ソードフィッシュ (雷撃機)
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ソードフィッシュ(Swordfish)とは、イギリスの航空機メーカーであるフェアリー社が開発し、イギリス海軍航空隊(Fleet Air Arm)によって使用された三座複葉の雷撃機である。基本性能こそ低かったものの、汎用性や操作性に優れ複葉機時代の最後を飾った非全金属製軍用機の傑作。
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[編集] 開発
ソードフィッシュは、フェアリー社が1930年に自主開発したギリシャ海軍向けのTSR.1試作雷撃機を改良したTSR.2雷撃機を1935年にイギリス海軍が採用したものである。なお、TSR.2の初飛行は1934年4月であった。
搭載していたブリストル・ペガサスエンジンの稼働率が高く、タイガーモス練習機よりも簡単とされた操縦性の良さからパイロット達からはストリングバッグ(Stringbag 何でも入る買い物篭の意)と呼ばれ信頼性は高かった。ソードフィッシュが採用された時点で、航空業界には全金属・単葉の機体が普及しつつあったが、艦載機の分野では、まだ保守的な設計が主流であり、ソードフィッシュにも実用性を第一とし実績のある複葉と鋼管骨組み羽布張りが採用された。また、1937年には後継機のフェアリー社が開発したアルバコアが配備されはじめたが、アルバコアの性能が殆どソードフィッシュと変わらず、タウラスエンジンの信頼性が低かったためソードフィッシュの生産が続行された。なお、フロートを装着した水上機型もあった。
[編集] 活躍
ソードフィッシュは複葉機で低性能ではあったが、第二次世界大戦のヨーロッパ方面の戦闘に於いて活躍する事が出来た。それはドイツやイタリアなどの欧州方面枢軸国が洋上作戦展開出来うる航空兵力(航空母艦等)を保持し得なかったことと、艦隊決戦よりもシーレーン防衛を重視した英国海軍の戦略に因るところが大きい。大西洋やバレンツ海では護衛空母に搭載されたソードフィッシュがUボート狩りに使用され、1941年のビスマルク追撃戦ではアークロイヤル搭載のソードフィッシュがビスマルクに対して雷撃を敢行し、操舵装置に損傷を与えビスマルク撃沈に一役かった。また1940年にはイタリア海軍の要港、タラント湾を夜襲しイタリア艦隊に重大な損害を与えた。
洋上作戦ではソードフィッシュは大活躍したが、枢軸国側が陸上からの航空支援可能な地域では性能の低さを露呈してしまった。ツェルベルス作戦を発動しドーバー海峡を突破しようとするドイツ艦艇(シャルンホルスト、グナイゼナウ、プリンツオイゲン)阻止のため出撃したNo.825スコードロンのソードフィッシュはドイツ機の迎撃と艦載対空砲により全滅してしまった。
しかし、正規空母の装備が、後継の雷撃機と入れ替わるに連れ、夜間攻撃や対潜哨戒などの任務に充てられるようになると、本来の優れた汎用性と離着艦性能、レーダー、ロケット弾等の新兵器と相まって、他の艦上攻撃機では真似のできないような活躍を見せた。例えば、急降下爆撃が可能であったのは、TBF アヴェンジャーより前の艦上雷撃機では本機だけであったし、時化の多い大西洋では、本機以外の艦上機が全て離艦不能になるような事態も多かった。このような特殊な能力を生かし、ソードフィッシュは終戦まで第一線で活躍し続けた。
ソードフィッシュ以降、イギリス海軍は後継雷撃機の独自開発を行い、アルバコア、バラクーダ等を送り出すが、どの機体もソードフィッシュに比べ評価が低く、ソードフィッシュ以上の評価を得た英国製雷撃機は現れず終いとなってしまった。一部部隊では、アルバコアの受領後にソードフィッシュに戻った部隊もあった。
[編集] 要目
- 全長:10.9m
- 全幅:13.9m
- 全高:3.8m
- エンジン:ブリストル・ペガサスIIIM3 空冷星型レシプロエンジン(690馬力)
- 最大速度:246km/h(魚雷搭載時150km/h程)
- 乗員:3名
- 武装:対地ロケット・爆弾・魚雷など 限界重量700kg
[編集] 派生型
- TSR.1:原型機。
- TSR.2:原型機。TSR.1を改良。
- Mk.I:量産型。
- Mk.II:金属の防護板を採用し、3インチロケット弾の搭載も可能。1943年より製造。
- Mk.III:レーダーを搭載し、高い索敵性能を誇る。
- Mk.IV:操縦席を密閉型にしたもの。