キシリトール
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キシリトール (xylitol) は化学式 C5H12O5 で表される、キシロースから合成される糖アルコールの一種。天然の代用甘味料として知られ、最初はカバノキから発見されギリシア語 Ξυλον(Xylon、木)から命名された。恐らくフィンランドで一番普及しており、キャンディーなどの甘味はスクロースを利用したものとキシリトールを利用したものの両方が販売されている。後者は、子供の歯に関心のある両親をターゲットとしている。
スクロースと同程度の甘みを持ち、カロリーが4割低い。分子量は152.15g/molである。
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[編集] 医学適応
- 歯
- キシリトールは口腔内の細菌による酸の産生がほとんどないことから非う蝕性甘味料として知られる。歯の再石灰化を進め、う蝕を防ぐとして、キシリトールが含まれたガムなどが市販されているが、現在の所キシリトールの再石灰化促進作用は証明されておらず、また、疑問視されている。現状では非う蝕性であるが抗う蝕性であるとは言い切れない(ガムをかむことにより通常より多く出る唾液による歯の再石灰化効果については別問題である)。
- 糖尿病
- キシリトールは上記の通り、スクロースに比べカロリーが4割低い。この他、スクロースより吸収速度が遅いため、血糖値の急上昇や、それに対するインシュリンの反応を引き起こさない。
- 骨粗鬆症
- キシリトールはまた、骨粗鬆症の治療に役立つ可能性が指摘されている。フィンランドの研究者グループは、研究のネズミで骨の弱体化が防がれ、骨密度が改善されたことを発見した。[1][2]
- 急性中耳炎
- キシリトールのガムが急性中耳炎を防ぐのに役立つことを示した研究報告もある。[3]
[編集] 健康上の問題
キシリトールは他の糖アルコールの大部分と同様、弱い下剤の働きをする。毒性は知られていない。犬に対してはインシュリン過剰分泌を引き起こし、肝障害や低血糖発作を引き起こすことが知られている[4]。
[編集] 反応
水に溶解する際に吸熱反応を起こし、口の中でひんやりとした感触がすることから、飴・ガムやスナック菓子等に清涼剤として用いられることがある。
しかし(特に高濃度の)キシリトールで、舌や咽喉上で食物の温度に関係なく灼熱感を引き起こす者もいる。
[編集] その他
獣医師による研究では犬が摂取した場合、多量のインシュリンを放出し肝機能に影響がでるなど場合によっては生命に危険が及ぶとの報告もある。[5]
[編集] 参考文献
- ↑ Mattila, P. T.; Svanberg, M. J.; Jamsa, T.; Knuuttila, M. L. (2002). "Improved bone biomechanical properties in xylitol-fed aged rats". Metabolism 51(1): 92–96. オンライン版アブストラクト
- ↑ Mattila, P. T. (1999). "Dietary xylitol in the prevention of experimental osteoporosis: Beneficial effects on bone resorption, structure and biomechanics". Dissertation, Institute of Dentistry, University of Oulu. オンライン版
- ↑ Uhari, M. et al. (1998). "A novel use of xylitol sugar in preventing acute otitis media". Pediatrics 102(4): 879–974.
- ↑ 厚生労働省行政情報 食品衛生調査会関係資料 別添1 キシリトールの指定について
- ↑ 「甘味料キシリトール、犬には危険=米報告」ロイター、2006年9月29日