直列6気筒
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
直列6気筒(ちょくれつ6きとう)とは、シリンダー(気筒)が6つ直列に並んでいるレシプロエンジンのことである。略して「直6」「I6」「L6」とも記載することもある。
6つのシリンダー内で燃料を同時に燃焼させるとクランクシャフトに同時に負荷が掛かり、エンジン全体が反作用を受けて激しく上下に震動するため、通常は6つのシリンダーが1つずつ均等のタイミングで燃焼行程に入る。6つのシリンダーの燃焼行程の順番はクランクシャフトに掛かる負荷が均等化するように決まっており、多くは1→5→3→6→2→4の順番である。ほとんどの自動車で使われている4サイクル機関のエンジンでは吸入、圧縮、燃焼、排気の4つの工程でクランクシャフトが2回転する。つまり、2回転(=720°)÷6(気筒数)=120°であるので、クランクシャフトが120°回転するたびに1つのシリンダーが燃焼行程に入ると最もタイミングよく力を取り出すことができる。
エンジンの振動の面から見ても1次振動および2次振動を完全に打ち消すことができる構成であり、バランスの良さから「シルキーエンジン」とも言われることがある。なかでもBMWの直列6気筒はシルキーシックスの愛称で呼ばれている。直列6気筒の次は水平対向6気筒がバランスが良い。
直列6気筒を2つ並べて配置した形状のV12エンジンもバランスが良く、より上質感を求める高級車に搭載されている。
しかし、近年ではV35型日産・スカイラインや12代目(S180系)トヨタ・クラウンのように、直列6気筒エンジンから、より全長の短いV型6気筒エンジンに切り替える車種が増えてきている。これは、主として衝突安全性の観点から、直6エンジンを縦置きした場合にクラッシャブルゾーンの確保が困難になるためである。同様の理由から、ボルボでは直6エンジンを横置きに配置したFF駆動方式を用いてる(乗用車では唯一)。また、ミニバンでは、ボンネットが長くなり居住空間が狭くなることから採用されないようである。
一方、日本では1960年代から高速道路網の整備で大型商用車の高出力化が進んだが、山坂が多く、渋滞も少なくない背景から、大排気量・マルチシリンダーの自然吸気エンジンが好まれ、1990年代終盤までは特にダンプやミキサーなどの作業車のみならず、大型バスでも路線・観光を問わず、過給エンジンは受け入れられなかった。ところが、欧米では整備性に優れてコンパクトで軽く、燃費や低排出ガス化にも有利なため、直列6気筒ターボインタークーラーで発展してきた。また、大排気量化しても振動が少ない利点もあり、排出ガス規制の強化や将来の燃費規制を踏まえ、日本でも2000年代に入って大排気量も無過給も受け入れられなくなるとの予測から新短期排出ガス規制、新長期排出ガス規制を機に、各メーカーともターボ付6気筒に転換したのであった。
[編集] 二輪車での利用
1960年代のレースではホンダが250cc/350ccクラスに直列6気筒エンジンを採用した。また、市販車としても1978年に空冷DOHC4バルブのCBX1000として開発。海外専用モデルとして量産・輸出が開始された。また同年にはカワサキから水冷DOHC2バルブのZ1300が発表され、輸出が開始されている。