コルネット
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コルネット は金管楽器の一種である。
角笛もしくはホルンを意味する Corno に縮小語尾の -etto を付加したものが語源。下記のように時代によって別のものを指すが、日本語で区別しづらい場合には前者はイタリア語の原語のまま cornetto、もしくは英語でも cornett と綴り、後者は一般的な英語で cornet と綴ることが多いようである。
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[編集] ルネサンス期のコルネット
原語(イタリア語)のままcornettoと綴ることがおおい。英語でもcornettと綴って近代金管楽器のコルネットと区別する。亜鉛(ドイツ語でZinc)製の楽器が在ったためドイツ語ではツィンクとも呼ばれる。
古代の角笛に起源を持ち、ルネサンス期に愛用された。発音機構上はリップリードを用いる金管楽器ではあるが、自然倍音列以外の音を出すために、バルブ機構やスライド機構の代わりに音孔を持ついわゆる「木管システム」を採るのが特徴である。標準的なものは木製革巻きの8角錐をゆるやかにカーブさせた形状で、左手4孔・右手3孔を持つ。
管長と形状の異なるミュート・コルネット、コルネッティーノ、リザルドンなどの亜種も使用された。ベネツィアではトロンボーンの祖型であるサックバットとのアンサンブルが独自の発展を遂げた。17世紀まではソロ楽器としてもヴァイオリンに並ぶものとして賛美されたが、あまりに演奏が困難であること、音量が貧弱であることから、バロック期の木管楽器の発展にともない、18世紀に入ると急速に廃れてしまった。
同種の低音楽器としてセルパンやオフィクレイド等があり、これらは軍楽隊などで近世まで使用されていたが、バルブ式のチューバが開発されると、これにとってかわられた。
[編集] 近代以降のコルネット
英語でcornetと綴ることが多い。今日では「コルネット」と言うと普通こちらを指す。 トランペットと同様にピストンを有する、というよりは、元々コルネットにあったピストン機構がトランペットに導入されたというべきであろう。形態もトランペットに似ているが、管の形状が円錐管(テーパ)であることが大きく異なる(トランペットは円筒管部分の割合が多く、開口部近くになって急にラッパ状に広がる)。
19世紀に発明された初期の正式な名前は「コルネット・ア・ピストン」であり、その名のとおり2〜3本のペリネ式のピストンバルブを標準装備した短管のラッパであることが大きな特徴であった。コルネットはその軽快な操作性が好まれ、フランス・ロシアなどにおいてはオーケストラでもトランペット(19世紀当時はまだ長管のトランペットが主流であった)と並んでしばしば用いられた。20世紀に入ると長管トランペットが姿を消し、もっぱら短管トランペットが用いられるようになったため、コルネットの存在意義は低下した。
今では主に吹奏楽やブラスバンド(英国式ブラスバンド)、ジャズなどで使われる。主にB♭管とE♭管の2種類があり、B♭管のコルネットの音域はトランペットとおなじである。E♭管は別名ソプラノ・コルネットとも呼ばれ、高音域でのきらびやかな音色を特徴とする。さらに細かく分けると、管とテーパーのデザインによって、ジャズ・吹奏楽で使われるアメリカ式のロング・コルネットと、英国式ブラスバンドで使われるショート・コルネットに分類される。前者はよりトランペットに近く明るい音色で、マウスピースの形状はトランペット用とほとんど同じものを用いる。後者はやわらかくまろやかな音色を特徴とし、マウスピース形状はトランペットに比べてカップがV形状で深さが深く、スロート径の大きいものを用いる。
トランペットの管は1回巻きだがコルネットの管は2回巻きなので、管長は同じでもコルネットの方が楽器が小型で、トランペットよりも体の近くで楽器を構える形となる。このため体の小さい小学生などではトランペットよりもコルネットの方が正しい構えをとりやすく、演奏も容易で、正しい奏法を身に付けやすいと言える。体が小さい小学生が無理にトランペットを構えると楽器を水平近くに保てず過度に下向きになってしまい、アンブシュアをはじめ正しい奏法を身に付ける大きな妨げとなり、中高生になって体が成長してからも一度身に付いた悪い癖が抜けにくく矯正できずに苦労する生徒も多い。
[編集] 著名なコルネット奏者
- ヨハン・バプティスト・ゲオルグ・アーバン
- ハーバート・リンカーン・クラーク
- ハーマン・ベルステッド
- ハリー・モーティマー
- モーリス・マーフィー
- ウィリー・ラング
- ジェームズ・シェパード
- ロジャー・ウェブスター
- フィリップ・マッキャン
- アラン・モリソン
- リチャード・マーシャル
[編集] 著名なソプラノ・コルネット奏者
- ピーター・ロバーツ
- ブライアン・エバンス
- アラン・ウィッチェリー
- ケビン・クロックフォード
- チャーリー・クック