YouTube
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YouTube(ユーチューブ)はアメリカ合衆国の企業。また、同社が運営する、オンライン上で動画を共有、閲覧できる同名のソーシャル・ネットワーキング・サービスサイト。
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[編集] 概要
2005年2月、米カリフォルニア州サンマテオで設立。CEOは元PayPal従業員のチャド・ハーリー。従業員数67人(2006年10月現在)[1]。Tubeは英語でブラウン管(Cathode Ray Tube)の意味がある。キャッチコピーはBroadcast Yourself.(あなた自身を放送せよ)。設立のきっかけは「ビデオ映像を簡単に誰でも共有したかった」からである。
サイトは英語で構成されている。サービスは全て無料で利用できる。随所でAjaxが用いられており、YouTubeを利用するにはJavaScriptを有効にする必要がある。動画閲覧だけなら登録は不要だが、稀に会員しか見られない動画もある。登録すると以下のサービスを利用できる。
- 容量100MB、10分までの動画ファイルを容易にアップロードし、公開できる。
- 動画を5段階で評価したり、動画やメンバーにコメントを付けられる。
- 動画をまとめたプレイリストを作成・公開する機能、お気に入り機能がある。
- 特定のメンバー同士で動画を共有できる。
Web 2.0の代表的なサイトの1つとされる。動画やコメントなどにUser Nameが表示されるため、ソーシャル・ネットワーキング・サービスにも分類される。アップロードできるのは動画ファイルのみで、音声ファイルなどはアップロードできない。
2006年4月21日時点で4000万の動画があり、日に3万5千の動画がアップロードされていることがプレスリリースで発表された。利便性から世界的に人気があり、Google VideoやAsk ビデオなど似たサービスは他にもあるが、動画の数はYouTubeが圧倒的に多く、同系統のサイトでは最大規模になっている(ただし、最近は下記のとおり規制が厳しくなってきたのでユーザーが離れつつある)。ほかにも動画に対するタグ(動画を分類するキーワード。メタデータの一種)を自由に付けられることや人気タグ一覧が表示されるタグクラウドの実装など、写真共有サイトFlickrの動画マルチ版ともいえる存在である。
アメリカでは2005年12月頃にNBCの人気テレビ番組、サタデー・ナイト・ライブがアップロードされていたことからブログなどで話題になった。日本では2006年1月頃に2ちゃんねるやブログなどで紹介され人気が上昇、2006年3月頃からINTERNET Watch(Impress)やITmediaなどのニュースサイトで取り上げられるようになった。サイトオープンから1年で驚異的に利用者を増やし、今後さらなる利用者の増加が予想される。これを受けて日本でもYouTubeを意識したと思われるワッチミー!TVなどの類似サービスが開始された。但し、日本では著作権問題(後述)が一番の課題となっている為に、皆が類似サービスを思いついてはみるものの、参入がとても難しいと言われていた。また、最近では、YouTubeAPIを利用した閲覧専用サイトYouTubeCHやYouTubeのビデオを日本語検索可能にするMOCO Videoといったアグリゲーターサービスが数多く開始されている。
著作権問題はあるものの手軽に動画が楽しめることから、コンテンツ業界に注目されている。2006年4月にアメリカの映画制作会社、The Weinstein CompanyとDimension Filmsが提携し、映画の予告編がYouTubeで配信された。2006年6月28日にNBCと提携、NBCのコメディドラマ「The Office」のPVを配信したり、プロモーションページを設けた。また、NHLはYouTubeと契約し、試合のダイジェスト版の提供を開始した。また、アメリカの任天堂では、ゲーム機「Wii」の宣伝をYouTubeと契約しCMを公開し、同様に日本向けにナイキがシューズのCMを行っている。さらにレコード会社などが自前のページを立ち上げて配信を始める例も見られ、新たな活用法が模索され続けている。
こちら以外の活用例としては、イーホームズの藤田東吾がYouTubeを通じ構造計算書偽造問題に対する告発を行ったり、ロサンゼルス市警の警官が無抵抗な被疑者に対し暴力を振るっている姿を捕らえた映像がYouTubeで匿名で公開されたりと、告発の場となっている。
機能追加も活発で、メンテナンスが頻繁に行われている。メンテナンス画面は机を組み立てる説明書を読んでいる男性の写真や、営団地下鉄(現:東京メトロ)の電車に貼られていたドアステッカーの写真や東京都の消火器具に描かれている消防士のキャラクターの画像など、ユーモラスで意味深長なフレーズと画像が使われるが、2006年6月2日のメンテナンスで、トップページが「ALL YOUR VIDEO ARE BELONG TO US.」と書かれたものになり、インターネット上で騒動となった。これは「All your base are belong to us.」をもじったものと思われるが、海外(特に日本)からのアクセス増加をよく思ってないと取れるため、「海外からのアクセスが規制されるのでは」「クラッキングされた」などといった推測が飛びかった。のちにYouTubeのブログでユーザーに心配かけたことを謝罪し、機能追加を発表した。
