無権代理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
無権代理(むけんだいり)とは、本人を代理する権限がないにもかかわらず、勝手に代理人として振る舞うことをいう。日本では民法113条において規定されている。
目次 |
[編集] 条文
- 第113条(無権代理)
- 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
- 追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない
[編集] 制度概要
本人から代理権を与えられていない者が代理人として振る舞う形態がその典型例であるが、代理人と称する者が自己の代理権を証明できなかった場合も同様に扱われる。
代理権がない以上、法律効果は本人には帰属しない(これは無効と表現されることもあるが効果不帰属と説明したほうが正確である)。例えば、代理権のない者が勝手に契約を結んできたからといって、本人はその契約内容に従った債権や債務を得ることはない。これによって本人の権利や財産があずかり知らぬ所で害されることを防ぐことができる。
しかし、本人が無権代理行為を追認すれば、一転して有効な代理行為となり効果が本人に帰属する(第116条)。たとえ代理権がない者による代理行為であっても本人がそれを拒まないのであれば効果を否定する理由はないからである。
このようにして本人の利益が守られる一方、無権代理行為の相手方は、本人からの追認が得られなければ無権代理人に対して無権代理人としての責任(後述)を追及することになる。このとき無権代理行為の相手方は、無権代理行為を追認するのかしないのか本人に返答を求める催告権をもつ(民法114条)。もしも本人が催告に応じない場合、追認拒絶とみなされる。また、本人が追認をしない間は取消権(民法115条)を有しており、無権代理行為による契約関係等を解消することができる。この他に、表見代理による救済を求める途もある。
[編集] 無権代理人の責任
無権代理人は以下のような責任を負う。しかし無権代理人が無資力(損害賠償などの引き当てになるような見るべき財産がない状態)である場合、相手方は十分な救済を得ることはできない。
- 無権代理人は、相手方の選択に従い、損害賠償又は履行をなす責任を負う(民法117条1項)。しかし無権代理人は得てして資力がないため実効性は低い。
- ただし、相手方は代理権がないことについて善意・無過失でなければならない。通説や判決例の立場によると、この要件を欠けば表見代理の主張も封じられることになる。
[編集] 無権代理人と本人の相続
- 無権代理人が本人を相続
- 単独相続 有効となる
- 共同相続 当然には、有効とならない。
- 本人が無権代理人を相続
- 当然には、有効とならない。