褥瘡
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
医療情報に関する注意:ご自身の健康問題に関しては、専門の医療機関に相談してください。免責事項もお読みください。 |
褥瘡(じょくそう)は、患者を長期にわたり同じ体勢で寝たきりにさせておいた場合、その体のベッドとの接触部分で、末梢血管が閉塞して、組織的に壊死を起こすものをいう。床ずれ(とこずれ)とも呼ばれる。褥創と書かれることもある。
組織が死んで腐っていき、最後にはその場所の皮膚に穴が開き、皮膚潰瘍となってしまう。看護師にとっては、看護ケアの恥ともいえる。防ぐためには、まめに体位変換をすることが一般的である。最近では褥瘡などの創傷治癒などに特化したWOC看護認定看護師が活躍している。 高齢の寝たきりの病人の場合には、在宅看護などをしていると、比較的起きやすいものである。新生児には、長時間同じ体勢のまま寝かせておいてもこれは生じることはないが、未熟児などには発生することもある。
目次 |
[編集] 褥瘡の原因
褥瘡の直接的な原因は身体とベッドの接触部分にかかる応力である。応力には
- 組織に持続する圧縮応力(=圧力)
- 摩擦・ずれにより組織内部に生じる引っ張り応力・せん断応力がある。
そのほかにも栄養状態も深く関わっており、患者を全体的にアセスメントして関わる必要がある。
[編集] 褥瘡の予防
褥瘡は治療よりも予防が大事といえる。
- 褥瘡が起こりやすい人を評価する。ブレーデンスケール(米国式)・OHスケール(厚生労働省による)・K式スケール(金大式褥瘡発生予測尺度)がある。
- こまめに体位変換を行う。2時間ごとが基本であるが、最近では4時間ごとを推奨する人もいる。
- 体圧分散寝具を使用する。エアマット・ウォーターマット・ウレタンフォームマットなどがある。
[編集] 褥瘡の評価
一般にDESIGN(デザイン)分類が使われる。(D:深さ・E:浸出液の量・S:大きさ・I:感染の有無・G:肉芽組織の色・N:壊死組織の有無 に加えて、P:ポケットの大きさの6項目で評価する。)
[編集] 褥瘡の治療
褥瘡のケアの基本は、除圧、清潔、栄養管理であるが、症状の進行具合により薬物治療や外科的処置が行われる。
[編集] I度
創傷が表皮にとどまっている状態。
ごく初期の表皮の発赤・腫脹にとどまっている場合は、炎症除去と血行改善を治療の目的とする。 血行改善には主にヘパリン類似物質を含む軟膏を用いる。 褥瘡部位の血管はもろくなっていることがあり、安易にマッサージを行うとかえって症状を悪化させることがあるので、創面周囲を軽くたたく(タッピング)にとどめる。 炎症除去には、主に非ステロイド系抗炎症外用剤が用いられる。 ごく初期に、ステロイド系抗炎症外用剤が使われることもあるが、肉芽形成を抑制するので注意が必要である。
表皮に水疱やびらんが生じた場合には、創面の保護を行う。 創面の保護には、亜鉛華単軟膏やアズレン軟膏などが用いられる。 これらの軟膏剤には、肉芽形成や上皮化を促進する作用もある。 また、ワセリンや抗生剤を含む軟膏を含ませたガーゼなどで創面を被覆する方法もある。 過去には、創面を乾燥させるのが基本とされていたが、現在では湿潤環境を保った方が治癒が速いとされている。 水疱をつぶすと感染の可能性が生じるので、保護フィルムを張るなどしてつぶさないようにする。
[編集] II度
真皮に及ぶ欠損(=潰瘍)が生じている状態。
壊死組織の除去、肉芽形成促進、感染予防の治療を行う。 まず、創傷部位を生理食塩水などで定期的に洗浄する。 細菌感染がなければ消毒の必要はないが、消毒する場合にはポビドンヨードや、グルコン酸クロルヘキシジンなどが用いられる。 洗浄前にデキストラノマーの粉末を使うと、滲出液や汚物を吸着し除去を容易にする。 壊死組織の除去には、タンパク質分解酵素の軟膏などが用いられる。 肉芽形成促進には、ポビドンヨード・シュガー軟膏や塩化リゾチーム軟膏などが用いられる。 また、創面の保護に豚皮やシリコンガーゼ、ポリウレタンフィルムなどが用いられる。
[編集] III度
皮下組織に達する欠損が生じている状態。 組織が壊死しやすく。感染も起こしやすい。
II度と同様の治療を行うが、壊死組織の除去には、薬物療法だけでなく外科的な方法もとられる。 感染を起こしている場合には、抗菌剤による治療を行う。 褥瘡の場合には、緑膿菌などによる日和見感染が問題になり、サルファ剤のスルファジアジン軟膏や、アミノグリコシド系抗生物質の軟膏などが用いられる。 損傷部位がポケット状になっている場合には、膿がたまらないようにガーゼを詰める。しかし近年主流になりつつある湿潤療法においてはこれを行わない。
[編集] IV度
筋肉や骨まで損傷をうけた状態で、薬物による治療は困難になる。
外科的に損傷部位を取り除き、皮膚縫合または植皮を行い、抗生物質の全身投与を行う。
[編集] 関連事項
[編集] 外部リンク
- 褥瘡の管理のホームページ金沢大学医学部保健学科褥創研究会 代表 真田弘美
カテゴリ: 医学関連のスタブ項目 | 医療 | 外傷