V-22 (航空機)
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V-22はアメリカのベル社とボーイング社が共同で開発したティルトローター機。
愛称はオスプレイ(Osprey; ミサゴのこと。オスプリー、オスプレィとも)。初飛行は1989年。
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[編集] 開発の経緯
ヘリコプターは垂直離着陸ができるが速度が遅く、航続距離も短かかった。対して通常の固定翼機は垂直離着陸はできなかった。もしヘリコプターの利点である垂直離着陸と固定翼機の利点である長い航続距離や高速などが両立できれば非常に有用であり、アメリカ軍は第二次世界大戦直後から両者の利点を持ち合わせた航空機(大戦中にもF5Uの原型機の試験飛行まで漕ぎ着けている)を欲しがっていた。そのため1950年代半ばからXV-3やXV-15などのティルトローター機やティルトウィング機の実験が幾度となく行われていた。そしてティルトローター機の実現に向けて本格的に立ち上げた計画がJVX計画である。
[編集] JVX開発計画
V-22は1982年に発表された4軍共同の統合先進垂直航空機(JVX)の名称で開発された。JVXはヘリコプターの特性と固定翼機の性能を持ち合わせる航空機を開発する計画であり、開発する航空機はティルトローター機でなければならないと定められているわけではなかった。しかし実際のところはティルトローター以外の選択は現実的ではなく実質ティルトローター機の開発計画と言えた。当初は陸軍が中心として開発されていたが後に海軍中心に変更された。
[編集] 開発メーカーの決定
JVXは、以前にもティルトローターの実験機を開発していたベル社と、H-47などの大型ヘリを開発していたボーイング社の共同開発となった。電子機器類や胴体部分をボーイング社が受け持ち、その他の部分をベル社が受け持つこととなった。
[編集] 開発計画の遅れ
1985年にはJVXで開発する機体の名称がV-22 オスプレイと決定され、1986年5月2日には全規模開発(FSD)が認められ6機の試作機が製造されることとなった。試作機は1、3、6号機がベル社で2、4、5号機がボーイング社で組み立てられることとなり、初飛行は1988年、量産型の引渡しは1991年ごろと予定された(その後予算削減で6号機は中止された)。しかしSDI計画や次期戦術戦闘機(ATF)計画(後のF/A-22)などに比べ優先度が低く、予算の削減が行われた影響で初飛行は遅れ1989年の3月9日となった。1989年12月には国防長官が予算削減の一環として開発の中止を発表するが、その後の審査の結果計画は続行されることとなった。その後何度か計画の中断が予定されたが結局中止となることは無かった。
[編集] 試作機段階での事故
V-22は何度も墜落事故を起こしている。1回目の墜落は1991年6月11日で試作5号機が初飛行後数分で墜落した。搭乗員二名は脱出したため軽傷ですんだが機体は失われてしまった。この墜落は配線ミスが原因であった。2回目の墜落は1992年7月で試作4号機が飛行試験中エンジンから出火し墜落、乗っていた7名全員が死亡した。この墜落の影響でFSD機が全機飛行停止となった。この2つの事故はいずれもV-22自体の欠陥であり量産機では改良が加えられることとなった。この事故によって試作機5機のうちの2機が失われてしまい計画に影響を与えることとなった。
[編集] 量産の決定
このような事故もあったが、V-22は1994年に量産が認められた。1996年には低率初期生産(LRIP)が承認され、5機の生産が決定した。1999年4月には初号機が初飛行し、2000年までには艦上運用試験などが実施された。
[編集] LRIP(低率初期生産)段階での事故
しかしその後もV-22の開発は順調とは言えず、2000年にも2件の墜落事故が発生した。通算3回目の墜落は2000年4月8日で兵員輸送の試験中墜落、試験のために乗り合わせていた海兵隊員15名を含め19名が死亡。また同じ年の12月11日には夜間飛行訓練を行っていたMV-22Bが墜落、乗っていた海兵隊員4名が死亡した。12月の事故を受けV-22は事故調査のため一時飛行停止となり、飛行停止が解除されたのは2002年5月になってからであった。調査の結果4月の事故の原因はシステム的な問題ではなくパイロットが不適切な操作をしたため、12月の事故は油圧システムの故障と判明した。
[編集] 現在の状況
2000年の事故以降大きな事故も無くV-22は計画通り順調に試験をこなしている。2005年9月19日、CV-22量産1号機が空軍に引き渡された。この空軍型は2009年に実戦配備される予定。2005年10月28日、国防調達会議が全規模量産(FRP)開始を承認。
[編集] 特徴
[編集] エンジンについて
V-22はその要求通りヘリコプターの利点である垂直離着陸と固定翼機の利点である長い航続距離や速さを持ち合わせている。V-22は主翼の両端に大型のローターを装着したターボシャフトエンジンを装備し、このエンジンの角度をかえることによって垂直離着陸を可能としている。エンジンは垂直より少し後方まで向けることが可能で、スピードは出ないが後退飛行をする事もできる。
また、エンジンを前方上方に傾けることによって短距離離着陸を行うことも可能である。ただしV-22のローターは大型であり完全に前方に向けてしまうと地面に擦ってしまうため、ぶつからない程度に傾けて離陸する。そして巡航時にはエンジンを完全に前方に傾けることによって通常の飛行機と同じように飛ぶことが可能である。
V-22の2つのエンジンは互いに離れた位置(主翼の両端)に配置されているため、垂直離着陸時に片方のエンジンが止まった場合、そのままではバランスが取れずに墜落してしまう。これを防ぐため、V-22では2つのエンジンを連結シャフトでつなぐことによって、片方のエンジンが止まった場合でも、動いているもう一方のエンジンによって両方のローターをまわすことが可能となっている。
[編集] 性能
V-22の最高速度は300 ktを超える。これは通常のヘリコプターの最大速度である200 kt程度と比べると1.5倍の速度である。
航続距離も最大で2,000 nm(約3,700 km)以上と長いものとなっている。
固定翼を併用するために、回転翼のみよりエンジンの単位出力当たり大きな揚力を得られる。また回転翼機より高い高度に上ることが可能である。
[編集] その他
海兵隊が使用する強襲揚陸艦などで使用できるよう、ローターと主翼は折りたたむことが可能となっている。
[編集] 派生型
- MV-22B:海兵隊向けの輸送型。CH-46やCH-53の後継とされる。360機が装備される予定。
- HV-22B:海軍向けの戦闘捜索救難型。48機が装備される予定。
- CV-22B:空軍向けの特殊作戦用の型。MH-53Jの後継とされる。50機が装備される予定。
その他に早期警戒機や空中給油機とする計画もあるが今のところ開発されるかどうかは未定。
[編集] スペック
- 全長:17.47 m(ピトー管含まず)
- 全幅:25.54 m(ローター含む)
- 全高:6.63 m(VTOL時)
- ローター直径:11.58 m
- 空虚重量:15,032 kg
- 最大離陸重量(垂直離陸時):23,981 kg
- 最大離陸重量(短距離離陸時):27,442 kg
- エンジン:ロールスロイスアリソン社製 AE1107C ×2基
- 出力:6,150 shp
- 最高速度(通常時):305 kt (565 km/h)
- 最高速度(ヘリモード時):100 kt (185 km/h)
[編集] 外部リンク
- ボーイング(英語)
- Air Force Technology V-22 Osprey(英語)
- GlobalSecurity.org V-22 Osprey(英語)