ギャラリー (美術)
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ギャラリー(Gallery, Art gallery)とは、美術作品(絵画に限られない)を展示するスペースのこと。日本では画廊とも称し、美術館に比べてかなり狭いスペースであり、入場料を取らないのが普通である。
大きく分けると、市町村等が運営する公共的なギャラリーと民間の商業的なギャラリーに分けられる。
また、別な観点から、画廊側が選択した作品を展示する「企画画廊」とスペースを一定期間ごとに作家に貸す「貸画廊」に分けられる。なお、1つの画廊が、企画画廊と貸画廊を兼ねる場合(ある時期はスペースを貸しつつ、ある時期は自主企画を行う、というケース)もある。 企画画廊では、展示作品を販売することにより収入を得ているのに対し、 貸画廊は、作家からスペースの賃料と、売り上げに応じて手数料を徴収するシステムが一般的である。 日本の公共的なギャラリーは、ほとんど貸しスペースであるが、展示作品の販売(の仲介)は行わないのが普通である。 海外ではたとえばロンドンの公共ギャラリーである Whitechapel Gallery では展示作品の販売仲介を行っている。
日本では公共の美術館も大きな作家団体や新聞社などの文化事業団体にスペース貸ししていることも多い。これに対してギャラリーは小団体や個人が借りやすい規模および賃料の施設を提供している。1960年代ごろ日本で誕生した貸画廊(後にギャラリー)は、日本独特のシステムであったが、最近ではニューヨークやパリにも日本人作家をターゲットにした貸画廊が存在する。
欧米では貸画廊に代わって、作家個人や団体が運営するギャラリーが数多く存在する。(自主ギャラリー) 寿命の短いものも多いが、公共の資金援助を受けて長期に活動している例もある。 共同アトリエなど制作のスペースを備えているものも多い。 日本でも1980年代ごろから、作家などの自主運営によるスペースが少しずつ産まれてきた。
ギャラリーの語は日本には英語から入った。ガレリアは本来イタリア語で回廊を意味する。フィレンツェでコジモ・ディ・メディチが自らの邸宅の回廊を市民に開放し、その収蔵品を閲覧させたことから、貴族階級が絵画を知人らに見せる目的でもつ部屋を意味するようになり、これらの絵画室が公共化されるにつれ美術館と同義に使われるようになった。イタリアのフィレンツェのガレリア・ディ・ウフィツィ(ウフィツィ美術館)、 イギリスのロンドンのナショナル・ギャラリー、テート・ギャラリー(テート・ブリテン)などがギャラリーの語を用いる著名な美術館である。なお日本ではこの用法はあまり見出されない。数少ない例として「東京ステーションギャラリー」「東京オペラシティアートギャラリー」が挙げられる。
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[編集] 現代美術を取り扱う画廊
一般に、ギャラリーには、それぞれ得意分野があるが、現代美術(一般に、前衛性や不可解性を、その特徴とする)を主として取り扱うギャラリーが存在する。現代美術の作品はほとんどの場合、一般の消費者に対する販売に適さないため、現代美術を取り扱うギャラリーは、貸画廊であることが多い。また、そのようなギャラリーは、現代美術のみを取り扱うギャラリーであることも多い。
[編集] 写真ギャラリー
主に写真を展示するギャラリーも存在する。
カメラやフィルム製造企業が経営しているメーカー系ギャラリーが存在し、写真家に発表の場を提供している。日本では写真家の新人の発表はそのような貸しギャラリーで行われることが多い。大きな写真の賞(木村伊兵衛賞や土門拳賞など)の発表の場として、写真表現の発展に貢献している。
自主ギャラリーではワークショップを行っているところもあり、それぞれのギャラリーの運営者とその利用者のあいだに師弟関係のようなものが生じ、ある種の派閥のようなものが形成されている。ただし、これらのつながりが写真表現の発展に貢献している面もある。
これら以外に、日本では少ないがオリジナルプリントの販売を目的としたギャラリーとしてツァイト・フォト・サロンなどがある。
[編集] 主要な画廊地域
東京の銀座、大阪の西天満などが画廊が集中する地域として知られてきたが、1990年代の日本の経済状況を反映し、主要画廊の廃業や移転が続き、いまはかなり分散している。