双子のパラドックス
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双子のパラドックス(ふたごのパラドックス)とは、特殊相対性理論 (1905年)での高速で移動する際に発生する時間の遅れに関して提案されたパラドックス。1911年にアルベルト・アインシュタイン本人が提案した、とも、同年ポール・ランジュバンが提案したとも言われている。
双子がいるとして、そのうち一人(普通は兄)がロケットに乗って地球から離れて旅をするとき、ロケットに乗った方は高速で移動するので相対性理論が示すように時間が遅れる。よって、地球に帰ってきたとき、弟は兄より年をとっているはずである。
しかし地球に残った弟にとっては、運動が相対的であると考えると、地球がロケットから遠ざかるように移動しているとも捉えることができるので、地球に残った弟のほうが時間が遅れると考えられて矛盾する。
このパラドックスは、兄弟の運動が実は対称ではないことから解決される。ロケットに乗った兄は、地球から飛び立つときやUターンして戻ってくるとき、地球に着陸するときに加速・減速を行うため、弟とは運動状態が異なっている。特殊相対性理論が述べるのは、慣性系間に生じる時間のずれであり、加速度運動している観測者には適用できない。したがって、このパラドックスの問いかけは、一般相対性理論で扱うべき事象を特殊相対性理論で考えようとしたところに問題があった、とも言うことができる。
結果的には、兄の時間の進み方が遅れることになり、地球に兄が帰還したとき、兄の方が若い。 何年遅れることになったかは、特殊相対性理論の範囲で計算することができる。慣性系にいる弟の立場で、ロケットの加速度運動している状態を細かく等速運動している状態に分割して積分することで、時間の遅れが計算できる。等速運動から加速度運動へ変化する時間は瞬間であると考えれば、経過時間は積分に寄与しないからである。(同じ計算を兄の立場で行うことはできない。)
[編集] 誤解
まれに、ロケットで移動した兄の年齢が地球に残った弟の年齢より若くなる(双子の年齢が食い違う)結果そのものがパラドックス(または矛盾)であるという誤解が見られる。これは相対論の立場からはなんら矛盾ではないし、人工衛星においてはすでに観測的事実である。 また、相対論では、「地球上の弟から見た宇宙船の時間の進み方は遅れ、宇宙船の兄から見た地球上の時間の進み方も遅れる。」と考えるため、非常に誤解を招きやすい。
[編集] 関連項目
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