青瓦台襲撃未遂事件
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青瓦台襲撃未遂事件(せいがだいしゅうげきみすいじけん、韓国語:1•21 사태/1•21 事態)は、1968年に発生した朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)ゲリラによる大韓民国(韓国)大統領府(大統領官邸)『青瓦台』(韓国語:청와대、チョンワデ)への襲撃未遂事件。金新朝事件(キム・シンジョじけん)とも呼ばれる。
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[編集] 事件の概要
[編集] 武力衝突の発生
1966年1月に韓国漁船が北朝鮮の魚雷艇に襲撃されて以来、11月と1967年4月には、北緯38度線で大規模な戦闘が発生し、南北の緊張は一触即発の状態であった。ソビエト連邦の分析では、これらの戦闘を扇動しているのは北朝鮮であった。北朝鮮は1966年に対南工作を専門とした第283部隊を参謀部偵察局内に設立、内部粛清によって1967年8月12日に第283部隊を朝鮮人民軍第124部隊(現在の第8特殊軍団)に改変して、南進の準備を進めた。
[編集] ゲリラ侵攻
1968年1月、青瓦台の襲撃による朴正煕(パク・チョンヒ)大統領と閣僚の暗殺を狙って、第124部隊第1中隊第1小隊に所属する31名は、韓国軍第26師団の模擬制服で変装して休戦ラインを突破し、韓国領に侵入した。
1月21日、ソウル市内に入ると、持参した日本製の背広とレインコートに着替え、青瓦台800メートル手前の北漢山まで侵入した。しかし、ゲリラの目撃情報により警戒中だった韓国当局に検問を受け、その場で自動小銃を乱射して逃亡。突入は阻止された。
韓国軍と警察部隊の2週間に及ぶ掃討作戦により、1名を逮捕、29名が射殺され、1名が自爆した。また、射殺は27人で、1名から3名が逃亡したともいわれる。2名が重傷を負いながら軍事境界線を越えて帰国したという話もある。2週間の銃撃戦で韓国側は軍人・警察官と巻き添えの民間人の計68名が死亡した。
逮捕されたのは当時27歳の金新朝(キム・シンジョ)少尉で、彼の供述により北朝鮮における特殊部隊の存在が明らかになった。また、軍事独裁を敷く朴大統領が殺害されれば、韓国民衆は必ず労働者革命を起こすと分析していたという。
朴正煕大統領は事件直後、襲撃未遂事件を北朝鮮が謝罪しない場合は、報復攻撃を行うべきとの書簡をアメリカのジョンソン大統領に送った。
ところが、直後の1月23日にプエブロ号事件が発生する。アメリカは報復の為に空母を派遣するが、北朝鮮と同盟していたソ連と直接戦争に至る可能性を考慮して、すでにベトナム戦争を戦っていたこともあり、ジョンソンは外交交渉を選んだ。アメリカの援助を受けられないと知った朴大統領は軍の北進を断念した。
[編集] 実尾島事件
朴政権は事件の報復としての北進をアメリカに断られた為、自らもゲリラを使って、北朝鮮主席宮爆破と金日成を暗殺する計画を秘密裏に進め、1968年4月に専属の特殊部隊である空軍2325戦隊209派遣隊(通称684部隊)を創設した。北と同じ31名の隊員からなる部隊は、仁川(インチョン)近くの実尾島(シルミド)で訓練を重ね、金日成殺害の日を待った。
ジョンソンに代わって米大統領になったニクソンは、1970年7月に在韓米軍の削減を発表した。すると、1971年4月に北朝鮮が統一会談を提案し、9月に南北赤十字が予備会談を開始、1972年7月には南北共同声明が発表され、8月に赤十字本会談開始と、立て続けに南北融和政策が行われる中で、71年に計画は撤回、部隊の存在は隠された。
1971年8月23日、684部隊は反乱を起こした。隊員は大統領との直談判(待遇の劣悪さ改善など)の為に青瓦台へ向かうが、途中で戦闘となり、ソウル市内で手榴弾で自爆したため多数が死亡、生き残りの4人も軍法会議で死刑判決を受け、1972年に死刑が執行された。
この事件は実尾島事件と呼ばれ、長く隠されてきたが、民主化後の政権で資料が明らかになり、2003年に韓国で映画化された。しかし、映画の中の脚色(684部隊の隊員は死刑囚や無期懲役囚などの犯罪者上がりとして描かれているが、実際は異なる点など)について隊員の遺族が名誉を傷つけるものとして上映の差し止めを求めるなどの問題も起こったが、映画化により社会的な事件の全貌解明を求める声が高まり、韓国当局が調査に乗り出してている。
2005年には34年ぶりに「実尾島部隊」の部隊員の遺族に対し、韓国国防部が死亡通知書を通知した。
[編集] 実尾島事件を基にした作品
- 映画
- 『シルミド』康祐碩監督
- 書籍
- 白東虎、鄭銀淑(訳)『シルミド』ISBN 4-344-00616-X 幻冬舎 2004年
- 城内康伸『シルミド「実尾島事件」の真実』ISBN 4796640738 宝島社 2004年
- ファン・サンギュ『実尾島(シルミド)-生存者キム・バンイル元小隊長の証言-』ISBN 4-7973-2758-8 ソフトバンク・パブリッシング 2004年