ジャングル (テレビドラマ)
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ジャングルは、日本テレビ放送網系にて、1987年2月27日~1988年9月2日まで、毎週金曜日20:00~20:54(それまでの太陽にほえろ!の枠)に放映されていた刑事ドラマの番組である。なお、同作は、1988年に、一部キャスト・スタッフを差し替えて、「NEWジャングル」としてリニューアルされたが、「風雲!たけし城」(TBSテレビ)、「ミュージックステーション」(テレビ朝日)をはじめとする裏番組に視聴率競争で負け、同年9月2日で打ち切り終了(ジャングル:全34回、NEWジャングル:全33回)、その後1ヶ月程の特番編成で繋いで、同じ刑事ドラマの「もっとあぶない刑事」に引き継がれる。
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[編集] 概要
舞台となるのは東京都新宿区に近い架空の「八坂(やさか)区」を管轄とする警視庁八坂警察署。 「太陽にほえろ!」が七曲署で、それに続く舞台として「八坂署」はどうかと、脚本家の蔵元三四郎が提案して採用された。ちなみに蔵元は、時代劇の撮影現場である京都を訪れたとき、散策途中に八坂神社、九条警察署などを見て思い付いたと自身のHPで語っている。
津上警部補率いる刑事課捜査一係の刑事たちを通して一つの事件の受理から解決までを描く。
前作太陽にほえろ!シリーズと異なり、刑事部屋には常に10人以上の刑事が執務している大規模警察署が舞台であり、実際の捜査活動、警察描写に於いて当時としてはかなりのリアルさを追求した作りとなっていた。これは「太陽にほえろ!」との差別化から取り入れられたもので、リアル志向の警察ファンからは評判を得た反面、物語がいくつも重なって展開していくペースに視聴者が戸惑い、多人数のキャストでは各人の個性を十分に描写しきれないなどの問題点もあった。 現在では珍しくないが、警察用語を台詞に取り入れるようになった。四係をマルボーと正式に?呼ぶようになったのは「ジャングル」からである。※以前には大川俊道脚本(太陽にほえろ)で単発的に使用されるのみだった。後の「あぶない刑事」でも神奈川県警のコードを使うようになり、現在のリアル志向の先鞭を付けた。
[編集] リアル描写の例
- 殺人事件に対し警視庁から捜査一課強行犯捜査係が八坂署に赴き、捜査本部が設置された上で捜査が行なわれる
- 拳銃は特に必要とした場合を除いて携帯しない。(津上が判断し、携帯を指示する)
- 拳銃の発砲も実在の警察と同様、適正だったかどうかをマスコミや社会に問われる。
- 犯人が銃器を所持している場合、津上の指示によって刑事全員に防弾チョッキの着用が命じられる。(ジャングル最終回は機関銃を所持する犯人を工事現場へ追いつめるが、現場への防弾チョッキの到着が間に合わず、津上の命令と先輩刑事である小日向の指示を無視して突入した磯崎が、小日向の援護射撃失敗により射殺され殉職する)
- 事件の通報はまず警視庁本庁が通信指令センターで受け付け、基幹系警察無線を通じて内容が八坂署に伝達され、最初は制服警官が現場に駆けつける。(八坂署へ伝達した指令係、伝達を受けて応答した八坂署の刑事は記録に取るため必ず名乗る。八坂署で伝達を受けるのは、主に津上と佐久間)
- 殉職警察官の葬儀では刑事役の俳優も礼服(スーツ)ではなく制服を着用する。遺影に用いる写真も制服着用のもの(磯崎刑事の葬儀が代表例)
- パトカーは車輌課から貸与。その日最後に使った警察官が翌日の始業点検を行う(この始業点検を怠って緊走時にサイレンが鳴らなくなったエピソードあり)
特に初期の「バラバラ事件」(犯人役は石橋蓮司)、「広域窃盗事件」(犯人役は下條アトム)の二編は、実在の事件を元に描かれており評価は高い。また、今までの刑事ドラマとして異例の1話完結ではなく、ドラマの進行に関係のない事件が平行して起こるという状況も盛り込まれ、事件発生から犯人逮捕までに2~4話も描かれている。「バラバラ事件」では犯人が指にボンドを塗って常に指紋を残さない逃走術が再現されたり、「広域窃盗事件」では犯人をムササビと呼んだり、目の前で犯人を取り逃がす(捜査の過程であった事実)など、実在の警察の捜査がリアルに再現されている。
