エレクトリックピアノ
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エレクトリックピアノ(電気ピアノ)とは、通常のピアノと同様に鍵盤と機械的な打弦メカニズムを持ち、それによって叩いた発音体の振動を電気的に検出増幅して、その出力音声信号をアンプスピーカーを通して再生する鍵盤楽器である。
第二次世界大戦後に、アメリカのハロルド・ローズが戦傷軍人が音楽演奏で暮らす事ができるように、廃棄された軍装品を利用して、製作したのを始めとする。これが「ローズ・ピアノ(Rhodes Piano)」の原型となった。その後、エレクトリックギターのメーカー、フェンダーにブランドが移り、1960年代後半以降エレクトリックジャズの隆盛とともに、盛んに用いられるようになり「フェンダーローズ・ピアノ」として知られるようになった。フタをするとトランク状にまとまり、弦構造も持たないため音程の狂いも少ない点が、バンド演奏で移動するのに非常に適していた。発音機構部分だけの「ステージピアノ」と、トレモロ回路内蔵のステレオPAアンプ・スピーカーユニットとペアの「スーツケースピアノ」のラインアップがあった。
1970年代には、アメリカのポップス(特にカーペンターズなどA&M系)のアーティストらは、小型軽量で軽快な音色の「ウーリッツァー・ピアノ」を使用している例が多かった。
日本では、家屋が狭い、床構造の強度が足りない、団地住まいで階段を運び上げられないなど、庶民の家庭では子女の教育にピアノを購入しようと思っても、住宅環境の制約から不可能な為に、オルガンで代用されたりしたが、打鍵の感覚などがピアノとは全く異なる。 家庭用の軽量な構造を持ったピアノということで、日本コロムビアは商標「エレピアン」を開発した。
日本のヤマハは、グランドピアノと同等の張弦構造を持つ、通称エレクトリック・グランドピアノ、CP-70、CP-80を開発した。既にソウル・ファンクミュージックなどで使用されていた、クラビネットにも似たアタックの独特の歪みが特徴で、アコースティック・グランドピアノよりも輝きのある音で、フュージョンやポピュラー全般に使用された。
それらと並行して、ポリフォニックシンセサイザーの技術を応用して、電子発振やデジタルサンプリング音源を取り入れた電子ピアノ(いわゆるデジタルピアノ)も開発され家庭向けなどに広く普及した。ヤマハが開発したFM音源方式シンセサイザーDX7に内蔵されたエレクトリックピアノ音色は、バラードなどによく使用され、独特のクリアな音色が重宝されている。
普通のピアノと違って、使用する際は、コンセントを接続しないと使えない。
オンド・マルトノの開発者モーリス・マルトノが1931年に来日した際、新聞に「電波ピヤノ」という紹介記事が書かれたが、これはオンド・マルトノのことであり、本稿に書かれているいずれの機構のエレクトリック・ピアノとも異なる。
[編集] 機構解説
- フェンダーローズ・ピアノ(ローズ・ピアノ)
- ウーリッツァーピアノ
- リード(振動板)を叩く構造だが、ハンマーに特徴がある(らしい)ため、音色に特徴がある。
- エレピアン
- リード(振動板)を、通常のフェルトハンマーで叩く構造。元祖フェンダーローズにも似た音色を発する。後には「電子ピアノ」に移行した。
- ヤマハCP-70、CP-80
- 実際に張弦構造を持ち、ハンマーで打弦した振動をエレクトリックギターと同様にマグネチックピックアップで検出する。
シンセサイザーの有名なピアノ音色
- ローランド JD-800
[編集] デジタルピアノ
デジタルピアノは、前述の通りデジタルサンプリング音源(サンプラー)により、通常のピアノ(多くの場合、グランド・ピアノ)の音源をサンプリングし、同様の音響をデジタル技術によりシミュレートして再生する。
電子ピアノの一種であるが、古典的な「電子ピアノ」およびその音色と区別してデジタルピアノと言うことも多い。
現在は情報技術の発達により、家庭向け機種でも素人的には通常のピアノと区別が付かないような音響を出せるものも多い。また、鍵盤の機構も機種のグレードにもよるが、通常のピアノ鍵盤の指触りに似せたものもある。
もっともサンプラーの域を出ることはないため、音響特性は通常のピアノとは異なり(多くの場合、欠けている部分がある)、それはグランド・ピアノを良く弾いたことのある者ならばすぐに分かる。特に高音域での再現が難しいと考えられている。但しヴァイオリンなどの擦弦楽器に比べ音響特性の違いは小さいと考えられている。
デジタルピアノと比較して通常の機構によるピアノを「アコースティック・ピアノ」と言う事がある。
[編集] ブーニンと日本における電子ピアノの普及
スタニスラフ・ブーニンの功績として、電子ピアノの日本における普及を推進した事実が上げられる。彼が日本に紹介されたころ日本で電子ピアノが普及し始めた。これに対しピアノ産業は電子ピアノでは絶対音感を養うことは出来ないとのキャンペーンを張ろうとしたが、当時日本で絶大な人気を誇ったブーニンが電子ピアノで練習していることが報道され、これによってそれらのキャンペーンの信頼性と妥当性が失われ、一挙に電子ピアノの普及が進んだ。
これによって結果的にピアノ産業の衰退を招くことになった。
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