天秤ばかり
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天秤ばかり(てんびん-)とは、てこの原理を利用して、重さを量りたい物体と、錘とをつりあわせることによって、物体の質量を測定する器具。上皿天秤のように、計りたい物体とおなじ重さの錘を用いるものと、一定の重さの錘を用いて、支点からの距離を変えることによって測定する場合とに分かれる。
なお、電子天秤と称するはかりが存在し、見かけはまるでただの台ばかりのようでありながら、内部的には立派に天秤ばかりとしての構造を有している。ただし、錘を用いているわけではなく電気的な力によって天秤をつり合わせているという点では、上記の古典的な天秤ばかりとは異なっていると言えよう。
[編集] 解説
天秤ばかりの中で最も簡単なものは、一本の棒の真中を支えて支点とし、その両側で支点から等しい距離にある点に、それぞれ質量を測定しようとする物体と、あらかじめ重さの分かっている錘とをぶら下げてつりあわせる事によって、物体の質量を測定するものである。この場合は、つりあったときの錘の重さと、重さを測ろうとしている物体の重さが等しくなるため、ぶら下げた錘の重さを足し算すれば物体の重さが分かるのである。
一般的な辞典などで「天秤」という言葉を引くと、その解説ではたいてい、このいちばん簡単な形の天秤ばかりについての解説がかかれている。しかし、天秤ばかりといった場合、このような簡単なものだけをさすわけではなく、ここから派生したさまざまな質量測定器具が天秤ばかりと呼ばれるものの中に入ると考えるのが妥当であろう。
ここでは「重さ」という語を使っているが、実際には天秤ばかりで量るのは重さではなく、重力加速度に影響されない質量である。 天秤の両側の回転モーメントを釣り合わせると、両側の重力加速度が打ち消しあうので、その場所の重力場の強さは測定結果に影響しない。
人体など、より重い物体を測定対象とするときそれとおなじ重さの錘を用意するのは大変である。このような場合は、錘を載せる側の支点からの距離を、物体と支点との間の距離よりもおおきくとればよい。てこの原理に従って、錘や物体が天秤に与えるトルクは、支点との距離に反比例するからである。 さらに大型でかさのある荷を扱うため、プラットフォームを片持ち梁の途中に乗せた天秤はかりも存在する。 この梁が動いて適当なサイズの別の棹に小さい力を伝える。 今日でも、電気が使えない過酷な環境下で用いられる500キログラム容量のポータブル天秤を見ることができる。 しかし、こうして軸が増えることによって精度は下がり、校正はより複雑になる。 このようなシステムは特に高価な設計で無い限り、精度はたかだか最大容量の1万分の1であるものが普通である。
錘と天秤ばかりをばらばらのパーツとして保管しておくのは、一般の場合にはあまり好ましくないといえる。錘のなくなった天秤ばかりは、ただの場所を取るオブジェにしかならない。このような場合、錘と天秤ばかり本体がばらばらにならないような天秤ばかりを作ることが出来る。天秤ばかりはてこの原理を利用しているのだから、錘の重さを変える代わりに支点からの距離を変えてやればいいのである。錘が天秤のさおから外れないで動かせるようにすればよい。物体の重さはさおに刻まれた目盛りのどの位置に錘をあわせたときにつりあうかを読み取る事によって測定される。 このような形の天秤ばかりは、古くは体重計などとして広く用いられていた。
現代では一般の体重計などはばねばかりである事が多いが、体脂肪計など精密な質量測定が必要とされる用途では、電子天秤を使うものも見受けられるようになってきた。 電子天秤は、錘とつりあわせる代わりに、電気的な力とつりあわせる事によって物体の重さを測定するものである。 特に、化学実験用の電子天秤は、極めて高い精度を出すように設計されている。 0.1mg以下の精度で製作された皿が、透明なケースの中に収められ、塵や空気の流れが結果に影響を与えないようになっている。 また、ケース内で空気の対流が起きないよう、計量する試料は室温でなければならない。
[編集] 試験と校正
ほとんどの国では商用の秤の設計と使用が規制されている。 このために、新しい設計を導入すると費用の高い規制のハードルを越えなければならないので、秤は他のテクノロジーに比べて遅れがちである。 しかし、最近ではデジタル重量計が導入される傾向にある。 デジタル重量計は、実際にはひずみ計であり、専用のアナログ変換機とネットワークが組み込まれている。 この設計により、苛酷な環境下で20ミリボルト信号を伝送することに付随する問題を減らしている。
政府の規制は、認可を受けた機関で定期的に検査を受けることを要求しており、そのときの校正記録は保存される。 体重計のような商用でない秤は、「商用不可」のラベルを付けることが要求されている。
地球上の重力は場所によって0.5%の範囲で変動しているので、商用目的の秤の校正では質量に対する重さの差の問題が発生する。 伝統的な天秤ばかりは、本質的に標準おもりの質量を量ることができるが、近代的な電子重量計は下向きの力を計っているだけので、場所によって異なる重さを示すことになる。 この場合、正確な重さを測定するためには、設置した場所ごとに校正をしなければならない。