星をみるひと
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星をみるひと | |
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ジャンル | ロールプレイングゲーム |
対応機種 | ファミリーコンピュータ |
発売元 | ホット・ビィ |
人数 | 1人 |
メディア | 1Mbitロムカセット |
発売日 | 1987年10月27日 |
価格 | 5,300円 |
『星をみるひと』(ほしをみるひと)は、1987年10月27日にホット・ビィから発売されたファミリーコンピュータ用ゲームである。
目次 |
[編集] 概要
未来的でどこか退廃的なサイバーパンク的世界で、超能力を持つ主人公みなみ が、襲い来る「サイキック狩り」と戦いながら仲間を増やして進んでゆくSFロールプレイングゲーム。シナリオは鴻上尚史が担当した、という説がある。
システム面の悪さから伝説のクソゲー とすら呼ばれているが、反面シナリオ、サウンドは良く、一部にはコアなファンがいる。そのシナリオは、舞台を未来に設定していることから(当時のRPGは、舞台が中世や古代のみであった)、『メタルマックス』シリーズや『ラグランジュポイント』といった、未来を舞台にしたRPGを生み出す土壌を作り上げたことは評価に値するともいえる。
[編集] ストーリー
未来。“クルーIII”と呼ばれるコンピュータに管理された巨大都市“アークCITY”から、老人に連れ出されて逃げ出してきた記憶喪失のサイキック「みなみ」が、旅の途中で出会った仲間と共に、この世界の謎を解いていき、最終的には人類が進むべき道を選択する事になる。
[編集] クソゲーと呼ばれるに至った経緯
内容的には同社が1984年にPC-8801及びFM-7で発売したゲームサイキックシティー の続編的な位置づけとなっていて、超能力者などの設定やバックグラウンドを引き継いでいる他、全体的にヒントの少ない謎解き、単純な勧善懲悪ではないSF的ストーリー、序盤から高めの戦闘バランス、プレイヤーの選択によって変わるエンディングなど、かなりパソコンゲーム寄りな作りであった。
こうした、子供ユーザーの多かった家庭機用としてはそもそも敷居が高かったゲーム内容に加え、
- 画面のスクロール処理が非効率的で、キャラクターの移動速度が極めて遅い(一マス移動するのに0.5秒かかる)。
- 戦闘中にコマンドのキャンセルバックができないため、操作ミスが致命的な結果を生む。
- (特に序盤の)ゲームバランスが悪く、具体的には最初のうちは一回勝利するたびにパスワードを取らないと先に進めない程の極悪なつくりであった上に、逃走コマンド自体が存在しなかった。スタート直後でも「さらまんど」「ふっかつしゃ」といった敵キャラが襲ってくる。
- 「さらまんど」などの敵が投げる「かりう」を喰らうと100%の可能性で「病気」になる。「病気」になると動けなくなるが、戦闘中に治癒する事が無く、パーティ全員が「病気」になると死ぬまで攻撃される事になる。またこのゲームではHPにあたるひっと力が、異常なまでに多くなる(最終的に約28000~29000程度まで上昇する)事もあって、喰らったらリセットした方が良いケースも多々ある。
- 最初の街が見えない(何の前振りも無く超能力で隠れているという設定)で、何をしていいのかもわからず前述のゲームバランスの悪さもあり即全滅という場合も少なくなかった。
- 「てれぽーと」というESPを使う事で敵から逃げられるが、みなみのレベルが6にならないと覚えない。そのため序盤は逃走する事が不可能である。
- パスワードが情報を完全には保持しないため、コンティニューするときに前回のプレイが不完全にしか受け継がれない。
- パスワードの文字数や文字種類が多い(ゲーム内では大半が平仮名なのに、パスワードのみカタカナや特殊記号あり)。また、区別しづらいフォントもあり、メモした通りに入力したつもりでも続行できない事が多々あった。
- 武器を装備していない素手の状態でのダメージは最低レベルでも最高レベルでも同様に「0~3」。また、最高レベルで武器を装備していても最高で「15」程度しか与えられない。
