環境社会学
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環境社会学(かんきょうしゃかいがく、environmental sociology)は、環境問題を社会学的手法で分析する社会学の一分野。
日本では島崎稔による鉱毒被害地の調査とそれにもとづく生活破壊論が先駆をなし、被害(-加害)構造論、受益圏・受苦圏論、社会的ジレンマ論、生活環境主義が、4大理論ともいうべき存在になっている。被害(-加害)構造論は、飯島伸子が水俣病被害地の調査、公害・労災・職業病年表の整理、公害・環境問題の社会史などの研究によって形成し、後に舩橋晴俊らとの新潟水俣病共同調査で加害過程へと視野を広げた。受益圏・受苦圏論、社会的ジレンマ論は舩橋晴俊・長谷川公一らによる新幹線公害研究などから形成された。生活環境主義は、嘉田由紀子・鳥越皓之らによる琵琶湖調査から形成された。これらの研究者によって1980年代末以降、環境社会学の学としての制度化が進められ、1990年代に入って教科書の出版や学会の発足などが相次いだ。しかし、その後、コモンズや歴史的・文化的環境問題をめぐる実証研究などは盛んになっているものの、4大理論に比肩するような理論形成は停滞している。
この学問の特徴として、他の社会学領域ではあまり見られない政策科学志向がある。それは、環境社会学が実践の学として環境問題に積極的に関わっていこうという姿勢の表れということができる。