YouTubeはサーバーの回線コストだけで月間100万ドルに達するという。
今後どういった部分で収益を上げていくかが注目されていたが、2006年10月に入るとGoogleに買収されるのではないかとの報道が入り(ちなみにYouTubeは主にGoogle AdSenseの広告を利用していた)、10月9日にGoogleが16億5000万ドルで買収に同意したとの発表を行った。この買収については日本での反応として一般ユーザーからアップロードされた動画に対し厳しい規制が取られてしまうのでは? という危惧が持たれている。だが、チャド・ハーリーCEOはこれに対し「YouTubeはGoogleに買収されたが、今後もYouTubeとしたブランドで独立したサービスを提供し続ける」と述べた。また、Google側もYouTubeの類似サービスであるGoogle Videoは続行してサービスを提供すると述べた[2]。
[編集] 動画
アップロードした動画は以下の形式に変換される。
- 動画:Flash Video形式 / 200Kbps前後 / QVGA(320x240)サイズ以下 / 30fps以下 / アスペクト比4:3(もしくは1:1)
- 音声:MP3形式 / 64Kbps(VBR) / モノラル / 22050Hz
アスペクト比が上記以外の動画は自動的に黒帯が追加され、レターボックスになる。Adobe Flash Player 7以降がインストールされていれば、Webブラウザでストリーミング再生を閲覧できる。
UTF-8で運営しているため、動画名やコメント、タグは日本語を含む多国語に対応している。
卑猥な動画はメンバー登録による18歳以上の年齢認証が設定されるが、年齢認証は検証の手段が無いので全く意味がなく、小学生でも閲覧は出来る。ただし年齢認証を設定しても過激な性描写がある動画は削除される。その他著作権侵害・過激な性描写などで頻繁に動画を削除されると、警告なしにアカウントを削除されると同時に過去にアップロードした動画すべてが削除されるという手続きが確認されている。
なお、過激な性描写がある動画をアップするには、PornoTube(ポルノチューブ)という物が代わりに存在する。
[編集] 著作権問題
アニメやミュージック・ビデオ、テレビCM、オリジナルビデオ、テレビ番組、AMV、MADムービーなどが著作権者に無断で多数アップロードされている事から、著作権侵害が指摘されている。YouTubeは利用規約で著作権侵害になるファイル(テレビ放送や一般市民が撮影したコンサート・舞台など)のアップロードを原則的に禁止しているが、著作権法違反コンテンツは後を絶たない。
以前は違法コンテンツも放置される傾向にあったが、2006年6月頃からは削除作業が活発になった。特にテレビ局関係者はYouTubeに対して厳しい目を光らせており、以前は女子アナの名場面等の多数のコンテンツがあったが、後述に記載した各局の専任監視部隊等の活躍により、現在は視聴出来ない状態である(たとえ見られたとしても翌日には削除依頼が出されている)。もちろん、番組自体をアップした場合は即座に削除される。
このようにYouTubeは違法コンテンツの排除を進めているものの、現在でもかなりの量の違法コンテンツが横行し、中には削除とアップロードを繰り返している動画もあり、いたちごっこになっている。新作アニメなど人気動画の無断アップロードも、依然後を絶たない状況となっている。
だが、YouTubeがここまで人気になった要因はこうした違法コンテンツによるところが大きく、違法コンテンツがなくなると大半の利用者にとってのメリットがなくなり、経営破綻につながるため、YouTube側も難しい対応を迫られている。そのためか最近では各テレビ局にYouTubeの動画の監視・削除要請などを行う専任監視部隊(主として編成や著作権・ライツ関係の業務を行う専任部署)が設けられている。度々の申し入れをせざるを得ない社(例:TBS、東海テレビなど)に対しては、専用の申し入れフォームが作成送付されている。また視聴者側への警告として、例えばBS-iの深夜アニメ放送では冒頭にインターネット上に動画をアップロードすることを禁ずる旨のテロップが流れている(但しこれはYouTube開設以前からの対応)。
2006年2月16日にNBCの抗議を受け、サタデー・ナイト・ライブの映像を削除した。2006年3月27日からアニメなどの海賊版がアップロードされることを制限するために、10分を超えるファイルのアップロードを原則制限しているが、動画を分割してアップロードされているのが現状である。10分以上の動画をアップロードしたいとの要望に応えるため、2006年4月10日からDirector制度が始まった。Directorに登録すれば10分を超えるファイルのアップロードも可能になるが、登録には審査があり、完全なオリジナルコンテンツを提供する人のみに限定されている。
2006年7月14日には、ロス暴動などを撮影したことで知られるロバート・ターがYouTubeに自身が撮影した映像を無許可に公開されたとして、映像1本につき15万ドルの損害賠償請求を求める訴訟をYouTubeに行った。YouTube側は同氏よりの抗議により動画をすぐに削除するなどの対応措置を行ったと主張し、この訴訟は無効だと述べている。ちなみに、この動画を公開したのは2ちゃんねるで固定ハンドルネームを名乗る人物である。
また、『スターウォーズ』のファンが作成したパロディ映像を勝手に削除したとして同作品監督のジョージ・ルーカスに「こういったファンが作成したパロディ映像を削除するな」と苦言を述べられることもあった。
