ウラシマ効果
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ウラシマ効果(ウラシマこうか)、またはリップ・ヴァン・ウィンクル効果(リップ・ヴァン・ウィンクルこうか)とは、移動する物体同士の異なる時間の流れの差分を表す。ウラシマ効果は、物体同士の相対速度が光速に近い場合に特に顕著にあらわれる。
相対性理論では、高速で移動する物体は、その系における時間の流れが遅くなるとされている。例えば、有る地点から1光年先のある地点まで、宇宙船が光速で航行したとすると、外の世界では宇宙船が到達するまでに1年を要するが、宇宙船の中では殆ど時間経過は起こっていないという事が生じる。つまり、宇宙船の外と内では異なる速度 (?) で時間が流れていることになる。
つまり、亜光速で宇宙を駆けめぐり、何年か後、出発地点に戻ってきたような場合、出発地点にいた人は年を取り、宇宙船にいた人は年を取らないという現象が生じる(厳密には双子のパラドックスの項を参照のこと)。
この状態が、日本のお伽噺である『浦島太郎』において、主人公の浦島太郎が竜宮城に行って過ごした数日間に、地上では何百年という時間が過ぎていたという話にそっくりであるため、ウラシマ効果と呼ばれている(SF同人誌「宇宙塵」主宰者の柴野拓美が命名者と言われる)。また欧米ではこの浦島太郎と似た描写のある「リップ・ヴァン・ウィンクル」の伝説から、リップ・ヴァン・ウィンクル効果と呼ばれることもある。
[編集] SF作品におけるウラシマ効果
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
SFでは、ポピュラーな素材である。 ジョー・ホールドマン「終わりなき戦い」では、ある一兵卒が1000年以上続いた星間戦争の開戦から終戦までを経験し、ポール・アンダーソン「タウ・ゼロ」では、エンジン制御に支障をきたし無限に加速する宇宙船でこの宇宙の終焉を目にする、といったように、多くの作品のテーマにかかわるガジェットとなっている。
「ドラえもん」では、浦島太郎自身が実は海でなく宇宙に連れて行かれてウラシマ効果を体験したのではないかと考えたのび太達が、タイムマシンで確かめに行くエピソードが登場する。
「新世紀エヴァンゲリオン」で一世を風靡した庵野秀明の監督デビュー作「トップをねらえ!」でも巧みにストーリーに取り入れられて、周囲の人々の成長から取り残されてしまう主人公の悲哀が感動を呼ぶ。
科学的に立証された物理現象であるが、現状では人間の生活に影響が出るほどの高速は出しえない。このギャップがこのガジェットの魅力であろう。