コンデンサ
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コンデンサ (condenser)
- コンデンサは、冷凍機などの熱媒体凝縮用の熱交換器である。英語圏においてcondenserという場合、ほとんどの場合こちらの意味である。日本語では凝縮器という。冷凍機を参照。
- 電気・電子回路における受動素子の一つ。蓄電器。(後述)
コンデンサ(蓄電器)は、静電容量により電荷(電気エネルギー)を蓄えたり、放出したりする受動素子である。英語圏では一般に"capacitor"(キャパシタ)といい(condenserでも通用するが一般的でない)、日本国内でもこの呼び方が普及しつつある。
静電容量の単位はF(ファラド)が使われる。通常使われるコンデンサは数pF~数万μF程度である。
両端の端子に印加できる電圧(耐圧)は、6.3V~10KV程度までさまざまである。
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[編集] 用途
[編集] 電気回路での用途
電気回路では直流の電流を通さないことからフィルタ回路に利用されたり、その他、平滑回路や、バックアップ回路、共振回路などにも利用される。実際の電子回路では、受動素子の一つである抵抗器やコイルとともに用いられることが多く、前者はCR、後者はLCと表現されることが多い。
[編集] 電力系統での用途
電力系統では力率改善のための進みリアクタンスとして使用される。位相を進める働きがあるため、一般に「進相コンデンサ」という。
[編集] 電源としての用途
近年、1F以上の大容量のものが開発され、蓄電装置として利用されることが多くなりつつある。ハイブリッドカーや電気自動車の電源、ノートパソコンの電源としての利用が進みつつある。
[編集] 構造
構造は単純化すると、誘電体(絶縁体)を介した、2枚の電気伝導体平板であり、これに(直流)電圧を加えると、電荷(電気エネルギー)が蓄えられる。
実際の製品では、以下に挙げられるものがある。
- 単板型
- 二枚の平行平板からなるもの。誘電体の種類を選ばないが、面積を大きく取れないため、大型になる。
- 旋回型(巻き型)
- 二枚の電気伝導体箔と誘電体膜を交互に重ねて巻き込んだもの。旋回構造自体がインダクタの形となるため概して高周波特性は良くない。巻き方や線の引き出し方を工夫して無誘導化したものもある。
- 貫通型
- 電気伝導体の軸の周りに誘電体の管を形成し、その外側にさらに電気伝導体の管を形成して同軸構造としたもの。シールドケースからの線の引出しなど高周波回路で利用される。
- 積層型
- 電気伝導体と誘電体とを交互に重ねたもの。
- 電解型
- 電気伝導体の表面に化学的に誘電体層を形成し、電解液に浸したもの。誘電体層が非常に薄く、大容量が得られる。
- 電気二重層型
- 活性炭電極の表面に有機分子を吸着させ、誘電体としたもの。誘電体の厚さを分子長さレベルにまで薄くできるので、極端な大容量が得られる。
[編集] コンデンサの用途による分類
[編集] 高電圧電力回路用
- 紙コンデンサ
- 誘電体として木材パルプを加工したものを使用している。
- オイルコンデンサ
- オイルを含浸した紙を誘電体としたもの。
- 真空コンデンサ
- 内部を真空にしたもの。
- ガス封入コンデンサ
- 内部にSF6(六フッ化硫黄)等を封入したもの。
[編集] 電子回路用
[編集] プラスチックフィルムコンデンサ
アナログ回路用。
- スチロールコンデンサ
- 俗にスチコンと称される。スチロール樹脂はCDケース等にも使用されるポピュラーなプラスチック。
- 成形が容易で安価、諸特性優秀だが、耐熱温度が85℃と熱に弱く機械的にももろい。
- 最近になって樹脂分子の並びを制御して結晶化させて問題点を改善した素材も出ている。
- ポリエステルコンデンサ(マイラコンデンサ)
- マイラと略される。諸特性良好だが、誘電吸収がやや大きい。
- ポリプロピレンコンデンサ
- PPコンと呼ばれる。諸特性優秀で、耐圧も高い。(1000V程度まである)
- テフロンコンデンサ
- 諸特性良好。プラスチックフィルムコンデンサとしては比較高温に耐える。
- ポリフェニレンサルファイドコンデンサ
- PPSコンと呼ばれる。諸特性良好で耐熱性に優れる。
[編集] セラミックコンデンサ
デジタル回路のパスコン(高誘電率系および半導体)、アナログ回路の温度補償用(低誘電率系)。高周波特性はよい。
- また、高耐圧のセラミックコンデンサは医療機器から取り外されたものが、数多く出回っている。
- 低誘電率系セラミックコンデンサ
- 誘電体に酸化チタンやアルミナの磁器を用いたもの。容量温度係数が低く、かつ直線的。微量元素の導入で任意の温度係数に設定することもできる。ただし、容量の誤差が大きい。
- 高誘電率系セラミックコンデンサ
- 誘電体にチタン酸バリウムを用いたもの。無極性・大容量のコンデンサが得られる。ただし、容量温度係数が大きく、かつ、非直線で変化する。さらに、印加電圧による容量の変動がある。
- 半導体セラミックコンデンサ
