音響装置付信号機
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『音響装置付信号機』(おんきょうそうちつきしんごうき)は、視覚障害者用交通信号付加装置が付加された交通信号機のこと。
視覚障害者用交通信号付加装置とは、交通信号機において歩行者用灯器が青であることを視覚障害者に知らせるため、誘導音を外部に接続したスピーカーより誘導音を鳴動させる装置である。
音響装置付信号機は、盲学校や福祉施設・公共施設等、視覚障害者の利用頻度が高い場所に優先的に設置され、全国で約13400基(メロディ式 約1700基 擬音式 約11700基)が設置されている(2005年3月末現在)。 スピーカーは、灯器内蔵のものと外付けのものがある。スピーカの色は、かつては黄色が多かったが、現在は歩行者用灯器と同色の灰色が多い。美観地区では、信号機ともども茶色に塗られていることもある。
誘導音には擬音式とメロディ式がある。擬音式では「カッコー」(主道路横断用)・「ピヨ」(従道路横断用)の音響が使用され、メロディ式では「通りゃんせ」(童歌)・「故郷の空」(スコットランド民謡 原題Comin' thro' the Rye)のメロディーが使用されている。地方によっては「赤い靴」(横浜市)や「富士の山」(静岡県)などの特殊メロディーもある。
誘導音の鳴動の方式として、同種同時・同種鳴き交わし・異種鳴き交わしの3種がある。
- 同種同時方式 - 横断方向と逆方向から、同じ誘導音が同時に鳴る。警交仕規21号に多い。警交仕規217号でも設定次第で同じタイプにできる。
- 同種鳴き交わし方式 - 横断方向と逆方向から、同じ誘導音が交互に鳴る。警交仕規217号版1,版2に多いが版3にも多少あり、また陸運電機製の警交仕規21号の一部にもある。
- 異種鳴き交わし方式 - 横断方向から誘導音「ピヨ」(または「カッコー」)が、逆方向から「ピヨピヨ」(または「カカコー」)が交互に鳴る。警交仕規217号版3に多い。
なお誘導音が鳴り終わると青信号が点滅するが、その際に警告音が鳴るものと、鳴らないものがある。 警告音には「ピーポーピーポーピーポー」や「ピーポー、ピーポー、ピーポー」(小糸工業・京三製作所 通常) 、「ポー、ポー、ポー」(京三製作所 神奈川仕様)等のバリエーションがある。奇数回鳴らすものが多い。 また、青点滅時に警告音のかわりにアナウンス(青森県など)や誘導音の場合は青点灯時の約2倍の速さで点滅を知らせるタイプ(大分県など)がある。
どの方式を採用するかは各都道府県警察の裁量に任せられており、異なる方式の音響信号機が同じ地域に存在することも多かった。 これは視覚障害者の混乱を招くことも少なくなかったため、2003年10月に警察庁から擬音式の異種鳴き交わし方式を整備するように通達が出された[1]。 そのため、メロディ式や同種同時方式・同種鳴き交わし方式の音響信号機は、更新の際に置き換えられ、徐々に姿を消しつつある。
視覚障害者用交通信号付加装置の他に交通弱者用押ボタン箱、歩行者横断支援装置も音響を出力する機器であり、AMラジオ局のNRN系9局において、毎年放送されている「ラジオ・チャリティー・ミュージックソン」では、この装置を「音の出る信号機」と呼び、設置するために募金を募っている。