- 武器を装備させても、熟練度(他のRPGで言う所の「力」の役割)と武器の威力が低いとダメージを与えられない事がある。更にダメージを与えられない状況では、いくら攻撃しても絶対にダメージを与えられない(素手では「0~3」のダメージで固定)。
- 武器や防具は次に装備を買うまで外せない。新たに装備を買うと、前に装備していた物は破棄される。売却という概念は存在しない。
- 最初の村で買える最も安い武器「れいがん」を装備させてしまうと、一部の最弱クラスの敵を除いた殆どの敵にダメージを与える事が出来なくなり、クリアが非常に困難となる。
- 最強の武器は500ゴールドで買える「ぷらずまほう」ではなく、420ゴールドで買える「じゃいろSP」である(ちなみに防具の方は高いほど高性能になっている)。
- 街などの子マップからフィールド上に戻ったり、「てれぽーと」で逃げる事に失敗すると、元の場所ではなく、フィールドごとに決まったポイントにしか出られない。例えば2つめの街に入り、その街から出るとその街がある場所ではなく、1つめの街があった場所になぜか戻される。
- 中盤以降、ドアを開けるために必要となる「IDカード」は一回しか使えず、ドアを往復する場合は2つ必要となる。下手にドアを開けると閉じ込められる可能性もある。しかも「IDカード」を店で買うと、最強クラスの装備品並、あるいはそれの数倍もの値段となる。
- 普通にプレイしていると一番最後に加入するキャラを仲間にするために「シルバーIDカード」が4つ必要になるが、上記の理由で入手が難しい。また、街から出ると遠くの場所まで飛んでしまう為、フラグを立てるために街を往復するというRPGでは基本となるはずの作業ですら困難となり、仲間にするのに手間がかかる。
- クリアに不可欠な特定アイテムの入手方法が「マップ上の特定地点を通過すると入手できる」というもので、しかも画面には全く表示されない(わずかな効果音がするのみ)。
- ある場所の床はダメージゾーンになっていて、一歩ごとにHPが20減るのだが、ダメージを受けている様子が一切無いため、気が付いたらいつの間にか死んでいる(一応死んだ時はコマンドが表示される)という事態が発生する。
- RPGでは恒例の、ラスボスとの戦闘が存在しない。最後の選択肢で「戦う」事を選んだ場合、戦闘シーンに入る事もなく、エンディングへ入り、その文中で主人公達が敗北した事となる。
などといったシステム的な不備をいくつか抱え、まともに遊ぶことができずプレイを放棄するユーザーが大半を占め、クソゲーの烙印を押される結果となった。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] ゲーム解説
[編集] 基本用語
- アークCITY
- 巨大都市。周囲の海が汚染されている。サイキックが捕らえられている。サイキック探知機を持った警備員が巡回している。居住区の住民の話より、彼らの世界は、巨大な宇宙船である事が判明する。
- クルーIII
- アークCITYの住民をマインドコントロールによって支配・管理しているスーパーコンピュータ。マインドコントロールによって、人々からその存在の記憶は消されている。本来は住民の「悪意」を取り除き治安を維持するのが目的であったが、600年という長い年月を経て、現在は人間でない別の生物(イルカ族・シャチ族)を主とした為、「人間(サイキック)」の運命は大きく変わる。現在のクルーIIIの主目的は、「主」を新しい「地球」へと導く事である。なお、マインドコントロールは完全でなくなっているようだ。
- サイキック
- クルーIIIによるマインドコントロールの影響を受け付けない新たな人間。皮肉なことに、彼らは、クルーIIIによって作られたミュータントである事が物語後半判明する(まじめに情報収集をすればの話だが・・・)。また、普通の人間では生存できない環境でも対応できる能力を持っていると思われる。(酸素パイプのみで宇宙空間に出られる、移住前に改造が必要な惑星に行ける、など)
- サイキック狩り
- サイキックを捕らえるために、クルーⅢに支配された生物兵器やロボット達は、サイキックを見つけると突然襲ってくる。クルーⅢがサイキック狩りを行う目的は、「新しい主」が彼らと対等に話が出来るサイキックをアシスタントとして欲した事に始まる。クルーIIIに洗脳されている人々は、サイキックが「人類の敵」であるためサイキック狩りが行われていると理解している。