リニューアルしての「NEWジャングル」では、番組初期からの路線を若干残しながらも、まだ刑事としては経験が浅い成田浩平(江口洋介)の成長をメインに、各刑事にスポットを当てた脚本となった。 無名に近い新人を連続で主演させるのは実に松田優作以来であった。「NEWジャングル」では拳銃の携帯や使用などが過去の刑事ドラマと同じように急激に緩和され、オープニングでは江口洋介が拳銃を撃ちまくるシーンが放送されるが、刑事ドラマの内容とはかけ離れ、デビューまもない江口洋介のプロモーションフィルムのようになってしまった。劇中には江口が歌う「ガラスのバレイ」が浩平のテーマとして流れ、場面を盛り上げた。
太陽にほえろ!で終了間近に登場した新人刑事DJ(西山浩司)の成長を描き切れなかったという宿題を持ち越した側面もあり、本シリーズでの「九条有希」というキャラクターでその成長を描いた。
[編集] キャスト
- 捜査一係長・津上邦明警部補:鹿賀丈史 (八坂署捜査一係の司令塔。妻-雅子とマンションでの夫婦2人暮らし。子供はいない)当時の紹介記事では警部。
- 溝口平太:勝野洋 (愛称-へいさん。警察学校では津上と同期生。津上と同じく子供に恵まれない家庭を持つ。昔気質の刑事であり、九条-磯崎-中森-七重といった若手刑事の教育係的存在。銃の腕前は八坂署で右に出る者はなく、犯人射殺命令が発令されたときには狙撃手に指名され、刑事として人を殺すことに心を痛めることもある)当時の紹介記事では警部補。
- 小日向京介:桑名正博 (愛称-こびさん。磯崎刑事殉職の責任を取り依願退職。ジャングル最終回にて降板。元警視庁-捜査四課「通称-マル暴」出身の刑事。小日向の名前を知らないヤクザはモグリといわれるほど、東京のヤクザに最も恐れられている刑事。妻との間に1女がいるが重い心臓病のため入院中。妻とも別居生活を送り、愛娘の莫大な治療費を稼ぐために刑事を続けている。過去に刑事辞職を津上に慰留させられている)当時の紹介記事では警部補。
- 成田浩平巡査:江口洋介 (愛称-こうへい。城南署防犯課の新人だったが八坂署管内で職務中に指導役の先輩を強盗に殺害される事案で八坂署一係の面々と知り合ったのがきっかけで渡米した中森の後任として異動。NEWジャングルのみ)
- 佐久間完治:山谷初男 (愛称-かんさん。若手刑事の監視役でもあり、刑事部屋の主的存在でもある)当時の紹介記事では巡査部長。
- 植松和夫:火野正平 (愛称-かずさん。過去に高校教師をしていた異色の経歴を持つ刑事。自宅には洋酒と金魚鉢しかない謎の多い人物であり「殺されたくないから」という理由から独身である。普段から何を考えているのかわからない不思議な雰囲気を漂わせているが、犯人が女性であるときには、他の刑事達から全幅の信頼を得ている)当時の紹介記事では警部補。
- 明石亀雄(初期プロップでは「亀男」):安原義人 (愛称-かめさん。釣りを趣味とする何事にも慎重でこまめな刑事。官舎で家族と暮らし、小学校高学年でありながら粗暴な行動をとる息子のことに悩んでいる。八坂署捜査一係の刑事では最も平凡で穏やかな人物)当時の紹介記事では警部補。
- 九条有希:西山浩司 (小柄であるが抜群の運動神経を武器とする若手刑事の筆頭。『有希』という名前により、女性に間違えられやすいことが悩みでもある。磯崎、永井と同期)
- 磯崎正一:山口粧太 (ジャングル最終回にて殉職。津上や先輩刑事の声を受け入れようとしない癖があり、拳銃の無断発砲により津上から雷を落とされたこともある。地方公務員である刑事の収入とはかけ離れたブランド思考の持ち主で、普段のスーツなど、おしゃれに関しては金に糸目をつけない。恋人役の高樹沙耶からは「しょうちゃん」と呼ばれ、九条からは「イソ」と呼ばれていた)
- 中森真司:田中実 (ジャングル最終回にて米国へ研修に旅立つ形で降板。NEWジャングル「もう一人いた」にゲスト出演。実直-真面目という言葉が一番に似合う最も若い刑事。しかし、刑事としては優しすぎることや未熟な面があり、性格が裏目に出て磯崎に命を救われたこともある)
- 刑事課長・杉戸警部:江守徹 (すぐに津上を課長室に呼び出し、何事も部下である津上に任せきりの課長。しかし、課長室を一歩出れば手の平を返したように刑事達に対して口やかましい)当時の紹介記事では警視。
- 永井七重:香坂みゆき (愛称-ななえ。神戸の実家にいる母親の看病を理由に依願退職。ジャングル途中にて降板。八坂署捜査一係の刑事としては紅一点。九条や磯崎と仲が良く、後輩である中森の面倒見もいい)
- 水原美加巡査:大沢逸美 (愛称-みか。永井七重の後釜。交通課から刑事に。中森と同期)
- 捜査一課係長・武田祥次警部:竜雷太 (とにかく車の運転が下手である。八坂署の駐車場では何回ぶつけたことやら・・・)
