OTHレーダー
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OTHレーダー(Over The Horizon Radar)とは、水平線以遠を観測するレーダーシステムである。超水平線レーダーとも呼ばれる。
一般に、航空機などを観測するレーダーの多くはマイクロ波と呼ばれる高い周波数の電波を利用し、反射波の時間から計測物との距離を算出している。しかしマイクロ波は可視光線に近い性質を示し、直進性が高い。そのため、構造物や山の裏側、さらには遠距離のため水平線・地平線下にある対象物を観測できない。
OTHレーダーは、短波帯の電波を利用している。電波を上方に向けて発射すると、高空の電離層の反射により、再び電波は地上方向に戻ってくる。その地上に電波が戻ってくる地点は、送信機から見て水平線以遠の遠距離の地点であり、その地域の航空機などを観測することができる。ただし、その精度は非常に低く、航空機の存在を確認できる程度である。また、近距離目標の観測はできないという短所がある。
受信機と送信機が近い場所にあるOTH-Bと、受信機と送信機が何千キロも離れた場所にあるタイプがある。
このレーダーシステムは、固定式の大型設備である。冷戦期の1980年代に日本の自衛隊も、喜界島などに導入を検討したことがある。
強力なパルス状の電波を無差別的に発信するため、多くの放送局や業務無線、アマチュア無線、短波放送などが迷惑を被った。このパルス状のノイズは、キツツキが木をくちばしで叩く音の様である(“パタパタ”“カカカ…”と聞こえる)ため、ウッドペッカー・ノイズと呼ばれる。
なお、中心周波数でパルスにあわせ打電(電信信号を出す)すると、エラーを嫌って一時送信が中止する(あるいはレーダー周波数が移動する)という噂がある。