アジール
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アジールとは、歴史的・社会的な概念で、「聖域」「自由領域」「避難所」などを含む特殊なエリアのことを意味する。具体的には、おおむね「統治権力が及ばない地域」ということになる。現代の法制度の中で近いものを探せば「治外法権(が認められた地域)」のようなものである。
日本におけるアジール研究は、歴史学者の平泉澄が先鞭をつけた。平泉は初期の論文『中世に於ける社寺と社会との関係』の中で「アジールは人類発達の或る段階に於て、一般に経験する所の風習又は制度」と述べている。この発想は中田薫や網野善彦らに引き継がれ、何をアジールと認識すべきか、そのアジールを支えてきた制度がどのように変遷してきたか、などが徐々に明らかになってきている。
アジールとされる地域には、「神社・仏閣」などの聖地の要素を持つ場所のほか、「市場」などの自由領域・交易場所なども含まれる。商業都市なども「自治都市」として強いアジール性が認められた場所もある。遡れば、一定の勢力を持つ豪族の居所などにもアジール性が認めうるという研究もある。
アジールは、統治権力が及ばない場所であったため、統治権力の側はアジールを制圧し支配することに熱意をそそいだ。力による制圧のほか、一定の自治権を統治権力の側が認め許したという様式を整えることによってアジールを取り込み、結果としてアジール性を失わせるといった方法も取られた。こういった圧力の結果、時代が下るにつれアジールは徐々に狭められていく傾向にあった。国家の隅々まであまねく統治権力が及ぶとされる近代国家では、アジールは滅び、原則として存在しない。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
網野善彦『無縁・公界・楽――日本中世の自由と平和 増補版』(平凡社[平凡社ライブラリー],1996年, ISBN 4-582-76150-X)
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