キャブレター
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キャブレター (carburetor, イギリス英語ではcarburettor)は、ガソリン、LPガス、ケロシンを燃料とする、ディーゼルエンジンとジェットエンジンを除く内燃機関において、燃料を霧状にして噴出させると同時に、エンジンの負荷に応じた比率で空気と燃料を混合し、エンジン内に混合気を供給するための装置。
日本語では気化器と呼ばれるが実際は気化ではなく霧化である。
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[編集] 語源
内燃機関の吸入気に、炭素化合物である石油系燃料を加え、混合させる働きをすることから、炭素と化合させるという意味の「carburet」に-erを付けたもの。
[編集] 作動原理
以前は家庭でも見られた、アイロンがけや障子張りに用いられた、口で吹くタイプの霧吹きや、塗装や薬剤散布に用いられる、吸い上げ式のスプレーガンと同じ原理。
キャブレターに供給される燃料はボウルと呼ばれる部屋に一時貯まる。ボウルは開放構造で内部は大気圧に保たれている。常に燃料に浸かる場所には燃料の取り込みを制限するジェットと呼ぶ小穴があり、その先は複雑な形をしたチューブでポートにつながっている。
一方、エンジンの回転に伴い、ポンピングにより発生した負圧によりキャブレターに吸い込まれる空気は、ベンチュリと呼ばれる流路を絞った部位を通過する。そのベンチュリ部では、いわゆる「ベンチュリー効果」により空気の流速が上がり、大気圧より圧力が低下する(低下の度合いはベルヌーイの定理によりわかる)。圧力が最も低くなる場所に、前述のポートがある。ポートは通常小さな穴、もしくは溝状である。こうしてポート付近に大気との圧力差が生まれることでボウルの燃料はチューブ内を突き進み、ポートから霧吹きのように拡散して、混合気が作られる。
[編集] 自動車用キャブレター
最近の四輪車は主に燃料噴射装置(フューエルインジェクション)を採用しているが、二輪車では現在でも多く見ることができる。上記の作動原理を基本として、キャブレターは以下の系統により構成される。
- フロート系統:フロートチャンバ、フロート、フロートバルブで構成され、フロートチャンバ(フロートチャンバー)は作動原理の中のボウルに相当する。
燃料ポンプの働きでフロートチャンバ内に燃料が送られると、フロート(浮き)が上昇する。持ち上がったフロートはフロートバルブを押し上げ、燃料流入通路を閉じる。燃料が消費され、フロートチャンバ内の油面が下がると、フロートも下がり、フロートバルブが再び開く。この動作により、燃料流入通路の開閉を常に繰り返し、フロートチャンバ内の油面を一定に保つ役割がある。 - メイン系統:中速回転から高速回転における燃料の計量などを司る。
メインジェット、メインジェットホルダ(メインエアブリードと一体)、ジェットニードル、ニードルジェット、メインエアジェットで構成される。 - スロー系統:アイドリング回転時や低速回転時の燃料の計量などを司る。スロージェット(または、パイロットジェット)、スロージェットホルダ、バイパスポート、アイドルポート、スローエアジェットで構成される。
- スタータ系統:エンジン始動時の燃料の計量などを司る。チョーク機構もこの系統である。
フロート系統以外はエンジンの状態に適した混合気をシリンダーに供給するために分かれている。フロートチャンバから吸い上げられた燃料は、ブリードで空気を混入され、各系統のポートからメーンボア内に噴出する。これが空気の流れによってシリンダー内に導かれるが、この時はまだガソリンは気化されておらず霧状である。その後、圧縮行程時の熱によって一気に気化して混合気となり、燃焼に適した状態となる。
出力の調整には、アクセルワイヤーで同調されたバタフライバルブで操作するCV型(負圧開閉式)と、ピストンバルブを直接操作するVM型(直接開閉式)の2方式がある。
CV(Constant Velocity または Constant Vacuum)型では、アクセルワイヤーは空気の流量のみを調整する。ベンチュリ部はバキュームピストンによって形成され、その下端には穴が開けられている。バキュームピストンには膜が付いており、膜の片側にはベンチュリ部の負圧がかかり、反対側は大気に開放している。バキュームピストンはバネで支持され、バネの力と負圧のバランスでベンチュリ径が自動的に決まり、その後は流速がほぼ一定になるように自動調節される。ベンチュリ径が運転者の操作で直接変化しないため、操作に対しては寛容だが、その分レスポンスが悪い。
