血管
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血管(けっかん, The arterial system)は、血液を身体の各所に送るための通路となる管。全身へ酸素や栄養分、老廃物、体温(恒温動物の場合)、水分を運ぶ。血管中の血液を規則的に送るための筋肉に富む構造がある場合、これを心臓という。血管中の血液の流れる方向は普通一定しており、血管には心臓から出る血液を送る動脈と心臓へ戻る血液を送る静脈がある。
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[編集] 解剖学観察
全ての血管は同様に基本的な構造を持つ。最も内側は内皮であり内皮下の結合組織に囲まれている。この周りに血管平滑筋があり、動脈に於いてよく発達している。その周りには更に外膜という結合組織層があり、筋肉層に繋がる神経がある。大きい血管であれば栄養供給用の毛細血管もある。毛細血管では内皮層は極僅かであり、稀に結合組織を含む程度である。 血管は標準的体型のヒトであれば凡そ62000マイルまで広がる。
[編集] 生理学観察
血管は能動的に血液輸送はしない(感知できる程の蠕動運動はしない)が、動脈(或る程度なら静脈も)は自律神経による筋層収縮によってその内径を調節し、下流臓器への血量を変えることができる。血管拡張と血管狭窄は体温調節のように互いに拮抗的に働く。
酸素(赤血球のヘモグロビンに結合)は血液によって運ばれる養分のうち最も生体に重要である。肺動脈から離れた全ての動脈では、ヘモグロビンは殆ど(95-100%)酸素で飽和している。一方肺静脈から離れた静脈では約70%ほどに不飽和化するが、肺循環経由でこの値は戻される。
血管に於ける血圧は通例水銀ミリメートルで表される。
[編集] 動脈と静脈
心臓から送り出される血液が通るのが動脈、心臓へ戻る血液が通るのが静脈である。動脈と静脈は、基本的には同じような構造であるが、動脈には心臓からの強い圧力がかかるため、壁が非常に厚くなっている。静脈では、そのような圧力がかからないので、壁が薄くなっているほか、逆流しないように弁が着いている。太い動脈には大きい圧力がかかっているため、仮に傷によって体外に開いた場合、出血量が非常に多くなり、失血死の危険が大きい。そのため、大抵の場合、静脈が体表側を通り、動脈はより内側を通る。
動脈を通る血液を動脈血、静脈を通る血液を静脈血という。陸上脊椎動物においてこの二つの違いは、おもに酸素含有量の差であり、動脈血は酸素を多く含み(酸素ヘモグロビンの率が高く)、血液は鮮やかな赤をしている。静脈血は酸素を失っているので、どす黒い色になっている。例外は心臓から肺への肺動脈と肺から心臓へはいる肺静脈の場合(肺循環)である。
[編集] 血管系
多くの動物では、血管は全身に渡って互いに繋がり、血管系あるいは循環系をなす。血管系は動物の分類群により構成が異なり、開放血管系、閉鎖血管系の2種類がある。
[編集] 開放血管系
動脈、静脈からなる。心臓から繋がる動脈は体の各部に伸びてそこで口を開く。動脈から流れ出た血液は、直接細胞間を経由し(毛細血管がない)、静脈へ戻る。節足動物、軟体動物などの動物群に見られる。 単層扁平上皮で構成される。
[編集] 閉鎖血管系
動脈、静脈、毛細血管からなる。動脈から流れ出た血液は、毛細血管を経て静脈へ戻る。血液は血管内に閉じこめられている。血漿や白血球は血管壁から出て、周囲の細胞との間を埋めるので、これを組織液といい、血液と細胞との間の物質の運搬などを担う。脊椎動物、環形動物に見られる。当然ながら人間も閉鎖血管系である。