- 津上雅子(邦明の妻):真野響子 (NEWジャングルでは、夫-邦明によって内緒でおとり捜査に利用されたこともある)
[編集] スタッフ
- プロデューサー:岡田晋吉、服部比佐夫、宮崎洋(日本テレビ)、梅浦洋一、山本悦夫(東宝株式会社)
- 脚本:小川英、金子裕、尾西兼一、峯尾基三・他
- 音楽:林哲司
- 監督:長谷部安春、手銭弘喜、木下亮、鈴木一平・他
- 制作:日本テレビ、東宝株式会社
[編集] スポンサー等
- 「ジャングル」提供
三菱電機、資生堂、アシックス、小林製薬、小僧寿しチェーン、株式会社ハヤシ(以上#24~#35)
- 「NEWジャングル」提供
三菱電機、資生堂、INAX、小僧寿しチェーン、小林製薬(以上#1~#12)
三菱電機、資生堂、小僧寿しチェーン、小林製薬(以上#13~#33)
以上は全てオープニング提供クレジット順(エンディング提供クレジット順序は一定せず)
- 捜査車両、白黒パトカーなど車両関係はトヨタ自動車が協力、警察無線機はスポンサーであった三菱電機製品が使用された。署の廊下に三本コーヒーの紙コップ式自動販売機が置かれ、捜査の合間の休憩シーン等で印象的に使われている。
[編集] 主題歌
- ジャッキー・リン&パラビオン『Stranger's Dream』スタート当時のバンド名は「アクエリアス」。
- 「ジャングル」のみのエンディング。オープニングは同曲のインストゥルメンタル「Jungle―Main Theme―」。
- 「NEWジャングル」ではオープニングはジェイク・H・コンセプションの演奏による「Dangerous Night」、エンディングなし。
[編集] 備考
- 放映開始当時の雑誌記事では杉戸は警視、津上は警部、植松・小日向・溝口・明石は警部補、佐久間は巡査部長と紹介されていた。また溝口と津上は同期生で、職務を離れると友人として会話する場面もあった。「太陽にほえろ!」では階級を意識していなかった反省から中堅刑事を警部補と設定したと思われる。因みに竜雷太氏は「東京バイパス指令」では警部補役で、石塚よりも偉かった(?)
- 本番組はアメリカの人気刑事ドラマ「ヒルストリート・ブルース」の形式を模倣して作られた。多人数の刑事、望遠レンズでのロングショット、ミーティング場面、キャラクターイメージなどが似ている。
「ヒルストリートブルース」は「ホミサイド」や「ER」などの集団ドラマのお手本とされている。
- 「NEWジャングル」では「太陽にほえろ!」の名作をリメイクしている。「浩平が泣いた」はジーパン編「どぶねずみ」のリメイクである。しかも準備稿に沿って作られ、小説版「どぶねすみ」に近い設定でロケーションされている。犯人役河合宏(現・高橋和興)は「太陽にほえろ!」の新人刑事候補として「ベイビー・ブルース」にテスト出演していた。系列ドラマ「誇りの報酬」のゲストが東宝の梅浦Pの目に留まり、テスト出演したと後年「ファンロード」誌のインタビューに述べていた。番組が終了しなければDJ刑事の次に登場もありえたらしい。河合氏は「ボギー刑事登場」の犯人役でもある。
- シンコ編「愛が終わった朝」は「婦警の恋」としてリメイクされた。
- 永井役の香坂は出演したコマーシャルが番組スポンサーと競合または裏番組スポンサーであったことから急遽、降板させられたらしい。詳細は調査中。
- 小日向役の桑名は後年ラジオ番組で「ジャングル」の出演はあまり乗り気ではなかったと述べていた。途中から姿を見せなくなり、最終回には出演してケリをつけた。
- 87年2月にとしまえんで番組開始を記念した鹿賀・桑名・香坂・山口・田中によるトークショーが開かれた。桑名の役は離婚した設定だったので「アン・ルイスじゃないですよ」と言って場内を沸かせ、「うちの子供は病気じゃないですからね」と付け加えた。(小日向の子供には持病がある設定だったので)当日は園内で「広域窃盗事件」のロケーションも兼ねていた。会場では車内吊用の番組ポスターと記念イベントパンフが配布された。
- 八坂署のパーマネントセットがあった東宝スタジオ2番ステージには一時、七曲署のセットも組まれていた。後に「刑事貴族」の代官署もここ。
- 助監督の村田忍は後に「七曲署捜査一係」シリーズの監督を務めた。村田監督は「太陽にほえろ!」ではB班スタッフだった。
- 所轄は架空の八坂区なのだが、途中から新宿区となるエピソードもある(NEWジャングル「イヤな予感」等)初期の設定では「七曲署」を舞台に、と発表されたが変更されたようだ。
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