ドルアーガの塔 (ゲームブック)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ドルアーガの塔(-とう)は、1986年に東京創元社より刊行された、同名のコンピュータゲーム『ドルアーガの塔』を原作とするゲームブックのシリーズ。鈴木直人著。イラストは虎井安夫が担当している。
なお、ケイブンシャ版『ドルアーガの塔 外伝』については、本項で後述する。
以下の三巻で構成される。(括弧内は初版日付)
- 悪魔に魅せられし者 (1986年7月31日)
- 魔宮の勇者たち(1986年10月31日)
- 魔界の滅亡(1986年12月21日)
目次 |
[編集] 概要
全60階(各巻20階ずつ)のダンジョンを制覇するという、他に類をみないスケールのゲームブック。当時としては珍しい、迷路の中を自由に行き来できる双方向型で、ほとんどのフロアで正確な地図が書けるように工夫されている。
原作の設定を下敷きにしつつも、塔の中で暮らす人々やモンスター、数々の工夫された仕掛け、魅力あるNPC等で独特の世界観を築き上げた。そのゲーム性だけでなく、クライマックスの演出に見られるような卓越した文章描写も評価が高い。発売から20年を経てもファンの間で話題になることが多く、日本においては国産ゲームブックの代表としてとらえられている。
[編集] あらすじ
悪魔ドルアーガが、王国に平和をもたらしていた秘宝・ブルークリスタルロッドを奪い、60階に及ぶ塔のどこかに隠してしまった。女神イシターの巫女カイは単身塔に乗り込むが、逆に囚われの身となってしまう。王国の戦士ギルガメスは、恋人であるカイとブルークリスタルロッドを奪還するために塔へと挑む。
[編集] 各巻の内容
[編集] 悪魔に魅せられし者
500項目、1階から20階まで。
鈴木直人のデビュー作。各フロアは双方向の迷路で、フロア間の移動は一方通行になっている(2階→1階と戻ることはできない)。
20階でドルアーガと一回目の対決をする。
[編集] 魔宮の勇者たち
500項目、21階から40階まで。
市場や酒場があったり、空飛ぶ船で塔外へ出られたりと非常に変化に富んだ巻。塔の中に暮らす人々(人間、亜人間、モンスター)が多く登場し、生活感がある。共に行動する仲間としてメスロンとタウルスが登場することが最大の特徴。
[編集] 魔界の滅亡
741項目、41階から60階まで。
フロア内のみならずフロア間もほぼ完全に自由な行き来が可能で、外階段を利用したフロア間移動はもはや三次元迷路と言って良いほど。フロア内の仕掛けも非常に充実しており、例えば倉庫番風のフロアが存在したりと飽きさせない作りになっている。
エンディングが二種類有ることでも話題を呼んだ。
[編集] システム
[編集] 各フロアの構成
各フロアは東西8ブロック×南北8ブロックの正方形(1ブロックは5メートル×5メートル)。塔の外壁は石造り、内壁はレンガや大理石でできていて、壁の種類が自分の位置の目安となる。
多くのフロアは内壁で区切られたいくつかの部屋や通路、壁に取り付けられた扉などで構成される。内壁はほとんどの場合ブロックとブロックの境に存在するが、稀にブロックに関係なく配置される。
[編集] フロア間の移動
各フロアは階段で結ばれており、エレベータもいくつか存在する。階段の上端が跳ね蓋になっている場合は一方通行であり、一度上ると下のフロアには降りられない。また階段を上り下りした後は必ず前のフロアの同じ座標に出る。
外壁に取り付けられた白木のドアからは外階段が利用でき、殆どの場合は41階←→45階のように離れたフロアを相互に行き来できる。
[編集] 戦闘
攻撃と防御で別々に判定を行う分、ファイティング・ファンタジーシリーズよりやや複雑になっている。
- 自分の'戦力ポイントと、使用する武器の武器ポイントの合計にサイコロ2個の出目を足す。これが自分の攻撃力となる。
- 敵の技量ポイントにサイコロ2個の出目を足す。これが敵の防御力となる。
- 自分の攻撃力が敵の防御力を上回ったとき攻撃は成功し、敵の体力ポイントを2減らす(武器によっては4ないし6)。
