熱容量
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熱容量(ねつようりょう)とは系に対してエネルギーの出入りがあったとき、そのエネルギーの出入りが系の温度をどのように変化させるかを示す比例定数。熱容量はエネルギーの出入りがあったさい、系の(温度以外の)状態がどのように変化したかに依存して変化する値であって、エネルギーを出入りさせる前後で系の体積が一定である場合を定積熱容量、系の圧力が一定である場合を定圧熱容量とよぶ。単位はジュール毎ケルビン(J/K)、カロリー毎ケルビン(cal/K)。
出入りしたエネルギーをQ、系の温度変化をT、熱容量をCとしたとき
- Q = CT
とかける。
[編集] 熱容量に関する初等的理解
ある物体の熱容量というものを考えるとしよう。熱容量とはその物体の温度を一度上昇させるのに必要な熱量のことである。
たとえばコップ一杯の水(100g)があったとする。ここに何らかの方法で100calのエネルギーを与えることができたとしよう。この系からエネルギーが外に漏れないように注意して実験を行った結果、コップ一杯の水の温度は約1度上昇する。このとき、コップ一杯の水の熱容量は約100cal/Kである。
今度は水を2倍の量にしたとしよう。同じように100calのエネルギーを与えたとすると、今度は約0.5Kの温度上昇を観測することになる。水のようにエネルギーの出し入れの際、他の熱力学的状態の変化が無視しうるような系であれば熱容量は物質の量に比例すると考えてよい。
一般に物質の単位質量あたり1Kあげるのに必要なcal単位で表した熱量を比熱と呼んでいるが、学術的に比熱という用語は用いない。比熱は元々、水を基準にしてその何倍かを表す相対量として導入されたもので、単位質量あたりの熱容量に対しては比熱容量という用語を用いる。
[編集] 定積熱容量と定圧熱容量
気体などの一般の系では、一般にエネルギーの出入りに伴って圧力や体積の変化を生ずるので、熱容量に関して上記のような単純な理解をすることはもはや不可能である。そこで、体積一定の場合と圧力一定の場合に関して個別に考えることになる。
理想気体の場合、定積熱容量は定圧熱容量よりも常に小さい。このことを理解するために、エネルギーの出入りQについて定積の場合と定圧の場合を考えてみよう。
定積の場合、変化に際して系は仕事をしないから系に入ってきたエネルギーはすべて温度上昇に使える。ところが、定圧の場合には系の温度を上げた上で、さらに体積変化分の仕事をしなければならない。この仕事に内部エネルギーは使えない(理想気体の場合温度は内部エネルギーの関数である)から、結局この分のエネルギーも余分に外から与えてやらなければ成らないのである。
[編集] モル熱容量
初等的理解の項で説明したが、熱力学を考えるにあたっては単位質量あたりの熱容量よりも、単位物質量あたりの熱容量を考えるほうが便利な場合が多い。この単位物質量あたりの熱容量をモル熱容量(単位がmolの場合)と呼び、定積の場合と定圧の場合についてそれぞ定積モル熱容量、定圧モル熱容量とよぶ。
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