ソケットレンチ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ソケットレンチ (socket wrench) とは、ボルトやナットの頭に嵌める円筒状のソケット (ボックス) とハンドルを組み合わせて使用するレンチの一種。 締緩するボルトやナットに合わせたソケットと、作業状況に合わせたハンドルと場合によってはアクセサリーを組み合わせることで、少ない工具で多くの作業状況に対応することができる。
ソケットレンチはアメリカ人のジョー・ジョンソンによって発明された。それまでのレンチはソケットとハンドルが一体になったものしか存在せず、作業者は異なるサイズのレンチを何本も用意しなければならなかった。ジョー・ジョンソンは後にSnap-on Wrench Companyを設立する。
[編集] 差込角 (ドライブ角)
ソケットとハンドル、アクセサリーを組み合わせるために、ハンドル側に差込角と呼ばれる凸部、ソケット側に凹部が設けられている。使用中のソケット脱落を防ぐため、差込角には一側面に通常裏からスプリングで支持する小さいボールが、ソケット側には四面のそれに応じた位置に窪みが設けられている。
差込角の種類
- 1/4" (6.35mm)
- 3/8" (9.5mm)
- 1/2" (12.7mm)
- 3/4" (19.0mm)
- 1" (25.4mm)
- 1-1/2" (38.1mm)
- 2" (50.8mm)
- 2-1/2" (63.5mm)
乗用車の整備には3/8"前後のサイズを使う。3/4"以上のサイズは大型機械・建設機械・船舶などの整備で使われる。1-1/2"以上はギヤレンチ (通称倍力レンチ) を介してラチェットハンドルなどで回すか、高圧空気または電動モーターを利用するインパクトレンチを使用し、通常は人の腕の力だけで回して使うことはない。
[編集] 種類
ソケット
- ソケット
- 単にソケットという場合、通常は六角形のボルト・ナットを回すためのものを指す。ボルト・ナットの山にかける部分が12箇所のものと、6箇所のものとがある。通常は12箇所のものが便利なので選ばれることが多い。
- ビットソケット
- ボルト・ナット用のボックス部のかわりに六角穴付きボルトに使うヘキサゴンレンチのようなビットが打ち込んである。
- ユニバーサルソケット
- ボックス部とソケット部の間にユニバーサルジョイントが入っているタイプ。アダプターのユニバーサルジョイントより使いやすいが沢山揃えるには高価なので、最も良く使うボルト・ナットのサイズのみを揃えるのが普通。
ハンドル
- 必要は手段を正当化するとはいえ、腕の力で回らない時にハンドルにパイプをかぶせて長さを延長して使ったり、足で蹴って回すことは正しい使い方ではない。とくにラチェットハンドルには避けた方がいい。
- ラチェットハンドル
- ラチェット機構を用いて往復運動のみでボルトの締め・緩めを行うことができるハンドル。ソケットに組み合わされるハンドルとして最も一般的。またハンドルの中で最も高価である。ラチェットとギアの入る部分が長円形ないし小判形で小さい切り替えレバーで回転方向を切り替えるタイプと、丸形で大きなダイヤルで切り替えるタイプがある。後者の方が安価に作れるので安いセットには後者が入っていることが多い。
- スピンナーハンドル
- 長いハンドルの先に太いピンを介して差込部を連結したもの。連結部を真っ直ぐにしてドライバーのように早回しに使うことも、90度ほど曲げてテコの原理を利用して大きい力をかけることもできる。
- スライドヘッドハンドル
- 短いエクステンションバーの上端に水平方向に貫通した孔があり、そこに長い丸棒を通してLハンドルのようにして回すもの。
- ドライバーハンドル
- ドライバーのような握りの付いたまっすぐで単純なハンドル。1/4"や3/8"などの小さい差込角のソケットに使われる。
- Tハンドル
- 長目のまっすぐな軸の、差込角とは反対側の端に丸棒を垂直に固定したもの。差込角側にユニバーサルジョイントを持つもの、T字の横棒部分が折り畳めるものがある。
- Lハンドル
- L字型の丸棒の両端に差込角を有するハンドル。差込角がL字の短い棒のみにつくものもある。
- 一般にトルクレンチは多種サイズの対象に対応するために、ソケットハンドルの形態を採っている。
アクセサリー
- ハンドルとソケットの間に入れて使うもの。
- エクステンションバー
- ボルトが機械の奥の方にあってハンドルを振るスペースが無い場合などに使用する。各種の長さのものがある。
- ユニバーサルジョイント
- ソケットとハンドルの直結や普通のエクステンションバーを介した状態では回すことのできない狭い場所や障害物のある場合にソケットとハンドルの間に使用する。連結ピンの部分が弱いのであまり大きな力をかけるには向かない。
- 首振り (ウォブル) ジョイント
- ユニバーサルジョイントほど大きい角度には曲がらない。エクステンションの差込角にこの機能を持たせたものもある。
- アダプタ
- 好ましいことではないが、3/8"のソケットに1/2"のハンドルというように、差込角サイズが異なるハンドル類とソケットを組み合わせて用いる場合に使用する。
- スピンナーディスク
- 緩んでいるボルトナットの早回しに使用する。これも1/4"や3/8"などの小さい差込角のソケットによく使われる。