VM (Villiers Monoblock または Variable Manifold) 型は、アクセルワイヤーが直接ピストンバルブを操作するため、空気の流量調整と同時に、ベンチュリ部の口径を直接変化させることになり、鋭いレスポンスが得られる一方、運転者の技能によって大きく性能が左右される。ピストンバルブ式とも呼ぶ。なおVMの由来をバーチカル・メグロの略とする説があるが、誤りである。また強制開閉式と呼ばれることも多いが、強制開閉式とはスロットルバルブの閉じ側もワイヤー等により操作する方式のことであり、これも誤りである。
[編集] 現状
最近はキャブレターではなく、燃料噴射装置(フューエルインジェクション)を採用するものが増えている。燃料噴射式は、流入空気(酸素)量と排気ガス中の残存酸素量、オルタネーター、エアコンコンプレッサー、パワーステアリングポンプなどの負荷変動を、センサーにより絶えず検知し、供給燃料の無駄を減らし、かつ、三元触媒が効率良く働く空燃比としているのに比べ、キャブレターの燃料供給量は、メーンボア内の負圧と、各種ジェットによる規制で決めているため、その量はかなりアバウトであり、燃費と環境対策の対応は難しくなっている。 二輪車でも大型車を中心に燃料噴射装置を採用している車種が増加しているが、アバウトであるが為のキャブレター独特のフィーリングにも根強い人気がある。 航空用ピストンエンジンにはキャブレター、インジェクター(燃料噴射式)のいずれの方式を使うものもある。
一般的にキャブレター方式は燃料噴射式に比べ、電気が不要で、構成部品が少なく、製品コストも低い特徴を持つ。磨耗や折損などの機械的トラブルがあるものの、電気的トラブルは通常無いため、用途によっては進んで導入する価値がある。
また、構造に対する知識と整備の心得があれば、個人でのメンテナンスやリビルドも十分可能であり、エンジン出力をコントロールする感覚が楽しめることとあいまって、二輪やクラシックカーなど、趣味の世界では、いまだ主流となっている。
※キャブレターの分解整備には知識と技術が必要です。
キャブレターが正常に機能しない場合、エンジンを壊したり、最悪の場合、人命にかかわる事故につながる危険があります。
判らない、手に負えない、などの場合は、無理をしてそのまま組んだりせず、専門の業者に依頼するようにしましょう。
[編集] 分類
キャブレターの呼ばれ方は多種多様である。
[編集] 有するボアの数による分類
吸気する穴(ボア)の数を数えて、~バレルと呼ぶ。 2バレル、4バレルなど偶数が多い。
[編集] 有する機能による分類
[編集] シングルステージキャブ
ひとつのボアで全域をまかなうシンプルなキャブレター。 ステージドキャブと区別するため、このように呼ばれる。 機能が同じボアがボディにふたつ並んだ2バレルもある。
[編集] ステージドキャブ
ボディに作動回転域の異なる複数のボアを有するキャブレター。 基本はプライマリーボアとセカンダリーボアで構成する2バレルであるが、 ボアの直径の相違やチョークバルブの有無などで、外観からシングルステージの2バレルと判別可能である。 これを並列に収める4バレルもある。 珍しい機構としてヤマハ・V-MAXのVブーストシステムがある。
[編集] 吸気方向による分類
実装条件によって吸気を下に落とす、上に送る、水平に流すなど臨機応変に設計されるため、 ダウンドラフト、ホリゾンタルなどがある。何度傾けるとそう呼ぶかの定義は明らかでない。
[編集] 実装個数による定義
ツインキャブ、6連キャブなど。これは同じキャブレターが何個連結してあるかを表す。 直列に多気筒が並ぶ内燃機の燃焼室に等分な混合気を送る場合、気筒数分連結されることが多い。 自動車では一般的に高性能を謳うものとして扱われるがオートバイでは一般的である。そのため、オートバイではキャブレターの数は宣伝として使われない。
[編集] 主なキャブレター製造メーカー
ケーヒン ミクニ ソレックス ウェーバー SU デロルト Walbro
[編集] ケーヒン製キャブレター一覧
[編集] CR系統
FCR28φ CR26φ CR22φ
[編集] CVK系統
CVK24φ CVK20φ
[編集] PD系統
PD22φ
[編集] PC系統
PC24φ PC22φ PC20φ PC18φ PC16φ PC15φ
[編集] PB系統
PB18φ PB16φ PB13φ
[編集] ミクニキャブレター一覧
[編集] フラット系統
TMR40φ TMR35φ TM24φ TM20φ
[編集] VM系統
VM26φ VM22φ VM20φ VM18φ