色温度
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たとえば鉄の釘など金属をガスの炎で加熱すると光を発するようになる。最初はオレンジ色であり、だんだん白く輝くようになる。どのような物質も、温度によってさまざまな波長の光を放射するようになる。その色合いは、物質ごと、温度ごとに微妙に異なる。
ここで理想的な黒体を想定すると、ある温度において黒体が放射する光の波長の分布を導き出すことができる。大雑把に言って温度が低い時は暗いオレンジ色であり、温度が高くなるにつれて黄色みを帯びた白になり、さらに高くなると青みがかった白になる。このように、白という色を黒体の温度で表現することができるのであり、この温度を色温度(いろおんど)と呼ぶ。単位として、絶対温度のK(ケルビン)を用いる。
朝日や夕日の色温度はおおむね2000Kであり、普通の太陽光線は5000~6000Kぐらいである。澄み切った高原の空の正午の太陽の光はおおよそ6500Kといわれる。これらは、一般に考えられている白より、かなり黄色っぽい(実際に物体を照らす光は大気の青色がかなり色味を中和しているためで、6500Kよりも高い色温度のほうが「白」く感じられる)。
写真やテレビ、パソコンのモニタなどでは、色温度は色の正確な再現のために重要である。写真においては、スタジオ撮影のライトが3200K、太陽光線が5500Kと想定されており、フイルムはこの色温度の照明において最適な色再現ができるよう作られている。色彩工学においては「標準の光D65」が現在の事実上の標準であり、これは色温度6500Kである。日本・アメリカのテレビでは色温度は6774Kと定められているが、実際のテレビの色温度は9000K以上あり、かなり青みがかっている(当然ながら色再現上かなり問題がある)。パソコンのモニタは9300Kが主流だが、特に廉価な製品を除き、6500K・5000Kに変更する機能が備わっているため、デザインや映像制作などの都合で適切な色温度を選ぶことができる。また、鋭く青白い9300Kの設定から温和な6500Kや5000Kに変えることで疲労感を下げることができるので、色彩についての正確さが全く要求されない場面でもこの機能は有用といえる。
一般的に色温度の感じ方はケルビン数に比例しない。人の感じ方に近い表現方式として、1,000,000をケルビン数で割ったメガケルビンと呼ばれる値が考案されている。部屋の照明として広く利用されている蛍光灯では、「電球色」「温白色」「白色」「昼白色」「昼光色」と主に分類されており、順に約3000K、3500K、4200K、5000K、6500Kとなる。各ランプ間の色温度の蛍光灯が無いのは、それぞれのメガケルビン数が333MK-1、286MK-1、238MK-1、200MK-1、154MK-1となり、全て差が40~50前後になるので色温度の感じ方が一定になる。このうち「電球色」「昼白色」「昼光色」が一般に販売されている。