D→A:BLACK
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D→A:BLACK(ディーエーブラック)はトンキンハウスより2003年12月25日に発売されたプレイステーション2用ゲームソフト。 原画担当は村上水軍。
前作『Missing Blue』と酷似したトンキンハウス独特の世界観を継承し、戦闘や時間制限選択肢、ウィンドウワークによる多彩な演出から、「物語を読む面白さ」と「ゲームをプレイする楽しさ」を両立させたアクションノベルと言う固有のジャンルを提唱している。
また、2004年12月2日には完結編であるD→A:WHITEが発売されている。
OP、ED主題歌は千葉紗子と南里侑香のコンビを結成、「tiaraway」として歌っている。
関連のインターネットラジオ番組として、『D→A Dream Radio』が公式サイトで配信された。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] ストーリー
- 魂を狩る『死神』と呼ばれる存在の主人公・新城灯夜。現世に縛られ邪悪な存在と化した人々の魂『クリープ』を狩るのが彼に課せられた使命である。パートナーの『白夢』の天使・ユリエル=アーレンクラインと共にクリープ狩りをしていたある日、その戦闘に一人の少女が巻き込まれてしまう。その少女の名は神楽夏希。彼女は、一般の人間には見えないはずの灯夜の持つ鎌も、クリープの存在も全て見えていた。『退屈な日常から抜け出したい』。そんな些細な彼女の意思から始まったこの物語は、やがて世界の存在すらも脅かすモノとの対決へと運命は動き出す…。
[編集] キーワード
- 死神 (しにがみ)
- 『狩るもの』。俗に言う死神とは違う存在。クリープを狩ることに特化した種族で、夜に強い。外見、身体能力は普通の人間と然したる変わりは無いが、鎌を持つことでその身体能力は常人の人間の数段上になる。また、使い魔と呼ばれる生命体を己の半身として従わせる場合もある。白夢が『堕天』した場合、死神の種族となるため、一般的に白夢には格下の存在と思われている。ゲーム中は『黒属性』と定義され、急所攻撃、状態異常攻撃を得意とする。
- 白夢 (はくむ)
- 『浄化するもの』。白き翼を持ち、聖なる力を行使する存在。いわゆる「天使」という種族、またはこの種族で構成された大型組織。クリープを狩る戦闘技能習得から、世界への干渉、管理までをも行う。死神に対して異常なまでの軽蔑意識を持つ物も中にはいるが、クリープ狩りに支障をきたすため、基本的に当たり障りの無いギリギリの地点で干渉を続ける。ゲーム中は『白属性』と定義され、回復魔法、守護結界を得意とする。「白夢の塔」と呼ばれる郊外のビルを拠点とし、長老を中心に活動している。なお、翼は任意で出し入れできるので、外見上なんら人間と変わりは無い。
- クリープ (Creep)
- 地を這うモノ、と言う意味。本来進むべき輪廻転生の道へと進むことが出来なかった魂は、世界の負の力を吸収し、次第に凶暴化する。通常、人は視認することが出来ないが、その実体は存在するため身体的ダメージを与えてくることは出来る。体のどこかに核を有し、それが破壊されるとその存在を維持できない。また、魂の中間にあるため、体は白黒両属性で構成される場合が大抵である。その形状は千差万別だが、大抵生前に関係した姿で存在する。
- 属性 (Element)
- ゲームシステム上、また物語中重要な役割を負う設定。黒属性は白属性に、白属性は黒属性に対してダメージを与えることが出来る。だが、黒属性が黒属性に攻撃を与えると、そのダメージの一部は自分の体に跳ね返ってきてしまい、白属性が白属性に攻撃を与えると、相手を回復してしまう。そのため、白黒両属性を持つクリープに対して死神、白夢単体で戦うことはあまり賢い事とは言えない。そのため、灯夜とユリエルはコンビを組むことになったのである。
- 外来 (がいらい)
- 外から来たもの。白夢上層部が主に使う言葉で、『この世界の外から入り込んだ管理者以外の人間』のことらしいが…?
