ナブラ
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∇(ナブラ、nabla, del)は、ベクトル解析におけるベクトル微分演算子(ベクトル微分作用素)の一つ。記号 ∇ はハミルトンによるもので、∇ を「ハミルトンの演算子」と呼ぶこともある。記号の形がアッシリアでヘブライ人が用いたとされる竪琴ナブラ (nebel) に似ているので、記号 ∇ は「ナブラ」と呼ばれる。実際にはナブラという楽器の実物は残っておらず、壁画等にその形が残っているのみである。また、Δ(デルタ、delta)の上下逆なので、単語を逆から読んで「アトレッド」または「エイトレッド」 (atled) という呼び名もあるが、普通は使われない。
[編集] 定義
ベクトル演算子である ∇ の要素は偏微分記号を用いて書き下せる。 3 次元デカルト(直交直線)座標系(xyz-座標)では次のように書ける:
ただし、i, j, k は互いに直交する各方向への単位ベクトル、すなわち基底である。一般に、{e1, ..., en} を基底とする n 次元直交座標空間に配置される場(関数)に対する微分作用素
も同じく ∇ と記されることがある。特に、n = 1 のとき
だが、これは D, Dx などと記されることがある。
[編集] 性質
- 演算子 ∇ をスカラ場 φ に形式的に施したもの ∇ φ は、スカラ場の勾配 grad φ を表す。
- ベクトル場 A と ∇ の形式的な内積 ∇ · A は、場の発散 div A を表す。
- 演算子(作用素) ∇ 2つの内積を形式的にとって定まる作用素 ∇2 は、ラプラス作用素 Δ と呼ばれる。
- 3 次元空間におけるベクトル場 A と ∇ との形式的な外積 ∇ × A は、ベクトル場の回転 rot A を表す。