電話加入権
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電話加入権(でんわかにゅうけん)はNTT東日本・西日本の固定回線の利用権である。
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[編集] 概要
この権利を所有していると、工事費を支払って電話の設置場所の変更や、利用の休止をすることができる。休止の場合5年毎に更新手続きが必要であり、更新手続きがされなかった場合5年で権利が時効となる。また、譲渡することが可能であり、手数料を支払うことで名義の変更ができる。相続や企業の合併・分割の際の名義の変更が無料で可能である。
この権利を購入する際に必要な料金が「施設設置負担金」(しせつせっちふたんきん)である。
2005年3月1日より、値下げが行われた(表示は消費税込み)。
- 固定電話回線(アナログ電話・INSネット64)や低速専用線など、メタルケーブル(2線式)を利用するもの
- 施設設置負担金:75,600円→37,800円
- 施設設置負担金のいらないライトプランの月額加算額:672円→262.5円
- INSネット1500・高速ディジタル専用回線などの光ケーブル線又はメタルケーブル(4線式)を利用するものの施設設置負担金:107,100円→53,550円
- 着信用電話の施設設置負担金:42,000円→37,800円
- メタルケーブル(2線式)から光ケーブル線又はメタルケーブル(4線式)を利用するものへの切り替え:31,500円→15,750円
- 加入者都合による共同電話・着信用電話からINS64・単独電話への変更:33,600円→0円
現在は新規の申し込みは不可能であるが、施設設置負担金が42,000円の他の加入者と回線を共同利用する共同電話もある。
[編集] 施設設置負担金制度の歴史
施設設置負担金の制度は政府に電話回線の設置に必要な物件や金銭を寄付した場合に優先的に電話を開通させる寄付開通制度に由来する。これがその後、電話の開通に必須となったのが電話設備費である。電電公社設立時(1953年)には4,000円であったが、物価の上昇に合わせて値上げされていき、1960年には10,000円、1968年には30,000円、1971年には50,000円、1976年には80,000円となった。NTTに民営化された1985年には工事負担金の名前に改称された。この時端末設備の接続が自由化されたため、端末設置工事費分値下げされ72,000円となった。更に1989年に施設設置負担金に改称された。
1951年、電話網を整備する際の資金不足を解消する目的で、電話設備費とは別に電信電話公債(電話債券)が設けられ電話加入の際の購入が義務付けられた。これは1983年に廃止され、1990年頃までにNTTによって償還(返済)されている。
施設設置負担金は、電話網が完成した現在では役目を終え、総務省とNTTにより廃止が検討されている。
[編集] 施設設置負担金の廃止の問題点
電話加入権は売却可能な権利であり、また権利の内容は時間の経過によっても変化しないため、企業会計上では減価償却のできない無形固定資産に計上されている。そのため市場価格がいくら変動しても、計上される資産額は購入価格のままである。
本来電話加入権は質権を設定できないものであったが、中小企業などからの要望が多かったために「電話加入権質に関する臨時特例法」が制定され、いくつかの条件の下で質権を設定できるようになった。そのため、借入金の担保や税金の滞納時の差し押さえ物件とされるようになった。
施設設置負担金の廃止は、電話加入権の資産や担保としての価値をゼロにすることになる。これは企業や自治体へ甚大な影響を与えるため、施設設置負担金のいらないライトプランも併設されたものの、いまだ全廃には踏み切れないでいる。しかし、2004年には日本テレコム(現・ソフトバンクテレコム)やKDDIが施設設置負担金の要らないサービス(直収電話)の開始を発表。これを受けて、NTT東西も施設設置負担金の段階的値下げを発表した。また、平成電電はNTTの電話加入権(施設設置負担金)の買取サービスを始めたが、その直後にNTTは電話加入権の値段を72,000円から半額の36,000円に引き下げた。NTTの電話加入権の廃止は資産の評価を予告も無く人為的にゼロにしてしまうため、社会問題になっている。
2006年5月30日、「加入料値下げにより加入権の資産価値が不当に下落した」として、25都道府県の37社と個人69人がNTTや国(監督官庁の総務省)を相手取って損害賠償を求める訴訟を起こした。提訴に対しNTTは「負担金は回線建設費の一部であり権利に非ず、財産的価値まで保証はしていない」とコメントしている。
[編集] 外部リンク
- 情報通信審議会電気通信事業部会(第37回)議事録
- 施設設置負担金の見直しについて(2004年11月5日付けニュースリリース)