とんがり帽子のメモル
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とんがり帽子のメモル(とんがりぼうしのめもる)は、東映動画(現・東映アニメーション)製作のテレビアニメ。1984年3月3日から1985年3月3日までテレビ朝日系にて放送された。全50話。もともとは土曜19:00〜だったが、途中から日曜8:30〜に変更となった。以後、日曜8:30〜の、題名のない音楽会前座枠ともいえるこの時間帯は、朝日放送の制作による東映アニメーション枠として、現在まで定着している。 1985年には東映まんがまつりの一作として劇場映画になり(同時上映はキン肉マン、GU-GUガンモ、電撃戦隊チェンジマン)メモルとマリエルの再会を描いたエピソード「二人を結ぶ風の手紙」を再編集したものが上映された。
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[編集] 作品解説
前述の通り、2006年現在も続く朝日放送の8:30枠女児向けアニメーションの第一作となった作品(オリジナル)で土田勇、名倉靖博らがまるで絵本の中から飛び出したような舞台・キャラクターを産み出した。また作画監督には姫野美智や只野和子が名を連ね、各話ごとに違う味わいの絵を楽しむことができる。
ストーリー自体もフランスとスイスの国境近い場所に不時着したリルル星人(姿形は10センチ前後の小人)と人間の触れ合いを描いたオーソドックスでハートウォーミングなものになっており、大人へも郷愁を煽るものとなっている。また基本的に、根っからの悪人は出てこない。シリーズ構成は雪室俊一、演出は主に佐藤順一が手がけた。
サウンド面でも特筆すべき事項は多い。オープニング曲の作詞はTARAKO、エンディング曲「優しい友達」の作曲は小林亜星、ともに歌うのは山野さと子。山野はこれ以外にもたびたび劇中で披露される「しあわせいくつ」や一話のエピソードのためだけに作られた「金の星ふります」など多くの曲を歌うが、この二曲はアニメソングとしては珍しい三拍子である。
主演の渡辺菜生子は魅力あるメモルを演じた本作でブレイクする。
終了20周年を迎えた2005年からレコードの再販、原画集などが相次いでリリースされ、11月にはついにDVDBOXが発売された。この中には渡辺が20年ぶりに吹きこんだメモルのコーションメッセージが収録され、どんな特典よりもマニアの心をくすぐった。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] ストーリー
中部ヨーロッパの山中に世界一小さな村、リルル村はある。宇宙船の事故で地球に不時着したリルル星人の住むところだ。リルル星人たちは身長10センチ前後で、皆がとんがり帽子をかぶっている。
長老の孫娘・メモルはとっても元気でおしゃまな女の子。両親のいるリルル星に帰る日を夢見ながら、毎日友達のポピット、ルパング、ピーとともに元気に遊びまわる。ある日鷲に襲われた小鳥を助けようとして森に迷い込んだメモルが見たのは自分たちと同じ姿形、でも何十倍も大きい地球人がピアノを弾く姿だった。
メモルたちがはじめて見た人間、マリエルは病弱で孤独な女の子。病気療養のためにこの山村を訪れていたのだった。メモルはこのマリエルと友達になり、その中でとても大切なことをマリエルに伝えてゆく。
[編集] メモルとマリエル
本作のメインテーマはメモルとマリエルの友情である。後半には恋愛の要素も含まれるが、結局それらはデコレーションに過ぎない。
この時間帯ではしばしダブルヒロインの作品が製作されるが(例・ふたりはプリキュアシリーズ)、二人の少女は両極端に描かれることが多く、本作も例外ではない。小さな体にはちきれんばかりのエネルギーをみなぎらせて男の子たちと遊ぶメモルと、メモルの涙で死の淵から生還したというのに「別に助からなくてもよかったのに」とつぶやくマリエル。大きな闇(病み)を抱えたマリエルは、メモルという小さくて大きな光に触れるうちに生きる希望を取り戻してゆく。
健康を取り戻したマリエルはサナトリウムを去り、メモルとも別れる。しかしメモルは一人マリエルを追った。マリエルに会いたい、その一心で。マリエルも学校を退学になりながら(結局は取り消される)メモルに届くようにと懸命にピアノを弾く。メモルはその音を頼りにマリエルの元にたどりつく。このエピソードが、マリエルだけがメモルを求めているのではないことを明確に打ち出している。
また二人が疎遠になるような存在がいなかったことも事実である。メモルの友達のリルル星人は皆男の子だし、マリエルのボーイフレンド・オスカーは結局グレイスを選んでマリエルの元から去ってしまう。物語後半に登場するシンシア(声・三浦雅子)はマリエルの数少ない味方になるが、マリエルは彼女には最後までメモルの正体を教えなかった。
互いが求め合ってこその友情。本作品の最終回は予定調和が過ぎるとファンから矢面に立たされることも多いが、このテーマに沿って、最後まで揺るがなかった大団円である。
