清水義之 (経営者)
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清水義之（しみず よしゆき、1933年 - ）は、日本の実業家。株式会社十六銀行前代表取締役会長・現顧問、前岐阜商工会議所会頭、元中部経済団体連合会副会長。
[編集] 来歴
父は、後に助役を経て第9代大垣市長（在任1974年～1975年）となる清水正之。前任頭取の高橋順吉は父親の従兄弟。ちなみに、後に大垣共立銀行頭取となる外村次郎は旧制大垣中学校（現岐阜県立大垣北高等学校）での先輩、同じく後に日銀を経て岐阜銀行頭取となる花田実は、名古屋大学経済学部・塩野谷九十九ゼミの一年先輩にあたる。塩野谷ゼミでは経済学者・飯田経夫と同級生で、飯田は晩年、十六銀行社外監査役に就任する。
名古屋大学経済学部卒業後、十六銀行入行。ほぼ一貫して本部に在籍し、名古屋支店次長・審査部課長・人事部長、支店長を経験せず、1979年取締役、1980年常務、1982年専務、1983年副頭取に就任。1984年3月、頭取の高橋が腸閉塞で入院し、また78歳と高齢であった（翌年逝去）こともあり、急遽、頭取に就任した。
父の従兄弟である高橋の下で帝王学を学び、早くから将来を嘱望されていた。地銀業界で”十六に清水あり”と言わしめた頭取候補で、就任時の51歳は当時の地銀業界最年少であった。就任後、預金獲得競争を推進し、当時業界21位だった預金量を13位まで躍進させる。また、当時親密都銀は、第一勧業銀行であったが、今後の金融再編を見据え、三菱銀行に変更（次期勘定系システムの導入では功を奏した）、1993年には地銀として初めて上海に駐在員事務所を開設、決断力と素早い実行力に定評があった。特に、人事畑を歩んだことから、その手腕によって、組織の簡素化と積極的な若手登用（1991年時点では取締役平均年齢は53.5歳。）を進めた。
しかし、就任からわずか8ヵ月後の1984年11月、出張先から帰国した成田空港にて脳梗塞で倒れ、健康を害し日常業務に支障が生じる。入退院を繰り返すも、側近たちの思惑もあり、内外公職は在任を続けた。1986年6月に岐阜商工会議所会頭は退いたが（1991年6月に会頭へ復帰。）、頭取職を退任することはなかった。1990年頃には、健康を回復するもののその後、再び健康不調となり経年ごとに後遺症は悪化していき、公式の場にほとんど姿を見せない状態が続く。 例えば新入行員の内定式には出席せず、入行式で挨拶を行っても、周囲がその発音・意思表現内容を理解するのは困難であったという。
その間、十六銀行は保守的な経営姿勢に徹することになる。このことが旧東京三菱銀行同様、バブル経済崩壊後に多額の不良債権を抱え経営危機に陥った岐阜銀行やUFJ銀行などと比較して、結果として健全な財務力と独立経営を維持したとする評価もある。しかし、岐阜金利と称される厳しい融資環境の中での保守的な経営姿勢は、1990年9月期中間決算において、総資金利鞘の逆転（関連会社の投資顧問に委託した株式・特定金銭信託などの運用成績悪化が主因）を招く。1995年7月28日付日経新聞のインタビューでは、“愛知県内100店舗（当時は40店舗）へ拡大”、“2、3年内にベトナム事務所開設”等の構想を語るなど意欲的な経営姿勢を見せたが、愛知県内店舗増設はかなわず、2006年現在4店舗削減され、海外もベトナム進出はおろかニューヨーク支店・ロンドン駐在員事務所が閉鎖となっている。
一方、行内ではワンマン体制を敷き、周囲から「側近が幅をきかせ、自由な議論ができていない」などの指摘もあった。側近政治の跋扈、特に関連会社に過ぎない十六ディーシーカード社長（元十六銀行専務・十六銀行OB会長）を中心とする度重なる経営への介入は、頻繁な役員交代等の人事や、ディーシーカードの過度なパワーセールスによって、一時、東海財務局管内で金融機関の苦情件数が最多となる影響を及ぼした。融資先においても、清水の長女が嫁いだ総合病院・清水が旅行する際の定宿にしている温泉旅館・清水と親密関係にある大株主の関連会社であるゴルフ場経営会社（2005年に経営破綻）といった、”頭取銘柄”と俗称される親密先への注力など、コーポレートガバナンス上の問題を抱えることになる。また、その意思が不明確であれども、神聖にして犯すべからずの存在から、周囲から”天皇”とあだ名されていた。
1999年6月の十六銀行役員改選にて、日銀（元日銀考査役）及び旧大蔵省（元大蔵省関東財務局管財第一部長）出身専務が退任する。表向きは“取締役の定年を65歳とする内規を越えた”ことが理由とされた。日銀出身専務は、健康上の問題を抱える清水の代理として内外の公式行事や記者会見に出席するなど十六銀行の「顔」的な存在だったが、その退任は意外感を持って受け止められた。また日銀・大蔵省より後任を受け入れなかったことで、過去50年間にして初めて”天下り”役員がゼロとなった。”十六に入り十六で育った行員のみ役員とする方針”（1999年5月27日付中日新聞）との評価の反面、“「（清水頭取の）体制固め」と見る関係者も多い。”とも報じられる（1999年5月27日付朝日新聞）。