- チタン酸バリウムに金属化合物を導入して導電性を持たせたものに、化学処理を施して非常に薄い誘電体層を形成し、焼結したものを誘電体としたもの。高誘電率系セラミックコンデンサよりもさらに大きな容量が得られる。その分、容量変動の諸特性はさらに悪化している。
[編集] マイカコンデンサ
高周波回路、高精度・安定性が要求される回路用。
[編集] 電解コンデンサ
電極表面に化学処理により絶縁体あるいは半導体の薄膜を形成し、これを誘電体としたもの。非常に大きな容量(1μF~10万μF)が得られるが、一部を除き極性を持ち、諸特性はかなり悪い。電源系や低周波系に使用される。耐圧や周波数に注意する必要がある。一般に固体電解コンデンサと呼ばれるものは、電荷移動錯体や導電性高分子を用いた電子導電性固体を用いており、従来からある電解液を用いたコンデンサに対して、等価直列抵抗 (ESR) が小さく、周波数特性に優れているが、高価でかつ自己修復性が小さいという問題がある。
リード線方式の場合は、負(マイナス)極の上に黒い線が記載され、一般タイプの新品では負極のリード線が短く切られていることで判別する。画像の上側の黒いものでは、右側のリード線が負極で、下の青いものでは下側のリード線が負極である。
- アルミ電解コンデンサ
- 大容量が得られ、電源回路の平滑用・時定数回路用に使用される。誘電体としては、アルミニウム電極(通常はアルミ箔)表面に形成した酸化被膜を用いる。誘電体層が非常に薄いため、大きな容量を得ることが出来る。通常、酸化被膜を形成する前にエッチング処理を施して表面を荒し、微細な凹凸を作製して表面積を稼いでいる。酸化被膜表面に隙間無く対向する電極を密着させることが困難な為、電解液を含浸した紙を挟み、空隙を埋めている。酸化被膜を形成した側の電極を他方の電極より低い電圧(極性を逆)にすると、電気化学反応により誘電体膜が破壊され使用不能になるとともに、素子が破裂・発煙する場合がある。
- 固体アルミ電解コンデンサ
- 電解液の代わりにTCNQ錯体などの電荷移動錯体、またはポリチオフェンなどの導電性高分子を用いたもの。
- 非固体アルミ電解コンデンサ
- 上述。電解液として、溶媒を水、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、γ-ブチロラクトンあるいはN-メチルホルムアミドなどとし、電解質としてホウ酸、アジピン酸、マレイン酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウムなどにしたものが用いられる。逆極性接続による誘電体膜の破壊に対し自己修復能を持つため、極短時間の逆電圧印加が可能とされるが、この用法は推奨はされない。故障時のモードがオープンである(電極間の抵抗値が高くなる)ことも特長のひとつだが、素子の破裂による二次被害がでることもあるので注意すること。
- 両極性電解コンデンサ(ノンポーラ)
- 酸化被膜の形成を対向する二つの電極双方にほどこしたもの。コンデンサの直列接続となるため、単位体積当りの容量は半減するが、極性がないため扱い易い。ただし、高速に極性が反転する条件(交流回路)での利用は出来ない点には注意すること。
- タンタル電解コンデンサ
- アルミ電解コンデンサより小型で特性がよい。大容量を得る原理はアルミ電解コンデンサに似ている。金属タンタル粉体を焼結してこれを陽極とし、電気化学反応で表面に酸化タンタル薄膜を形成する。逆電圧に弱く、故障モードはショートである点に注意を要する。
- 固体タンタル電解コンデンサ
- 通称「タルコン」。高温条件下で誘電体表面に二酸化マンガンを析出させて空隙をうめ、焼結体表面に黒鉛を吹き付けた後、銀パラジウム等を用いて電極を引き出したもの。
- 湿式タンタル電解コンデンサ
- 金属ケースに電解液を充填し、これを陰極としたもの。ここに陽極となる焼結体を浸漬する。
- ニオブコンデンサ
- 金属ニオブ粉体を焼結してこれを陽極とした固体電解コンデンサ。タンタルに比べ埋蔵量が多く(タンタルの100倍程度と見積もられている)、供給の安定化と低価格化が期待できるとされている。また、タンタルコンデンサより逆耐圧耐性が高く大容量化できる可能性があることから、将来的にはタンタルコンデンサを置き換えることが期待されている。
- 酸化ニオブコンデンサ
- 焼結体として金属ニオブの代わりに酸化ニオブを用いたもの。
[編集] 電気二重層コンデンサ
表面積が極めて広い活性炭を電極として用い、この活性炭表面に特殊な有機分子を吸着させ、これを誘電体として用いる。誘電体層が分子レベルの厚さであり、極めて薄いものとなる。吸着した有機分子は僅かな電位差で容易に破壊されるため、耐圧は数Vと非常に低く、通常複数の素子を直列にして用いる。1F以上と非常に大容量であり、大型のものでは数万Fを超えるものもある。電力の蓄積用に使用され、近年電気自動車などの電源として注目されており、小型化・大容量化の研究開発が進められている。
[編集] バリアブルコンデンサ(可変コンデンサ、バリコン)
