范文雀
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范 文雀(はん ぶんじゃく、1948年4月15日-2002年11月5日)は、昭和後期から平成期(1970年代後半~2000年代前半)の女優。「文雀」は本名で「くじゃくのように美しくなるように」とのことから。女優の余貴美子は、いとこ。
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[編集] 来歴・人物
中国人音楽家の両親を持ち、広島市に生まれる。育った家は広島駅近く、栄橋付近に有った。小学生の時東京に移る。初めは通訳を志し、1969年、清泉女子大学英文別科を卒業後、上智大学外国語学部比較文化学科に進学するが、その後、女優を志し、デビュー後の1970年に中退、女優業に専念することとなる。
1968年、NETの『特別機動捜査隊』に端役で出演しデビューする。翌1969年5月12日、東京12チャンネル放映のTVドラマ『プレイガール』出演時に芸名を「ハン・ザ・摩耶」としたが程なくして(1969年9月22日)本名に戻した。TBSの『サインはV』に悲運の混血アタッカー「ジュン・サンダース」役で出演。一躍、茶の間の人気者になる。繊細な心を持ちながら、表面的には突っ張った部分を持つジュンの複雑なキャラクターは多くの共感を呼び、志半ばで骨肉腫(こつにくしゅ)で倒れるストーリー展開に対しては、全国のファンから助命嘆願が数多く届くほどだった。続くスチュワーデスを描いたドラマ『アテンションプリーズ』にも(田村早苗)役で出演し、人気を不動のものとした。
人気絶頂期の1973年には、日本テレビの『2丁目3番地』で共演した寺尾聰と結婚し、一時芸能界を引退したものの、1974年に離婚し、芸能界に復帰。エキゾチックな風貌と確かな演技力を買われ、映画梶芽衣子主演の「野良猫ロック」シリーズや『影の軍団』『プレイガール』『Gメン'75』『俺たちは天使だ』などの人気シリーズや、『リア王』『夏の夜の夢』「鹿鳴館異聞」などの数多くの舞台にも出演し、存在感を示すとともに名バイプレーヤーとしての地位を確立した。
感受性が鋭く聡明な人格であり、人に決して媚びずに気に入らなければ大物男優との共演も辞退する「男勝り」な一面もあったが、自分自身を曲げることなく、常に上を目指すストイックでプロフェショナルな姿勢に、演劇関係者やファンを初めとした多くの人々が魅了され、幅広いファン層をつかんだ。
また、1993年からNHKで放送された海外ドラマ『ドクタークイン大草原の女医物語』では、主演のジェーン・シーモアの声の吹き替えを担当し、19世紀後半のアメリカ西部の舞台に、偏見や差別といった障害に屈することなく信念を貫き、医療に従事する女医ミケーラ・クインを熱演し、人気を博したことでも知られる。
2002年11月5日、検査入院中に心不全のため死去。享年55。彼女の死はあまりの突然の出来事であり多くの人々が早すぎる死を悼んだ。
[編集] 主な出演作品
[編集] 映画
- サインはV(1970年)
- 女番長 野良猫ロック(1970年 日活)
- 野良猫ロック ワイルド・ジャンボ(1970年 日活)
- 大幹部 ケリをつけろ(1970年)
- 喜劇 ドッキリ大逃走(1970年)
- 野良猫ロック マシンアニマル(1970年 日活)
- 花も実もある為五郎(1971年)
- 喜劇 昨日の敵は今日も敵(1971年)
- さらば掟(1971年)
- 可愛い悪女(1971年)
- 可愛い悪女 殺しの前にくちづけを(1972年)
- 激突!若大将(1976年)
- 新女囚さそり 701号(1976年)
- 人間の証明(1977年)
- ホワイト・ラブ(1979年)
- モーニング・ムーンは粗雑に(1981年)
- 精霊のささやき(1987年)
- マリアの胃袋(1990年)
- ザ・中学教師(1992年)
- シーズ・レイン(1993年)
- 先生あした晴れるかな(1994年)
- Love Letter(1995年)
- イノセントワールド(1998年)
[編集] ドラマ
- 世にも奇妙な物語 『仙人』(1991,フジテレビ)
- 『特別機動捜査隊』
- 『影の軍団』
- 『プレイガール』(ユーミン・ダロワ)
- 『サインはV』(ジュン・サンダース)
- 『アテンションプリーズ』(田村早苗)
- 『Gメン'75』(賀川陽子)
- 『2丁目3番地』
- 「道頓堀川」(鈴子)
- 「予備校ブキ」
- 「君たちは魚だ」
- 「京 ふたり」
[編集] 舞台
[編集] 吹き替え
- 『ドクタークイン 大西部の女医物語』 ミケーラ・クイン(ジェーン・シーモア)
- 「大統領を作る男たち」
- 「ドラッグ・ウォーズ 麻薬戦争2」
- 「ピアニスト」
- 「愛妻が残した妻」
- 「アバロン」
[編集] 歌手活動
- 「あなたが憎めない」 久仁京介作詩/薊けいじ作曲・編曲
- 「最後の一時間」 なかにし礼作詩/中村泰士作曲/有明春樹編曲
- ワーナー・パイオニア EP L-1007P 1971年2月25日
[編集] 脚色
- 「さまよえる蘚の恋情」 尾崎翠作