C-17 (輸送機)
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C-17はアメリカ合衆国空軍が運用する軍用輸送機。現在のアメリカ空軍の主力輸送機である。製造会社はボーイング(旧マクドネルダグラス)。愛称はグローブマスターIII(Globemaster III)。1991年に初飛行を行った。
[編集] 概要
機体形状は、通常の軍用輸送機と同じく、高翼配置の主翼にターボファンエンジンを4基搭載し、T字尾翼となっている。翼端にはウイングレットを装備している。
C-17はアメリカ本土より、ヨーロッパの前線未整備小型飛行場に物資を大量輸送することを想定して開発された。その条件は、戦略輸送機のC-5とほぼ同じ物資を搭載し、戦術輸送機C-130と同じ条件で飛行場に離着陸するというふうにたとえられる。すなわち、ペイロード60 t以上(アメリカ陸軍主力戦闘戦車M1エイブラムスを1台搭載可能)、最大ペイロードでの航続距離4,440 km、離着陸距離910 mというものである。STOL方式については、先進中型短距離離着陸輸送機計画(AMST)で試作されたYC-15で実証されたパワードリフト方式を用いている。
1982年7月にマクドネル・ダグラス社(1997年にボーイング社と合併)と開発契約が結ばれたが、契約上および技術上の問題から開発は遅れ、原型機のロールアウトが1990年12月、初飛行が1991年9月となった。
C-17はそのペイロードを満たすために、太い胴体を持っている。貨物の搭載は後部のみからであるが、省力化が進んでおり、最低一名の人員で搭載作業が行えるようになっている。また、離着陸性能についても、パワードリフトとスラストリバーサーを用いることにより、満たしている。
C-17は、開発目標をおおむね達成し、その高性能には高い評価が与えられている。近年のアメリカ軍の中東展開には、欠かせないものとなっている。
現在C-17を運用しているのはアメリカ空軍とイギリス空軍(米軍からのリース)である。オーストラリア空軍が国外展開用に購入を決定しているほか、カナダ他数カ国でも採用が検討されている。日本においてもC-1後継の次期輸送機の候補となっていたが、国外展開向けとしてはともかく国内での輸送需要に対しては能力が大きすぎるとされ採用されなかったが、国際貢献や緊急援助隊の展開での利用価値は高く、また現在製造中のC-X次期輸送機を補佐する役割も期待される為、改めて導入について検討されている。
旧マクドネル・ダグラス時代に本機の民間用バージョンとしてMD-17が計画されていたが実現しなかった。
[編集] 要目
- 全幅:51.8 m
- 全長:53.0 m
- 全高:16.8 m
- 翼面積:353.02 m
- 自重:122020 kg
- 全備重量:263090 kg
- 巡航速度:M.0.77(860 km/h,高度7620 m)
- エンジン:P&W F117-PW-100ターボファン(18,460kg)4基
- 航続距離:5190 km
- ペイロード:最大72.5 t