- Devoro Are (デーヴォア アーエ)
- 白夢の世界の言葉で『貪る雲』と呼ばれるもの。正しい発音はこちらの世界の言語では不可能。前作Missing Blueとの共通点であるが、今回の主人公と前作主人公・牧村功司とのアプローチの仕方は当然違うものになっている。
[編集] 登場キャラクター
- 新城 灯夜 (しんじょう とうや) 声:下野紘
- 本編主人公。普段は涼英学園の生徒として学生生活を送るが、夜は本来の勤め、クリープ狩りをする死神。白夢によって過去の記憶を消されている。クリープ狩りを円滑に進めるため、学校での人間関係は極力抑えているが、神楽夏希と出会って以来、その生活は変わっていく。少々幼い顔立ちだが、その瞳に秘めた意思は強く、世界の存在が危ぶまれた状況でも勇敢に立ち向かう。が、普段は恵都に良いようにいびられてしまう。
- ユリエル・アーレンクライン(ゆりえる あーれんくらいん) 声:桑谷夏子
- 灯夜のパートナーとしてクリープ狩りに従事する白夢の天使。灯夜とは対を成す聖なる力の持ち主で、互いの欠点を補い合う。しかし、その使命感から灯夜に厳しく接することが多く、ちょっとしたことで反発してしまうことも。白夢の使命を誇りに思いながら、それによって灯夜に素直になれない性格。戦闘では灯夜と共に先陣を切って戦うアタッカー。
- 神楽 夏希 (かぐら なつき) 声:川上とも子
- 灯夜の同級生にして、ひいろの幼馴染。明るく活発な少女。クリープに襲われたところを灯夜に助け出され、それをきっかけに親しくなる。普通の高校生で、何をやっても平凡。そんな”普通な自分”に嫌気がさしている。しかし、クリープが見える自分にも何か人とは違う何かがあることを見出し、自分にしか出来ないことをやりたいと言う一心で灯夜たちに協力する。
- 榎本 ひいろ (えのもと ひいろ) 声:南里侑香
- 物語最大のキーパーソン。夏希とは対照的な大人しい性格だが、親友同士である。交通事故で両親を亡くし、それ以来入院を続ける。クリープの気配を感じることができ、灯夜たちに協力する。白夢たちは彼女のことを「マスター」と呼ぶ。その理由は物語の核心部分へと繋がっていく。
- 和泉 恵都 (いずみ けいと) 声:井上喜久子
- 灯夜の通う涼英学園の校医。灯夜と同じマンションの隣室に住んでいる。灯夜、ユリエルをはじめとするクリープ狩りのリーダーであり、また良き理解者でもある。天使だった過去はあるが現在は堕天中。飄々とした性格で、一見真剣みのないような様子だが、その本質は道化を演じるキレ者である。酒豪で、灯夜の部屋の冷蔵庫に勝手にビールを入れていく。
- リン (りん) 声:松来未祐
- 灯夜の使い魔。普段はメイドとして主人である灯夜に仕え、家事全般をこなす。クリープ狩りの時は麒麟+ユニコーンのような姿の動物形態に変身して戦闘に参加。攻撃能力は無いが、唯一黒、白両属性を持ち、回復や防御面を徹底サポートする。とても優しい性格で、狩りの対象であるクリープにでさえ「さん」を付けて呼んでしまう。名前の由来は麒麟の「リン」から来ている。
- 御堂 愛 (みどう まな) 声:浅川悠
- 騎士道部に所属する寡黙で文武両道の才女。得意武器は槍で、その腕は秀逸。ひいろを守護する騎士として名乗りを挙げる。真実を知っている様子だが、それを口にすることは無い。白夢と対立する立場である。
- イフリース・アージェント (いふりーす あーじぇんと) 声:志倉千代丸
- 謎多き人物。ユリエルと同じく天使ではあるが、その言動や行動には何か隠された意図が感じられる。圧倒的な実力を持ち、灯夜やユリエルでも歯が立たない相手にも全く動じない。その力は同じ白属性同士でも、絶対とも言われている属性定義をぶち破ってダメージを与えてくるほど。恵都とは旧知の仲らしい。
[編集] 世界観
- Missing Blueから受け継がれ、D→Aシリーズでは特にこの世界観が注目される。だが、受けて側の理解の仕方によってはいわゆるひきこもりと捉われてしまう危険性がある。
- 夢の世界と現実世界。創造主が現実世界への帰還を望めば、今いる夢の世界は崩壊し、夢から覚める、と言う形で終わりを告げる。
- だが、目覚めた後の世界も名も知らぬ誰かの夢の世界なのかもしれないのである。
- 創造主が変わった世界では、その創造主の常識が世界の常識、基盤となる。
- 幻想界と現実界の境界が危うくなる。
- 多次元構造にも似た、無限循環の世界観がD→Aシリーズ、Missing Blue、そしてLの季節共通の世界観なのである。
- 世界が成長していくにつれ生まれる、そこに住む人々の負の感情。
- それが蔓延しクリープを生む。
- 前作の場合はこのクリープは直接出てこないが、その主格、Devoro Areは名前こそ出ないが登場しているのである。
[編集] 作品に秘められた秘密
- トンキンハウスの三作品に渡り、『主人公の身近な、支えてくれる存在』を演じる声優、松来未祐。これはプロデューサーである盛政樹が彼女のファンだから、と言う事である。そのキャラクター描写は非常に細かく、トライエースにおける東地宏樹のような存在であろう。
- また、タイトルである『D→A』の意味。これはデジタルノベルからアクティブノベルへと変わったトンキンハウスを表した”Digital”と”Active”、作中の重要な点である”Dream”と”Actuality”、そして主人公たちを表す”Death”と”Angel”三つの意味が込められている。