私刑
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私刑(しけい)とは、法律に基づかないで、特定集団(およびそれ自身が定める独自の規則)により決され、執行される刑罰。アメリカ独立戦争時にヴァージニア州の独立派有力者チャールズ・リンチ(Charles Lynch)が、多くの王党派(独立反対派)を独自の不正規な裁判で処罰したことから リンチとも言う。
私刑は観衆・集団のある程度の(熱狂・ヒステリー状態下にあるもの含め)支持のもとなされる場合がある。
私刑の執行者として有名な団体にアメリカの白人至上主義組織KKK団が挙げられる。アメリカでは自治意識が強く、公式の司法手続きを通さないまま被疑者を糾弾することが開拓時代から続いていた。特に奴隷解放後の黒人に対する差別・憎悪は激しく、KKK団またはこれに属さないものでも黒人を(白人と対等に付き合おうとした罪などにより)私刑にすることがあった。
民族紛争の際に民兵集団により行われる非戦闘員への残虐行為も私刑といえる。
[編集] メディア・リンチ
日本のマスメディアの犯罪報道は、無罪推定すべき被疑者・被告人を犯人視して報道することが多い。日本では、確実な証拠が無いと逮捕しないこと、起訴便宜主義によって有罪に持ち込めると確信できる事件しか起訴しないことなど、捜査機関の判断と裁判所の判断の近接が生じていることが大きいと考えられる。
また、被疑者・被告人のプライバシーを暴き立てることによって視聴者・読者の関心が高まりやすいこと、記者クラブ制度によってマスメディアは捜査機関の一部のように振舞っていること、警察の取調べなどの際に被告人に弁護士などの第三者がつかないため、警察発表が一方的に報道される傾向が強いことなども大きいと考えられる。
これを「メディア・リンチ」と呼ぶ人もいる。