回転軸を回すことで静電容量を可変できるコンデンサ。送信機や受信機(ラジオ)などの同調回路などに使われる。ラジオの同調回路(周波数ダイアル)のようにもともと頻繁に回すことを目的に作られているものと、回路の定数の微調整用として、出荷前やメインテナンス等、調整するときしか回さない目的に作れらたもの(トリマーバリコン、半固定可変コンデンサ)とがある。
- エアーバリコン
- 空気を誘電体とする可変コンデンサ。固定した電極と、回転軸に取り付けられた電極とで空気を挟み、静電容量を可変できる。高電圧に耐えられることから、1970年代までの真空管を使ったラジオ受信機やアマチュア無線機などに使われていたが、現在はあまり生産されていない。
- ポリバリコン
- 薄いポリエチレンフィルムを誘電体とする可変コンデンサ。固定した電極と、回転軸に取り付けられた電極とでポリエチレンフィルムを密着して挟み、静電容量を可変できる。主に小型携帯ラジオの周波数ダイヤルに使われている。
[編集] 容量の表示方法
電解コンデンサなどのような大型のものでは、本体に直接容量や耐圧が記載されているが、セラミックやフィルムコンデンサの場合、容量が xxy という形の3桁の数字を使った特有の表記(抵抗器のカラーコードを数字で置き換えた形)で記載されている場合がほとんどである。(抵抗器に形状が似たものでは、カラーコードで表示している場合がある。)
xxyの意味は、xx × 10y pF(ピコファラド)である。
容量の間隔については、抵抗器同様にE系列で、主にE3(10・22・47を基数とする倍数値)、E6(10・15・22・33・47・68を基数とする倍数値)で、まれにE12やE24が使用される。受動素子の標準数値表も参照。ただし1から10pFに限り、1pF間隔となっている。
定格電圧(耐圧)については、電圧を直接表示している場合と、数字とアルファベットを組み合わせた記号で表示している場合がある。記号と電圧の組み合わせは次の通り。
↓数字\英字→ | A | B | C | D | E | F | G | H | J | K |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0 | 1 | 1.25 | 1.6 | 2 | 2.5 | 3.15 | 4 | 5 | 6.3 | 8 |
1 | 10 | 12.5 | 16 | 20 | 25 | 31.5 | 40 | 50 | 63 | 80 |
2 | 100 | 125 | 160 | 200 | 250 | 315 | 400 | 500 | 630 | 800 |
3 | 1000 | 1250 | 1600 | 2000 | 2500 | 3150 | 4000 | 5000 | 6300 | 8000 |
2J103と記載されていれば、
- 耐圧が630V
- 容量が10 × 103 = 10,000pF = 0.01μF
を表している。
2桁以下の場合は記載値がそのままpF単位を表す。
電圧表示のないものは、耐圧50V程度のものが多い。
[編集] コンデンサのように振舞うもの
- プリント基板
- 多層基板において、隣接する層の同じ場所にプリント配線が通るとき、両配線間に比較的大きな安定した容量が形成される。プリント基板設計において、基板の未使用の領域を銅箔で埋めて接地点あるいは電源ラインの配線に用いる(グランドプレーンなど)、電源配線を信号線より広くすると言った処理は習慣的に行なわれている。
- 可変容量ダイオード
- 逆電圧を加えると、その電圧に応じて静電容量が変化するダイオード。
- スタブ
- 高周波回路において、他端の短絡した1/4波長より短い伝送路、あるいは、他端が解放になっている1/4波長より短い伝送路は容量性の負荷にみえる。アンテナの整合を取る場合に用いられることがある。
- 電気的に短いアンテナ
- モノポール、ダイポールその他のタイプのアンテナで、電気的な長さが1/4波長より短いものは、駆動回路(無線機など)から見た場合、容量性の負荷にみえる。整合を取るため小さな容量の可変インダクタが挿入されることがある。
- 人体
- 静電気の研究において、人体は10pFのコンデンサと1MΩの抵抗を並列に接続したものとしてモデル化される。
- コンデンサマイク
- コンデンサの電極のうち一方を振動板(ダイアフラム)としたもの。空気の振動により電極間の間隔が変化するため、電極間に形成される容量も変化し、一定の電荷を蓄積した状態ならば端子間の電圧も変化する。これを電気信号として取りだすことでマイクとして利用する。また、素子に一定の電荷を与えるために電源が必要であるが、テフロンなどの誘電体の高い電界を与える(特に、溶融した誘電体を冷却固化する際)と電荷を半永久的に保持する性質を利用し、電荷を保持した薄膜(エレクトレットと呼ぶ)を電極に張りつけることで素子への給電を不用としたものをエレクトレット・コンデンサマイクと呼ぶ。更にエレクトレットを振動板側に張りつけたフロントエレクトレットあるいは膜エレクトレットと、固定電極側に張りつけたバックエレクトレットに分れる。構造上出力インピーダンスの高い素子となるため、信号線にノイズが混入しやすく、これを防ぐ為、素子直下にFETを用いた増幅回路を組み込んだ素子もよく用いられる。