はるかなる甲子園 駆けろ!大空
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『はるかなる甲子園 駆けろ!大空』は、かとうひろしによって月刊コロコロコミック(小学館)に1996年10月号から1998年3月号まで連載された少年漫画。単行本(てんとう虫コミックス)は全3巻(現在絶版)。
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[編集] 概要
この作品は、サイファー終了後に連載されたかとうひろしコロコロコミックオリジナル作品第2弾であり、実質オリジナルとしての雑誌連載作品では2006年現在のところ最後の作品となっている。前作サイファーがアンケートで思うように票が集まらず、次回作は「スポーツ漫画」を描いて欲しいと編集から頼まれる。自身が決して描く事がないであろうと思っていたジャンルだけに当初は困惑するも、この仕事を断ればもう仕事がないかもしれないという考えから、全力を尽くすことを決意。候補としてあがっていたのはバスケットボールと野球であったが、バスケットボールは既に松村努の「BiNGO!」が連載開始となったこともあり、野球マンガを担当することになる。 野球のルールをよく知らないかとうは野球の入門書を読みあさった上で決意も新たに執筆することとなる。
当初は「コロコロであれば対象から考えてリトルリーグの話かな」と考えていたかとうであるが、担当から「高校野球の話」と言われ、話の路線が甲子園を目指す球児という方向になる。
その大人びた作風とリアルな駆け引きなどから一部の少年たちの間では大変人気となり、作中に登場するホークホッパーに衝撃を受けた少年たちも多かったと言う。 しかし、サイファーと同じく、その作風が仇となったのか、アンケート順位ではよい成績を残すことができず、前作サイファーよりは長いものの、18話で打ち切りが決定してしまう。 ストーリー自体はスクールウォーズの野球版ともいえるストーリーだが、現在ではこっちのほうが面白いから大空をドラマ化して欲しいというファンも大勢いる。 また、全18話という構造から「短いながらも名作だ!」という評価が多く、いたずらに長いだけのスポーツ漫画よりもはるかにおもしろいとさえ言われる。
この作品もかとうの公式ページで無料公開されており、やはり掲示板には「大空の続篇が見たい!」「各キャラクターのサブストーリーが見たい!」と言った要望が後を絶えない。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] あらすじ
私立博愛学園高等学校。
手の付けられない不良の集まる最低の不良高校として名を馳せていた同校に一人の男が帰ってきた。 彼の名は静大空。 かつての博愛学園野球部の前へ向かうが、そこに待っていたのは荒れ果てた部室と埃を被った野球部の看板であった。 そこへ博愛一の暴走グループ魔鬼雨のメンバーが現れる。 最初は無視していた彼だが、野球部の看板を傷つけられると一変、不良たちを一瞬にして退けてしまう。
そこへリーダーの山彦が現れた。かつて野球部のエースだったと言う彼は大空の転がしたボールを彼めがけて投げつけた。 その球をみた大空は自ら勝負を仕掛ける。 自信満々の山彦だったが、大空は山彦の球を片手で打ち返す。
呆然とする山彦に破壊された野球部の看板を持ってこう言うのだった。 「いこうじゃねえか 甲子園へよ…」
[編集] 登場人物
[編集] 博愛学園
自由尊重・束縛からの解放をモットーとしている高校だが、今はそれを曲解した不良生徒がはびこる最悪の学校となっている。
- 静大空(しずか おおぞら)
- 博愛学園にやってきた国語教師。かつて手の付けられない不良として恐れられていたが、ある教師が勧めた野球で徐々に才能を開花させ、地区大会の決勝まで上り詰める。しかし、地区大会決勝の日に事故に遭い、肩を破壊してしまう。その後行方知れずとなり、暴力団の用心棒などを経て教師となって博愛へ戻ってくる。
