ガニュメデス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ガニュメデス(ガニュメーデース、Γανυμήδης, Ganymedes, ラテン語化してガニメデ、Ganymedeとも)はギリシア神話の登場人物でトロイアの王子、もっとも美しい少年。オリュンポス十二神に不死の酒ネクタルを給仕するとも、ゼウスの杯を奉げ持つともいわれる。
ホメロスではトロイア初代の王、トロスとカリロエの子、イロスとアッサラコスの兄弟とされる。後代の伝承では、父はラオメドン、またはイロス、またはアッサラコス、またはエリクトニオスとするものもある。
一般には、ガニュメデスが神々の給仕となったのは以下の事情によるとされる。オリュンポスの神々に給仕するのは、もとは大神ゼウスとその正妻ヘラの娘、青春の女神であるへべの役割であった。ゼウスの子、英雄ヘラクレスが死後、神の列に加えられたとき、ヘラクレスを憎んだヘラはようやくヘラクレスと和解し、その娘へべが妻としてヘラクレスに与えられた。このため神々の宴席に給仕するものがなくなった。ゼウスはガニュメデスの美しさを愛し、ガニュメデスをさらい、オリュンポスの給仕とした。この仕事のためにガニュメデスには永遠の若さと不死が与えられた。また代償としてその父に速い神馬(別伝ではヘパイストスの作った黄金のブドウの木)が与えられた。
ガニュメデスのさらわれた事情には諸説がある。まずガニュメデスをさらったのは誰かについて異伝があり、神々たち、ゼウス自身、ゼウスの使いの鷲、ゼウスが鷲の姿に変じてさらったなどの説がある。一方で、タンタロス、またはミノス、エオスがさらったという伝承もある。 またガニュメデスがさらわれた場所は、一般にトロアスのイデ山(ラテン語名イダ山)であるとホメロス他ではいわれる。他方で、同名のクレタ島の山、またはエウボイアの山、ミュシアのハルパゲ(誘拐の意)という場所であるとの説もある。
わし座はこのときのゼウスの姿、みずがめ座(宝瓶宮)はネクタルを給仕するガニュメデスと酒壷にそれぞれ見立てられたものである。
なお木星の衛星、ガニメデの名はガニュメデスから取られている。