削除に際しては、削除後のアドレスには英文で「This video has been removed at the request of copyright owner ○○○ because its content was used without permission(無断で使用されたため、著作権者である○○○社からの依頼で削除しました)」などの理由が表記されている。かつて毒舌で有名な歌手やしきたかじんが出演する番組[3]が一斉に削除されたことがあった。この時削除された番組の中には讀賣テレビ製作作品でないものも混ざっていたが、その全てに「讀賣テレビからの依頼で削除」と表示されたことがある。
著作権問題はGUBAやVeoh、DivXを利用するStage6など他の似たサービスでも問題となっている。こちらはYouTube程有名ではないため野放しの傾向にある。
2006年8月下旬より、日本のポップ音楽の著作権を統括するJASRACが削除依頼に乗り出し、順次アーティストの無断動画や音楽の削除が始まった(これまでは各テレビ局やアーティストごとの依頼が主であった)。また、JASRACやNHKなどらがYouTubeに行った質問状(日本語での警告文を掲載する、など)に対し、12月15日に回答が得られ、日本のユーザーのみを対象に日本語での警告文を掲載することや、またこれ以外にも、著作権団体に対しYouTube動画削除ツールを開発し提供する、とも記されていた。
2006年12月現在、日本からのユーザー登録受付は著作権侵害の動画ファイルがアップロードされるという理由で出来なくなり、USのみ可能となっている。
[編集] 歴史
- 2005年2月 - 会社設立。
- 2005年11月7日 - ベンチャーキャピタルのSequoia Capitalから350万ドルの投資を受ける。
- 2006年2月16日 - NBCが著作権の侵害として、テレビ番組「サタデー・ナイト・ライブ」の「Lazy Sunday」の映像を削除。大手のテレビ局からの要請による動画削除はこの件が初めてであった。
- 2006年3月27日 - 10分を超える動画ファイルのアップロードを制限。
- 2006年4月5日 - Sequoia Capitalから800万ドルの投資を受ける(二度目)。
- 2006年4月10日 - Director制度開始。
- 2006年6月15日 - 大規模な違法コンテンツ(アニメなど)の削除活動が始まる。
- 2006年6月24日 - 音楽家専用のアカウントを作れるMusicians制度が始まる。
- 2006年6月27日 - かつて否定的な立場をとっていたNBCユニバーサルが一転し、提携を発表。自局番組の宣伝動画などの配信を始める。
- 2006年7月14日 - ニュース記者のロバート・ターが著作権侵害でYouTubeに対し米連邦地裁で訴訟を起こす。
- 2006年8月4日 - メンテナンスを行い、デザインをリニューアル、新機能が追加された。
- 2006年9月中旬 - プレイヤーのデザインを再びリニューアル。
- 2006年10月2日~6日 - 日本の著作権関係権利者団体・事業者(テレビ局など)が集中的に削除要請を行い、約3万件のファイルが削除される。
- 2006年10月9日 - Googleが16億5000万ドルでYouTubeを株式交換で買収した。但し、ブランド名やサービスなどは既存のままであり、Googleのグループ会社になる。ちなみにこのうちの2億ドルが訴訟対策費用となる予定。
- 2006年10月 - QuickList機能が追加される。
- 2006年11月6日 - Time誌の「Invention of the Year for 2006」に選ばれる。
- 2006年12月7日 - 新サービスの実験用サイトとしてTestTube(テストチューブ)を開設。最初の実験として、チャットルームで同じ動画を鑑賞、感想を書き込むなどが可能な「Stream」を公開した。
- 2006年12月17日 - Time誌の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」で「You」が選ばれるが、これには「YouTube」という意味も入っており、Time誌の表紙としてYouTubeの動画メニューの画面が飾った。
[編集] 脚注
- ↑ グーグルがユーチューブ買収で合意、16億5000万ドルで IT-PLUS
- ↑ YouTube - A Message From Chad and Steve(Google買収に対するチャド・ハーリーCEOとスティーブのコメント)
- ↑ 特に『たかじんのそこまで言って委員会』(讀賣テレビ制作:関東圏では一切放送されていない)絡みの画像
[編集] 関連項目
- YouTube板
- MOCO Video
- スプーのえかきうた騒動
- ステージ6
[編集] 外部リンク
- 公式サイト
- YouTube 公式ブログ
- TestTube
- Alexa.com www.youtube.comのトラフィック
- Youtube Fansite(english)
- YouTube Fansite(german)
- Downloading and converting Youtube Videos(english)
- YouTube観測所
- TIME Best Inventions 2006
- TIME.com: Person of the Year: You
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