開放弦
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開放弦(かいほうげん)は弦楽器を演奏する際、指で弦を押さえずに音を出すこと、または指で弦を抑えていない状態そのものをいう。ヴァイオリンでは、4本の弦は下の音から、G(ソ)、D(レ)、A(ラ)、E(ミ)と調弦されるが、この四音が開放弦である。フレットが存在しない楽器の場合、音色が問題となる。
一般に弦は、他の条件が同じであれば、弦の長さに、弦の振動の周波数が反比例する。すなわち、弦を短くすることで音を高くすることができる。この仕組みを楽器の奏法に取り入れた楽器は多くあり、ヴァイオリンやチェロなどのヴァイオリン属、ギター、三味線などの有棹弦楽器では、指を指板と呼ばれる板に押さえつけることによって振動する弦の長さを短くする。また、ハープなどでも、音の高さを半音ないし全音高めるために、振動する弦の長さを短くする仕組みを持っている。このような楽器にあって、弦を短くしない、すなわち振動する弦の長さを最大にとった状態を開放弦と呼ぶ。
開放弦は弦の振幅が大きいために、他のどの音より豊かな響きが得られる。また、他の弦を弾いた音が開放弦と同音やその倍音関係にある場合、共振して響く役割も持っている。
三味線、琵琶、胡弓は、解放弦に音階の主要音を設定する。特に三味線は一の糸 (最低音弦) の解放弦に「さわり」と呼ばれる噪音発生機構があり、これが他の弦の特定のいくつかの音に強く共鳴して響きを豊かにしている。三味線、胡弓ではどの開放弦に主音や属音、下属音を割り当てるかでいくつもの調弦法があり、途中で調弦を変えることで転調する曲も非常に多い。楽琵琶 (雅楽の琵琶) では調によって調弦が違う。また三味線,胡弓、薩摩琵琶、筑前琵琶では、移調して演奏する際 (主に歌い手の音域に合わせるため) 、解放弦の音高もそれに合わせてスライドされる。
ヴァイオリン属の楽器では、指で弦を押さえることで弦の振動が指に吸収されるため、音色や音強が変化するが、開放弦はこのような左手による制御が効かないため、弓で弾く場合、ボウイング技術が音質に直結する。時に無伴奏ソナタといった完全独奏曲では同じ振動数の音を同時に鳴らして、結果として開放弦の音に左手運指による制御を加えている。作音楽器にのみ許された妙技である。
このため、一連のフレーズを弾く場合に、開放弦の音が挿入されるとそこだけ野卑異質な感じを与える結果になりやすく、また、開放弦ではビブラートが基本的にかけられない。このような事情から、ヴァイオリン属の楽器では開放弦の使用が避けられる傾向にある。しかし、奏者によっては開放弦ならではの豊かな響きを利用して多彩な効果を上げる場合もある。このとき、開放弦を弾いているにもかかわらず、手を震わせる仕草をする奏者もある。(便法であるが、開放弦のヴィブラートは1オクターブ上の音を隣の弦で作りながらそれをヴィブラートさせる)
ブラームスの交響曲第1番の提示部(Allegro non troppo)ヴァイオリンの最低音であるG音は開放弦で弾く以外にないが、重々しくふくよかな音となる。