2000年1月、岐阜商工会議所の年頭総会では「6月1日の議員総会で議員の方々の推挙を頂ければ微力ではあるが引き続き全力を尽くしたい」と語り、商議所会頭の続投を表明（2000年1月8日付日経新聞）、これは暗に十六銀行頭取職を引き続きになっていくとの表明であった。しかし、同年5月、金融監督庁（当時）に委託された東海財務局定期検査の折、不良債権の査定などを巡り銀行側と意見対立が生じたのに加え、「経営トップからのヒアリングも専務が対応し、頭取の考えを直接聞けなかった。頭取が自ら投資家や顧客に説明すべき時代に、経営者の顔が見えないのは困る。」との指摘を受ける（2000年6月30日付朝日新聞）。結局、同年6月、頭取職を退き代表権のある会長に就任、株主総会わずか2日前のトップ交代内定であった。頭取退任理由は、『財界活動に専念』が名目であったが、前年の“天下り役員”放逐が、結果として金融当局との軋轢を生じさせ、頭取退任の遠因になったと言われる。決算取締役会・株主総会では頭取交代には触れず、記者会見でも出席したのは後任指名を受けた小島伸夫だけであった。ちなみに、記者会見の席上、記者より「何故、清水新会長が出席しないのか？」との皮肉（記者たちは当然、清水の欠席理由が健康問題なのを知っている）が出たが、小島は、「本来は会長が会見に出てくるべきだろうが、都合がつかないのでやむを得ない※」と答えるしかなく、後日の新聞紙上では“十六銀、突然のトップ交代、「ワンマンのひずみ」を露呈？－外部からの目厳しく（2000年6月28日付日経新聞）”と酷評された。
- ※通常、代表者の新旧交代の記者会見は、両者が揃って出席する。
清水から後継指名された小島は、入行以来支店営業が長く、必ずしも頭取として有力視されていたわけではなかった。このため清水が退任をしなければ後に別の候補につなぐとの見方が強かったとされる。当の小島本人も、後継者に指名されて驚き「本当に私でいいのですか」と聞き返したという逸話が残されている。あえて清水が小島を後継指名したのは、小島の「クセが無くまじめで、腰が低く、割合ざっくばらん」な性格ならば、清水の院政下へと移行できるとの思惑が側近を中心にあったとされる。先述の記者会見でも、「清水会長の元で、どのような特色を打ち出すか？」との質問が出るなど院政を予想する空気は強かった。もっとも、会見の席上、小島は「清水会長からは、行内のことは自由にやっていいと言われている。私が責任を持って業務を遂行する。会長のワンマン体制との指摘があるが、私なりのやり方で進めたい。」と回答した。実際に2000年以降、小島主導の下で、当時、地銀連合のモデルケースといわれた業務提携（1999年1月、中日新聞・岐阜新聞にこの提携交渉が報じられているが、清水はこの提携に否定的であったとされ、当時、広報部門は報道を否定するコメントを出している）や、A.T.カーニーに委託した組織改革（しかし、一部分、たとえば卓球部廃止等の提言は、清水の強い反対にあう）が行われた。清水やその側近が描いていた当初の思惑は、外れることとなる。
2002年、十六銀行がサブメインバンクであった大日本土木が経営破綻し、十六銀行は、同社を、最も軽い不良債権、つまり”要注意先”として分類していたため、この破綻処理に巨額の貸倒損失を計上した。結果、2003年3月末決算では、終戦直後の新旧勘定分離による赤字決算を別にすると、事実上初の赤字決算を余儀なくされた。戦後最大の危機の中、これ以降、行内に於ける清水の求心力は急速に失われることになる。2004年には、岐阜商工会議所会頭を退任、同年、長年にわたり清水の側近であった十六ディーシーカード社長も退任となった。
そして、2005年6月、再び金融庁に委託された東海財務局定期検査の折、代表取締役会長から一気に役員でない顧問に退いた。なお同年4月2日に、清水の母・栄が逝去（享年93歳）している。代表取締役在任は実に21年に及んだが、その大半は自ら指導力を発揮することもできず、末期には意思疎通が困難であったと言う。
才覚が失われ老害や側近政治を指摘する声がありながら、ブロック経済における公然の秘密の如く長らく在任を続けた来歴が端的な存在であった。
[編集] エピソード
岐阜県内の官民問わず多くの役職を兼任していたため、1997年には週刊朝日で、”日本で一番所得が多い銀行頭取”（注：都銀を含む）と評された事がある。その身、岐阜県民ふれあい会館にて、昼食がてら”ビールとケーキ”を食べるのが日課であった。
芸能人との交際に破れたと報じられた実娘が、フライデー誌にヌード写真を掲載した際には、十六銀行の各部署を動員して、岐阜県中（じゅう）の同誌が買い占められた。また、大垣市内に自宅があったが、冬季の大雪時には最寄の大垣北支店行員に雪掻きをさせるなど、公私混同が目立っていた。
行内の名古屋大学出身者の集まりは、「名清会」と呼ばれた。当然ながら、本来の名古屋大学同窓会はそのような名称ではなく、由来は名大の”名”と清水の”清”である。清水を頂点とする名大閥の牙城として機能したものの、年に一度ある総会の案内状は、若手行員から「赤紙」と蔑称されていた。なお、清水の取締役退任の年は、その会合は中止され、図らずも会の性質を内外に露呈することになった。
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