- 続いて、敵の技量ポイントにサイコロ2個の出目を足す。これが敵の攻撃力となる。
- 自分の戦力ポイントと、身につけた防具の防具ポイントの合計にサイコロ2個の出目を足す。これが自分の防御力となる。
- 敵の攻撃力が自分の防御力を上回ったときは攻撃を受け、自分の体力ポイントを2減らす。
上記手順を、どちらかの体力ポイントが0になるまで繰り返す。
[編集] 呪文
選択肢が用意されている場合は、稲妻や眠りなどの魔法の呪文を使うことができる。呪文は5文字のアルファベットで表され、使用すると効果に見合った体力を消費する。中には即死するほどの体力を消費するものもあるので注意が必要である。
[編集] 主な登場人物
[編集] 原作と共通のキャラクター
- ギルガメス
- 物語の主人公でありプレイヤーの分身。文中では「あなた」で呼び表される。愛称はギル。
- 金色の甲冑を身にまとい、人々から王国の英雄として慕われている。長身で怪力を誇り、いくつかの呪文も使いこなす。
- カイ
- 女神イシターの巫女で、ギルガメスの恋人。ドルアーガに囚われた彼女を救い出すのがゲームの目的の一つ。
- イシター
- 豊穣の女神。ゲーム中ではグリーンクリスタルロッドを通して一度だけ登場する。
- ドルアーガ
- 9本の腕と4本の足を持つ悪魔。様々な魔法に長けており、中でも魅了の術と変身が得意。普段は人間の姿に変身しており、金髪の美青年の姿を好む。
[編集] ゲームブック版のオリジナルキャラクター
- メスロン
- ヴィジュアル系バンドを思わせるような風貌(当時の作者あとがきではヘヴィメタルと表現された)の魔道士(メイガス)。ギルに様々な助力をするほか、二巻ではギルと同行する仲間となる。外見は少年のようで、エルフのように耳がとがっているが種族は不明。鈴木著『パンタクル』の記述によれば、森の国シャンバラーの国王セフィロトの第二王子であったとされている。
- ゲームブックオリジナルのキャラクターだが、この後、『パンタクル』をはじめとする鈴木直人作品の殆どに登場する重要なキャラとなる。
- タウルス
- ドワーフの盗賊で、盗賊王を自称する。塔内に囚われていたところをギルに助けられ、以降行動を共にする。鍵開けの名人で口も達者、ドワーフらしく酒好き。メスロンとは口喧嘩が絶えないが憎んでいるわけではなく、負傷したメスロンを看病する場面も。
- クルス
- 弁髪を結った東洋人の剣士で、ギル以上の大男。メスロンを助ける目的で塔に乗り込んだ。ギルに助言し、時に助け合うが、志半ばに倒れる。
- ゴルルグ
- 双頭のリザードマンで、それぞれの首が同時に呪文を唱える強敵。僧衣をまとっている。
- パオトとアンフ
- 著者の鈴木直人とイラストの虎井安夫がモデル。塔内でもゲームブックを書いている。
[編集] 関連作品
- NAMCO x CAPCOM - ゲームブック各巻のタイトルが使われたり、イラニスタンの油等のゲームブックオリジナルアイテムが登場する。
[編集] 創土社版
ウィキペディアはニュース速報でも宣伝サイトでもありません。事実を確認し正確な記述を心掛けてください。また、特に重要と思われることについてはウィキニュースへの投稿も検討してみてください。
創土社より2006年11月に『ザ・タワー・オブ・ドルアーガ 悪魔に魅せられし者』として上記三部作の1巻が復刊予定。
[編集] ケイブンシャ版『ドルアーガの塔 外伝』
1985年に、勁文社より『ドルアーガの塔 外伝』が出版された。このゲームブックもビデオゲーム版『ドルアーガの塔』の設定に基づいているが、東京創元社版『ドルアーガの塔』三部作とはまったくの別作品であり、完全に無関係である。この作品ではギルの双子の弟ノヴァが囚われの巫女ミーシャを助け出すために、ドルアーガの建造した6階建ての城砦戦車ドルアガノンの内部を探索する。エピローグ後の次巻予告では、背中に塔を生やしたモンスター・ドルアガドンや、頭部が塔となった巨人ドルナイトの物語が予告されている。
- 北殿光徳/スタジオ・ハード 『ドルアーガの塔 外伝』 勁文社 ISBN 4-7669-0387-0