- 逸見隆(いつみ たかし)
- 通称ネズミ。1番レフト。窃盗の常習犯で要注意人物とされていた。しかし、実際は病気の弟・ケンジとアルコール中毒の父親がおり、その弟を喜ばせるために盗みを働いていたこともあった。野球部廃部後もわざと運送業や新聞配達などのキツイアルバイトを選び、夜中に素振りをして体を鍛えていた。
- 山崎進(やまざき すすむ)
- 通称レディ。2番セカンド。下町劇団の長男として生まれ、女形の真髄を極めるために女として生活をしている(設定資料より)。初期設定での名は「早乙女進」。
- 谷山昇二(たにやま しょうじ)
- 通称マフィア。3番サード。元は聖エルモ学園の西棟のトップだったが、親友の死をきっかけに聖エルモを離脱し、親友の夢を叶えようと奔走する。かつてボクシングをたしなんでいたために動体視力が優れており、その身体能力はチームでも群を抜いている。チーム一の長打者で作中最も得点に結びつくプレーをしていた一人である。初期設定での名は「埴輪昇二」。
- 山彦明(やまびこ あきら)
- 通称ミラクル。博愛のエースで4番ピッチャー。彼の活躍ナシには博愛が数々の勝利を得ることは出来なかったであろう奇跡の剛速球投手。幼い頃に父親を病気で亡くし、母親と生き別れる。その後おばの家に預けられるが、いつの日か母との再会を夢見て甲子園出場を目指していた。初期の頃はコントロールが悪く、ノーコンピッチャーの悪名を背負っていたが、自ら集中力を高める特訓を行い弱点を克服する。初期設定での名は「山彦大悟」。
- 大沢勇(おおさわ いさむ)
- 通称ニクマン。5番キャッチャー。博愛一の巨漢でいつも肉まんを持ち歩いている。無銭飲食の常習者。ミラクルとのバッテリーは見事なものだが、あまりの球威にキャッチャーながら驚くこともしばしば。「~ぜよ」を語尾に付けて話している。初期設定での通称は「ビガロ」、名は「元気勇一」。
- 高田準一(たかだ じゅんいち)
- 通称カンドウ。6番センター。博愛ナインのなかでは比較的一般的な感覚の持ち主であるが、どんなことでもすぐに感動してしまう涙もろい性格。「~っす」と言う下からのしゃべりが特徴的。初期設定及び連載予告ではキャプテンの永島純というかなり異なるキャラだった。
- レオン山本(れおん やまもと)
- 通称ダンガン。7番ショート。傷害で補導暦がある。短距離でのスピードは驚異的でチーム一の盗塁率を誇る。肌が黒いが、これはハーフなのか単なる日焼けなのかは不明。
- 坂口征一(さかぐち せいいち)
- 通称ナニワ。8番ファースト。常に関西弁でしゃべっている。チーム一の長身。しかし、それがあだとなり低いボールをさばくのが苦手であったが、作中で克服する。初期設定での通称は「通天閣」、名は「大杉雅人」。
- 工藤真人(くどう まさと)
- 通称ガクシャ。9番ライト。常に本やパソコンを持ち歩いている。エリートの家に生まれたために心のつながりがないことを苦にしていたが、大空の言葉を受け自分の道を歩むことを選ぶ。野球経験のある兄が一人いる。初期設定での通称は「ガリ勉」、名は「多之彩舜」。
- 黒八木教頭(くろやぎ)
- 通称クソヤギ。大空の過去を知る人物。かつて手の付けられなかった大空が教師になって帰ってきたことに反感を持ち続け、自分の学校の生徒すら信用せずにクズとののしっている。何かに付けて大空を目の敵とする。
- 山辺校長(やまべ)
- 大空の恩師。かつて不良であった大空に野球を薦めた張本人である。「自由を尊び全ての束縛から解放する」という校訓を絵に描いたような温和な人物で窓ガラスを割る不良たちも「ガラスなどまたとりかえればいい」と教師をなだめていた。また、野球部復活に一番力を入れていたのも彼であり、最終回では大応援団を結成してナインの前に現れる。苗字の「山辺」は、設定資料のみで本編には登場しなかった。
[編集] 聖エルモ学園
