カップリング反応
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カップリング反応 (coupling reaction) とは、2つの化学物質を選択的に結合させる反応のこと。特に、それぞれの物質が比較的大きな構造(ユニット)を持っているときに用いられることが多い。天然物の全合成などで多用される。
結合する2つのユニットの構造が等しい場合はホモカップリング、異なる場合はクロスカップリング(またはヘテロカップリング)という。一般式としては以下のように表される。
ホモカップリング: R-X + R-X → R-R
クロスカップリング: R-X + R'-Y → R-R'
カップリング反応として様々な方法が開発されている。近年は特に触媒量の遷移金属化合物存在下で有機金属化合物あるいは不飽和炭化水素化合物が、有機ハロゲン化物と縮合するカップリング反応がいろいろ知られてきており、天然物合成などで多用されるようになった。
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[編集] 銅を用いたカップリング
ウルマン反応を代表とする、芳香族ハロゲン化物のハロゲン化銅を用いたホモカップリング反応。触媒反応ではなく、銅は試薬量が必要。
[編集] ウルマン反応
Ullmann反応。銅を用いた芳香族ハロゲン化物をビフェニル誘導体とするホモカップリング反応。系中でアリールハロゲン化銅が生成する。記事:ウルマン反応を参照。
- 2 Ar-X + Cu2O(触媒) → Ar-Ar
[編集] グレーサー反応
Glaser反応。銅化合物を触媒として用いた末端アルキン(アセチレン)の酸化的ホモカップリング反応。
- 2 R-C≡C-H + CuCl2(触媒) + O2 → R-C≡C-C≡C-R
[編集] パラジウムを用いたカップリング
ハロゲン化アリルまたはハロゲン化アリール等が π-パラジウム錯体を経由して触媒サイクルに導入されるクロスカップリング反応。収率が悪いがニッケルでも同様な反応が進行する。
溝呂木・ヘック反応が元となり、ビニル-パラジウム錯体から、アリール-パラジウム錯体へと反応種が展開した。また、金属-パラジウム間のカップリング基の交換反応を応用することでカップリングの対象となる基が広がった。また90年代後半からパラジウム触媒の配位子に関して研究が進み、かさ高く電子密度の高い配位子を用いることで反応性がはるかに向上することが明らかにされた。塩化アリールなど、以前は反応性が低く使えないとされていた基質も、近年では十分な効率で反応が行えるようになってきている。
[編集] 溝呂木・ヘック反応
Mizoroki-Heck反応。パラジウム触媒存在下で有機ハロゲン化物と末端アルケンから内部アルケン化合物を生成する反応。日本国では溝呂木・ヘック反応と呼ばれる場合もある。記事:ヘック反応に詳しい。
- Ar-X + H2C=CHR + Pd触媒 → Ar-HC=CHR
[編集] 根岸カップリング
有機亜鉛を用いるカップリング。
- Ar-X + R-Zn-X + Pd触媒 → Ar-R
[編集] 右田・小杉・スティルカップリング
Migita-Kosugi-Stilleカップリング。有機スズを用いる。記事:右田・小杉・スティルカップリングに詳しい。
- Ar-X + R-Sn-R'3 + Pd触媒 → Ar-R
[編集] 薗頭カップリング
薗頭(Sonogashira)カップリングは、 銅も用いてアルキンとの結合を作る反応。記事:薗頭カップリングに詳しい。
- Ar-X + R-C≡C-H + Pd触媒 + 塩基 → Ar-C≡C-R
[編集] 鈴木・宮浦カップリング
当時北海道大学所属の鈴木及び宮浦らによって発見された。 触媒に有機パラジウム化合物(但し無機パラジウムでも反応は進行する)、基質に有機ホウ素化合物を用いる。原料が安定で扱いやすいこと、反応条件が穏和で操作が簡便なこと、有害な廃棄物をほとんど出さない(生成物はカップリング生成物と通常ホウ酸である)ことなど優れた特長を併せ持ち、実験室レベルから工業規模での合成まで広く応用されている極めて重要な反応となっている。記事:鈴木・宮浦カップリングに詳しい。
- Ar-X + R-B(OH)2 + Pd触媒 + 塩基 → Ar-R
[編集] ブッフバルト・ハートウィッグ反応
ハロゲン化アリールとアミンを反応させ、アリールアミンを作る反応。形式としては銅触媒を用いるウルマン反応と同じ反応となる。記事:ブッフバルト・ハートウィッグ反応に詳しい。
- Ar-X + R-NH2 + Pd触媒 + 塩基 → Ar-NHR
[編集] ニッケルを用いたカップリング
ニッケルもパラジウムと同様な触媒サイクルの反応機構でカップリング反応を行なう。
[編集] 熊田・玉尾カップリング
有機金属種として有機マグネシウム化合物(グリニャール試薬)を用いる。最初に発見されたニッケルカップリング反応。
- Ar-X + R-Mg-X + Ni触媒 → Ar-R
[編集] ジアゾカップリング
アゾ化合物を用いるカップリング反応。この反応は求電子的置換反応であり、触媒反応ではない。
- Ar-N2+ + Ar'H + Ar-N=N-Ar'
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