血液循環説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
血液循環説(けつえきじゅんかんせつ theory of the circulation of the blood) は血液は心臓から出て動脈経由で身体各部を経て静脈経由で再び心臓へ戻る、という説。
当説は2006年現在循環器学的な事実と考えられているが、現代の人間にとって当たり前とも思える血液循環の仕組みは、実は長きにわたって人類に知られていなかった。
かつて古代ギリシャのガレノスによって現在とは異なる内容の生理学理論が集大成されていた。それにより1600年代初頭の段階でも、通気系なるものが、空気由来の動脈血を全身に運んでおり、栄養配分系なるものが栄養を運んでいる、と2系統に分けて考えられていた。肝臓で発生した血液は人体各部まで移動し、そこで消費されるとされ、循環は想定されていなかった。
ウィリアム・ハーヴィー(William Harvey1578年-1657年)は、血管を流れる大量の血液が肝臓で作られてはいないだろうと睨み、血液の系統はひとつで血液は循環しているとの仮説を立てた。その仮説が正しければ、血管のある部分では血液は専ら一方向に流れているはずだった。ハーヴィーはそれを腕を固く縛る実験で確認した。
1628年、ハーヴィーは『動物における血液と心臓の運動についてExercitatio anatomica de motu cordis et sanguinis in animalibus』において血液循環説を発表した。
発表当時、この血液循環説は激しい論争の的となった。同説発表の21年後の1649年に、反論に対する再反論の冊子をハーヴィーが発行したほどである。 その後血液循環説は多くの人々によって様々に実験・検証され、その正しさは証明された。