世間から爪弾きにされた不良生徒を更生させる事を目的とした全寮制の高校だが、内部は暴力によって全てが支配されており、年に行方不明になる者が何人も出るほどだという。その中の東棟と西棟は対立関係にある。1951年創立。
- 堂島(どうじま)
- 谷山の親友で谷山が甲子園を目指すきっかけを作った人物。聖エルモでは「西の谷山、東の堂島」と言われる存在であった。ある騒動が原因で他界。
- 太田黒(おおたぐろ)
- 聖エルモのピッチャー。試合ではビーンボールを得意としており、なおかつかなりの速球の持ち主でもある。かつて谷山の後輩であり、谷山に命を救われたことから彼に憧れていたが、エルモを抜け出したことで憎しみを抱く。しかし、谷山の決意を知り、再び谷山を尊敬し直す。
- 吉田(よしだ)
- 聖エルモの教官・野球部監督。表向きには人の良さそうな笑顔をたたえているが、実際には残忍な性格で、教官の地位を利用して生徒を脅したり虐待したりしている。
[編集] 羽亜渡学園
自然との調和を信条とする高校。通称「鳥校」。その名の通り学校中に鳥が舞っている。
- 大鷹俊(おおたか とし)
- 通称タカ。羽亜渡高のエース4番。作中唯一のアンダースロー投手で脅威の変化球「ホークホッパー」を得意とする。博愛との熾烈な投手戦を繰り広げ、最後には博愛を奇跡のチームと認める。
- 森野福郎(もりの ふくろう)
- 通称フクロウ。羽亜渡高3番キャッチャー。選球力は抜群でホークホッパーとストレートを巧みに使い分けた戦術で博愛を翻弄した。しかし、最終的には自らホークホッパー最大のヒントを博愛へ与えてしまうこととなる。
- 川瀬道夫(かわせ みちお)
- 通称カワセミ。1番ショート。守備では魚を獲るカワセミのような軽やかなプレイをする。攻撃では空から急降下して水中の魚を獲るカワセミのようにバットを高い位置から振り下ろして確実にバットに当てる「カワセミ打法」を得意とする。
- 孔雀沢孝(くじゃくざわ たかし)
- 通称クジャク。2番サード。バットをクジャクの羽の形のように振り回し、相手へ威嚇を与え、ボールのタイミングを計る。
- 鶴田高一(つるた こういち)
- 通称ツル。5番ファースト。
- 隼直人(はやぶさ なおと)
- 通称ハヤブサ。6番センター。
- 北燕進次(きたつばめ しんじ)
- 通称ツバメ。7番セカンド。空中で宙返りをしながらアウトを獲り、そのまま一塁に送球してダブルプレーを獲る「ツバメ返し」を得意とする。
- 八鳥三郎(はちどり さぶろう)
- 通称ハチドリ。8番ライト。おとなしそうな容貌をしている。ジャンプ力が高い。
- ペリー神崎(ぺりーかんざき)
- 通称ペリカン。9番レフト。
- 監督(?)
- 姿が影になっていたり、大きめのメガネをかけていたりして素顔が分からない怪しい人物。インコのピーちゃんを相手チームに送り込み、相手の選手の弱点を覚えさせてデータを取っている。
[編集] 大空の裏設定
サイファー同様その後のことを知りたいと言うファンの要望に答えて原作者が自らの考えを掲示板上に告白したことがある。 といってもサイファーほど詳細なものではないが 何故大空が博愛へ戻ってきたかなどの考えを作者なりに解説してくれていた。
作者によれば大空は既に不治の病に侵されており、自分の余命が長くないことを知っていた。 しかし、今の自分は裏の世界の人間として生きていくしかなかった。 そんな中でかつての恩師が自分を裏の世界から救ってくれ、今まで自分のしてきた過ちに気付き その償いとして自らの果たせなかった甲子園出場と学校の再生を今の自分の全てを賭けて行ってやろうと言う決意で戻ってきた。
甲子園出場を決めた最後のシーンにそれを匂わせるような部分があるが、これは作品中で語られることはなかった。
また、作者自身も黒八木教頭と大空の因縁についてのストーリーをいつか描きたいと発言していたことから そういった裏設定はかなり詳細なものが考えられていたと思われる。