[編集] 登場人物
- みなみ
- 主人公。サイキッカーの少年。記憶を失っている。特定のブロックを壊す「ぶれいく」が得意。
- しば
- サイキッカーの少年。瞬間移動「じゃんぷ」が得意。発電所に捕らえられている。
- みさ
- サイキッカーの少女。ダメージ床を無傷で歩く「しーるど」が得意。序盤で存在がほのめかされるので重要キャラのようであるが、実は彼女を仲間にしないままエンディングに到達する事も可能。仲間にする手順が大変面倒かつ難解な為、殆どのプレイヤーがみさを仲間にする事が出来ず、みさ抜きでエンディングを迎えた。
- あいね
- サイキッカーの少女。心の声を聞く「てれぱし」が得意。ゲームの流れからは、しばの次に仲間になる「3人目」キャラなのだが、画面では最後尾に置かれている「4人目」キャラという不思議な扱い。彼女が居なければ、このゲームはクリア不可能である。
- まむすの村にいるサイキック(名前無し)
- 「しーるど」の能力者で、話しかけると味方を回復してくれる。若くないらしいので仲間にはならないが、みさがアークCITYに居る事を教えてくれる。
- でうすの村にいる老人(名前無し)
- 幼い頃のみなみをアークCITYから連れ出した人物。
- かつま大佐
- かつてはサイキックを「人類の敵」と考えていたが、そうではない真実を知り、みなみ達に希望を託す。
- 行政区の病院にいる男(名前無し)
- みさの所在について知っているらしい男。
- まっくす
- 病院にいる男が「仲間について知りたければ会って来い」と言った青年。しかし……。
- なたーしゃ
- みさの所在を知っている、もう一人の人物。警備室の管理をしている青年・あーさとは知り合いである。口調と名前は女性だが、ドット絵が汎用男性の使いまわしなため、一部のファンの間からはオカマではないかとも言われている。
- イルカ族
- 人類以上の知能を持つ生命体。惑星「あくあ」を自分たちが住める環境にするために、サイキック達とは共存が可能と考えている。
- シャチ族
- 人類以上の知能を持つ生命体。人類には進歩がなく共存は不可能と考え、サイキックも信用していない。それに加え、イルカ族よりも自分達の方が優れてると考えており、対立している。
[編集] 地名・場所
- マムスの村
- スタート地点の一歩左に歩いた所にある村。住民が力を合わせ、村の姿を外から見えないようにしている。そのためフィールド上では町のグラフィックがない。姿を消している理由は語られないが、サイキック狩りから逃れる目的であると考えられる。
- デウスの村
- 謎の病リンスキン病に冒されている。
- 洞窟
- マムスの村と同じく姿が見えなくなっている洞窟。リンスキン病を治療する「アイム」の薬を調合するために必要な「えくのみ」が手に入る。
- 発電所
- 仲間の一人であるしばが捕らえられている発電所。止まっている発電機を動かすとマムスの村からアークCITYへ行けるようになる。
- アークCITY
- ここから敵が強くなり、普通にプレイして最初にやって来た時はESPと素手による攻撃でないと、まずダメージを与えられない。
- 居住区
- 仲間の一人であるあいねが居て、話しかけると仲間になる。
- 行政区
- 病院や研究所、警備室などがある。仲間の一人であるみさが、警備室に捕らえられており、複雑な手順を踏むと仲間になる。
- ブレイン室
- コンピュータルーム。途中には「酸素パイプ」が落ちているが、マップでは姿が見えない。
- アークCITY地下
- エネルギー管理室も途中にある。「酸素パイプ」があれば、ここから宇宙タワーへ進める。
- 宇宙タワー
- 「酸素パイプ」が無いと来れない。「ラボラトリー」と「コックピット」に進める道がある。
- ラボラトリー
- 最終到達地点の一つ。ここと「コックピット」は壁の中を歩く事が可能で、壁の中に居ると敵が出現しない。
- コックピット
- 最終到達地点の一つ。ここでサイキック達は、三つに分かたれた道を、どれか一つ選ぶ事になる……。
[編集] くすり
このゲームでは、手に入れた「くすりのもと」をマムスの村にいる薬剤師に調合してもらうことで、薬を手に入れることが出来る。ただし、「かりう」はマイナスアイテムで、うっかり使うと病気に犯されてしまう。