蛇足だが二人を演じた渡辺菜生子と安田あきえも明暗が分かれた。ほぼ同年代(渡辺が二歳年下)で、ともに高い評価を得たものの、今や屈指の少女役声優になった渡辺に対し、安田はこれ以降目立った活躍をしていない。まるで、メモルとマリエルの持った光と闇が、そのまま二人に反映されてしまったかのようである。
[編集] キャラクター
メモル
リルル星人の女の子。おしゃまでおてんば。幼児の姿だが実年齢は24歳(リルル星人の平均寿命は400歳で、天敵のゴロニャンに食べられなければもっと長生きする)。長老の孫娘。
マリエル・ルグラン
リルル星人の存在を最初に知った地球人。14歳。ピアノが得意で、サンロワーヌ芸術学院を療養のため休学中。家族愛に恵まれず、孤独な魂を抱える。
リルル リルル村の長老。齢400を越える。孫のメモルを暖かく見守る。
ポピット リルル村の男の子。音楽家フォルテンの息子。男気にあふれる性格であり、いくどかメモルを身を呈して守っている。
ルパング リルル村の男の子。盗賊トリローネの息子。お調子者。マリエルに好意を寄せている節がある。
ピー リルル村の男の子。ルパングの弟。時々スルドイ一言を放つ。
リュックマン リルル村の旅人。子供たちに慕われている。
バーバラ リルル星人。メモルをお嬢様と呼び、時に厳しくしつける。
グレイス サンロワーヌ芸術学院ピアノ科の生徒。何かとマリエルにきつく接する。
オスカー リルル星人の存在を二番目に知った地球人の少年。グレイスの幼なじみ。
[編集] キャスト
- メモル:渡辺菜生子
- マリエル:安田あきえ
- リルル:宮内幸平
- ポピット:川島千代子
- ルパング:沢田和猫
- ピー:西原久美子
- リュックマン:古川登志夫
- バーバラ:桂玲子
- グレイス:白石冬美
- オスカー:永久勲雄
[編集] スタッフ
- シリーズ構成:雪室俊一
- キャラクター原案:名倉靖博
- キャラクターデザイン:鈴木欽一郎
- 音楽:青木望
- 制作:朝日放送、旭通信社、東映(東映動画)
[編集] 余談
- 手塚治虫のふしぎなメルモと混同されることが多いが、両方に出演してる声優がいる(沢田和猫)。
- 番組の第一回と最終回がともに三月三日である(放送日が土曜から日曜に移ったため)。またメモルが初めてマリエルを見た時マリエルがピアノで弾いていたカール・マリア・フォン・ウェーバーの「舞踏への勧誘」はエンディングでも用いられている。
- メモルの友人ルパングは最初の数回、メモルにルバングと呼ばれている。ちなみに当時の裏番組はルパン三世で、ルパングは怪盗トリローネ(声・屋良有作)の長男。
- マリエルの母親は故人だが、父親は(娘が何度も死にかけているのにもかかわらず)作中に一度も登場しない。これは実は父親も亡くなっているがマリエルには知らせていない設定であったためで、それではあまりにマリエルが可哀想だという理由から最後まで語られることはなかった。
- メモル役の渡辺は本作がデビュー作といわれることが多いが、インタビューで「メモルは二度目の主演」と発言している。なおオープニング曲を作詞したTARAKOとは後にちびまる子ちゃんで十年以上共演し、揃って舞台に出るなどパートナー関係を築くことに。
- マリエル役の安田は当時役への葛藤を抱えていたらしく「古風過ぎてやりにくい」「演じながら自分も暗くなってしまう」等発言している。しかし彼女が放映終了から二十年が過ぎてもマリエル以上の役に巡り合えていないのも事実である。
- リルル星人の旅好きの青年・リュックマンは明らかにムーミンシリーズのスナフキンがモデルとなっているが、キャラクター原案の名倉靖博は後年楽しいムーミン一家のキャラクターを手がけ、無論スナフキンも描いている。
- よく萩岩睦美の「銀曜日のおとぎばなし」との類似性が話題になる。銀曜日~をアニメ化しようとして原作者に断られ、オリジナルのメモルが誕生したとする説もあるが真相ははっきりしない。
- 反対にちっちゃな雪使いシュガー(主人公が妖精、一緒に住む女の子はピアノが得意)や花右京メイド隊(マリエルやグレース、シンシアといった名前のキャラクターが登場する)など、後世の作品に与えた影響が非常に大きいアニメでもある。
[編集] 外部リンク
朝日放送 土曜19:00枠(1984年3月-1984年9月) | ||
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レディジョージィ | GALACTIC PATROL レンズマン |
朝日放送 日曜朝8:30枠(1984年10月-1985年3月、本作よりアニメ枠) | ||
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志ん朝のチャレンジQ(再放送) | はーいステップジュン |
BS2衛星アニメ劇場 月曜18時30分枠 | ||
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