプラスのようなデザインが採用され2ドアでは車高の低いスポーティなデザインとなる。
[編集] 派生車種
[編集] ワンメイクレース
- 1970年代から80年代にかけて、ドイツや日本などでゴルフのワンメイクレースが「Golfポカールレース」の名称で開かれていた。著名な参加者に歌手の稲垣潤一や岩城滉一(レース後に相手を殴ってフライデー誌に載る)、三原順子なども参戦していた。
- 2005年からは「ゴルフGTiカップ」の名称で行われている。